News 2001年1月26日 11:40 PM 更新

デジタルデバイドを解消する“大きなフォント”

 ぼくは普段,Windowsを「大きなフォント」で使っている。画面のプロパティで画面のフォントサイズを既定値の「小さなフォント」から,「大きなフォント」に変更しているのだ。こうしておくと,いわゆるシステムフォントが使われるダイアログボックスやメニューの表示,アイコンのタイトルなどが,125%拡大して表示されるようになる。この設定で使っているのは,普段の仕事場で原稿書きに使っているメインパソコン(1600×1200ピクセル+1152×864ピクセルのマルチディスプレイ)と,10.4インチ液晶でXGA表示をするVAIOの2台だ。知り合いにのぞき込まれ,画面がダサイと言われることもあるが,こうしておくと文字類が圧倒的に読みやすいのだ。また,中,大,特大などのフォントサイズ指定ができる「Internet Explorer」の文字表示も,相対的に大きくなって中サイズのままでも読みやすくなる。何よりも,フォントサイズを絶対指定したページが読みやすくなるのがありがたい。

 さらに,ノートパソコン購入直後など,Windowsを初めて使い始めるときには,フォルダオプションで,クリック方法を「ポイントして選択し,シングルクリックで開く」ように設定,「ブラウザのように,アイコンタイトルに下線を付ける」をチェックする。この設定をデフォルト設定にしているパソコンメーカーもあるが,マイクロソフトは従来との互換性を重視して,Windowsのデフォルトにするのをあきらめてしまった経緯がある。やるとしたらあのときしかなかったのにと,ちょっと残念な思いだ。

 さらに,コントロールパネルのマウスのプロパティで,ポインタを「Windowsスタンダード(特大のフォント)」に設定する。

 また,壁紙は使わず,デスクトップの色を,白よりもちょっと濃い色に設定する(画像の最下段右から2つ目の色)。これは,ウィンドウの多くが白地なので,デスクトップとウィンドウのコントラストが高くならないようにするためだ。

 これだけの設定を終えると,ようやく自分のWindowsデスクトップという気がしてくる。自分では,この状態が使いやすいと思っているのだ。

ITryプロジェクトのチャレンジ

 日本アイ・ビー・エム(IBM)の発表した「ITryプロジェクト」の概要を聞いたときに,これって,ぼくの設定に似ていると思った。配布されたプレスリリースは,いつもより大きな文字で印刷されていて,最初に見たときには,思わず笑ってしまった。もちろん実に読みやすかった。

 このプロジェクトでは,Windowsの23種類の設定項目を自動的に変更するユーティリティが提供される。ちなみに,このユーティリティによる文字サイズの変更は,システムフォントに関しては書き換えず,画面のプロパティ-デザインで文字サイズやフォントの設定を書き換えていた。きっと,ダイアログボックスのサイズを決め打ちし,メッセージがはみ出してしまうようなダサいアプリケーションを配慮してのことだろう。

 また,このプロジェクトでは,ライコスジャパンとの協力により,Webトランスコーディング技術を使った閲覧実験も行われる。これによって,インターネットアクセシビリティを改善していこうとしているわけだ。

 概要については,1月23日の記事に詳しいので,詳細はそちらを参照してほしいが,ちょっと残念だったのは,Webページの行間について,何の配慮も為されていなかった点だ。記者発表会場では,今後の課題としているという回答が得られたにすぎない。

 CSSを使えば,テキストの行間は簡単に調節ができる。でも,いろんなサイトを見てもらえば分かるように,行間に気配りしているサイトが実に少ない。Windowsのフォントの日本語デザインが悪いからとはいえ,ちょっと悲しくなってしまう。しかもこれは,高齢者や弱視者のみならず,普通の人にとっても読みやすいページを作るもっとも簡単な方法でもあるのだ。

 たとえば,われらがZDNNも,今,読んでもらっているこの文章の行間と,NetLifeあたりを比べてみてほしい。ずいぶん読みやすさが違うことが分かるはずだ。実は,eWeekのニュースも,昨年までは広い行間で読みやすかったのだが,残念なことに,今年から行間が縮まって読みにくくなってしまった。どうして,こういう改変をするんだろうなと,ちょっと疑問に思ったりもする。

 「ITryプロジェクト」では,Webページの文字を大きくしたり,レイアウトを並べ替えたり,黒字に黄色などのコントラストの高い表示をするなどで,視力が決して高くない高齢者の方などにとって,読みやすく,そして情報を見つけやすいページを作る試みにチャレンジしようとしている。今後,インターネットがどんどん普通で一般的なインフラになろうとしている中で,今の状態を放置しておいては,年齢格差や地域格差などによるデジタルデバイドが広がる結果になりかねないということを危惧してのことだ。

 こうした動きが少しずつ活性化し,多様化するインターネットユーザーそれぞれが読みやすく楽しいブラウジングができるような技術が完成すればと思う。でも,本当は,情報を提供する側として,Webサイト側のデザイナーが,こうした問題を真剣に考えなければならないんじゃないだろうか。紙の雑誌では,ひとつの情報を1種類のフォーマットで出版せざるをえないが,Webなら複数のフォーマットを提供するのも,それほど難しくないのだから,このあたりは,本当にまじめに検討するようなサイトが出てきて欲しいと思う。

 ちなみに,「ITryプロジェクト」のWebサイトを開いてみると,文字が大きいと,いかに目の負担が少ないかを実感できる。是非ご覧いただきたい。

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[山田祥平, ITmedia]

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