News 2001年2月2日 09:00 PM 更新

メールアドレスの普遍性とは

 ぼくらがインターネットを利用する場合は,どうしてもISPのお世話になる必要がある。もっとも,企業ユーザーとはいえ,上流のどこかでは,ISPに接続されているわけで,今のところ,インターネットの利用には,ISPは必要不可欠というのが実状だ。

 自分が接続のために選んだプロバイダーは,未来永劫サービスを続けてくれるとは限らない。このことは,十分に承知しておかなければならない重要な事実だ。

引っ越しても変わらないメールアドレス

 プロバイダーが提供する典型的なサービスは,電子メールの配信だ。多くの個人ユーザーは,自前でメールサーバを持つことが難しいため,どうしても,プロバイダーから発行された電子メールアドレスを自分のメールアドレスとして利用する。このアドレスは,プロバイダーから貸与されたものという形式なので,プロバイダーを乗り換えれば,電子メールアドレスも変わる。ちょうど,携帯電話のキャリアを変えると電話番号が変わってしまうというのと似ている。まあ,一般加入電話の場合,引っ越すだけで,キャリアは以前と同じNTTなのに,電話番号が変わってしまうのだから,それと比べればはるかにマシとはいえる。

 でも,ここまで電子メールが一般的になってしまった以上,普遍的なメールアドレスについても考えなければならない時期に来ているのではないだろうか。電子メールアドレスを変えるのがいやで,インターネットへの接続には新しいプロバイダーを利用しても,メールの配信は従来のプロバイダーを使うために会費を払い続けているユーザーもいる。特に,最近は,ADSLやケーブルテレビインターネットなど,インターネットへの接続形態が多様化しているので,こうしたブロードバンド系のプロバイダーに乗り換えて広帯域の常時接続を楽しむユーザーも増えているが,彼らは,それまで使っていたメールアドレスを手放そうとはしない。多くのプロバイダーでは,特に,専用アクセスポイントを利用しなくても,メールの利用に関しては,便宜が図られているからだ。

 その便宜のうち,典型的なものが,POP before SMTPだ。一般的にメールの受信にはPOP3,送信にはSMTPというプロトコルが使われるが,別のプロバイダー経由でメールサーバを利用しようとした場合,先に受信の操作を行うことで認証し,その後,数分間だけ送信を許可するというものだ。多くのユーザーが利用しているOutlook Expressなら,送信トレイのメールを送信したあとに,受信の作業に入るので,最初の操作では,必ず送信に失敗してしまうが,2度目は大丈夫という結果になる。これは,SPAMの踏み台にされないようにというセキュリティ対策なので,いたしかたないものだといえるだろう。理想的にはこうした事情を考慮し,送信と受信の順序を逆にしてもいいんじゃないかと思う。

 サービスに熱心なプロバイダーの多くは,ひとつの接続アカウントで,複数のメールアドレスを若干の手数料で発行するなど,家族が1台のパソコンを共有してインターネットを利用する際の便宜を図っている。また,Webによる無料の電子メールサービスにも人気があり,匿名性を確保するために,2つ目,3つ目のメールアドレスとして,これらのサービスに登録するユーザーもよく見かける。

メールアドレスなら教えてもいい?

 傾向としては,電話番号や住所はプライバシー性が高いので,よほどのことがなければ教えないが,メールアドレスは意外と気軽に人に伝えられるというイメージがある。でも,本当はその逆で,20文字に満たない文字列で,世界中で一意となるメールアドレスほど,プライバシー性の高い情報はないともいえる。しかも,郵便でやってくる広告ダイレクトメールは,すべての費用を差出人が負担しているが,電子メールの場合,どんなにくだらないSPAMメールでも,受信する側も通信費を負担しなければならない。携帯電話の高い通信費を使ってようやくメールを受信したら,半分以上がどうでもいい広告メールだったということはよくある話だ。

 多くの友人知人,仕事相手にメールアドレスを伝えてしまった以上,そのアドレスを変更するのは面倒だ。でも,知られたくない相手にアドレスを知られ,読みたくもないメールがどんどんやってくるようになれば,メールアドレスを変更して,ゼロからやり直したくなる。

 メールアドレスを普遍のままに維持できることが重要である反面,好きなときに自由なアドレスに変更できることも重要だ。一人の人間を特定するための記号にすぎないメールアドレスだが,自分にとって,それがどのような意味を持っているのかを,たまにじっくり考えてみよう。

 最初に買ったパソコンのメーカーが提供する無料お試し接続サービスで発行されたメールアドレスを,何の疑問ももたずにずっと使い続けるのもありだとは思うが,数十年後,住所も電話も分からなくなり,まさに,音信不通になっている知人とも確実に連絡がとれる可能性を持つ連絡手段は電子メールだけだ。たかが電子メールアドレスといわず,本当に,そのアドレスでいいのかどうかを再考してみてはいかがだろう。個人でも簡単に廉価でドメイン登録ができるようになった今は,その絶好のチャンスだといえる。

[山田祥平, ITmedia]

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