News 2000年12月22日 11:25 PM 更新

Yahoo!,ナチス問題で「仏政府に権利なし」の確認を請求

ナチス関連商品のオークションをめぐって,フランスで敗訴したYahoo!。今回,同社が米国の裁判所に出した請求は,非常に重要な意味を持っている。

 Yahoo!は12月21日,米国の連邦裁判所に「宣言的確認判決」を求める手続きをとった。フランス政府にはYahoo!の事業を変えさせるだけの司法管轄権がない――と宣言するよう米国の裁判所に求めたものだ。

 Yahoo!のこの動きは,非常に重要な意味を持っている。「あらゆる情報が自由に流れるインターネット上に国境を引くことはできるのか」という問いを投げかけているからだ。また,「企業は自社のサイト上のコンテンツが他国の法律に違反しないよう監視体制をとらなければならないのか」あるいは「そうした監視が実際に可能なのか」という問題も提起している。

 Yahoo!は,フランスの法律に抵触したからといって,フランスの裁判所が米国の会社にその責任を問うことはできないと,米国の裁判所に認めてもらおうとしている。フランス法廷は,Yahoo!のフランス法人に対してならその司法権を行使できるが,米カリフォルニア州サンタクララにあるYahoo.comに対してはそうではない,というのがYahoo!の主張だ。

 今回のYahoo!の動きは,ナチス関連商品のオンラインオークションをめぐって先日フランスで出された判決に反発したもの。フランスの裁判所は1カ月前,Yahoo!に対して,ナチス関連品の売買が禁じられている国々(フランスもその1つ)からの,この種のオークション参加を遮断する措置を講ずるよう命令した。フランスの裁判所は,Yahoo!がナチス関連商品の売買を野放しにする場合,1日につき1万3905ドル(10万フラン)の罰金を課すことも決めている。

 フランスの裁判所が罰金の徴収を開始する場合,フランスの原告側は,米国の裁判所に罰金の取り立てを求めることができる。だがもし米国の裁判所が「フランス政府の司法権はYahoo!には及ばない」と認めれば,Yahoo!は罰金の支払いを回避することができる。今回のYahoo!の「宣言的確認判決」の請求は,これが目的だ。

 Yahoo!の法務担当者Greg Wrenn氏は,「フランスの裁判所の命令は,米国の裁判所がその執行を手助けできるような類のものではない」と語る。

 罰金支払いの義務は,フランスの裁判所による命令発行日から起算して3カ月後より発生する。

 Wrenn氏は,フランスの命令にYahoo!が従うのは「不可能だ」と付け加えた。Webサイト運営会社はそのサイトを訪問する人々がどこから来ているかを特定することはできず,従って1つのIPアドレスがフランスからのものかカリフォルニアからのものかをYahoo!が知ることはできない,と同氏は言う。また,Yahoo!サイトにあるコンテンツを遮断/フィルター/監視するための人的/経済的リソースを確保するのは困難だし効果もないことだ,と同氏。

 Yahoo!によると,同社が宣言的確認判決を求めた先はカリフォルニア州サンノゼの連邦地裁。

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