News 2001年2月5日 11:40 PM 更新

チャットで外国語学習――国立大5校が合同授業

北海道大学や九州大学など国立大5校は,チャットを利用した外国語の合同授業を行う。ロールプレイングゲームのような授業に「学生のモチベーションが向上する」と期待する。

 北海道大学,名古屋大学,ならびに九州大学の言語研究グループ,広島大学の日本語教育分野の研究者グループ,ならびに京都大学の教育効果測定研究グループは2月5日,インターネットを利用した語学の共同授業を2002年を目途に開始すると発表した。

 九州大学と北海道大学では,2000年10月より野村総合研究所(NRI)が開発した双方向遠隔教育システム「3D-IES(Interactive Education System)を利用して英語・ドイツ語の合同授業を実施している。この実験は2002年7月に終了する予定だが,その効果や課題などを検証した上で,10月より各大学にプラットフォームを拡大する計画になっている。

 「例えば,ポルトガル語や朝鮮語などは,大学によっては教育を受けることができない。というもの,国立大学では,語学教員が不足しており,受講者が少ない言語には教員を配置する余裕がないからだ。少人数でも複数の大学をまとめれば,授業が可能になる。また,大学側の情報インフラ整備も急務だ」(九州大学言語文化研究院長)

 NRIが開発した3D-IESは,3次元空間の中に仮想キャンパスを構築し,そこで出会ったほかの学生(それぞれ自分のキャラクターを設定している)とチャットをすることができるというもの。九州大学岡野進教授は,「(3D-IESによって)語学学習に対する学生のモチベーションが非常にあがった。今時の学生にあった学習道具だ」と評価する。なお,授業中にやり取りしたチャットのログは,担当教員によって分析され,学生にフィードバックされる仕組みになっている。「ログが残るのでいいかげんなことはできない」(同教授)


オンライン講義の画面。右下にチャットウインドウ,左下に担当教員の画像が表示される。教員のみ音声の使用が許される

 北海道大学などでは今後,単位互換を含めた形での共同授業を検討していく方針だが,「その場合,大学間の入試時のレベルの違いはどうなるのかという批判が多くある。また,国立大学でも,外国語の教授陣や授業が充実している大学は,こうした試みに積極的に参加しようとしない」(京都大学の松井啓之助教授)という。さらに,合同授業に賛同を表明している大学の中でも,大学全体の意志としてネットを活用する方針を掲げているところもあれば,学部または学科レベルのみで決定しているところもあるなど,なかなか足並みがそろわないようだ。

[中村琢磨, ITmedia]

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