News 2001年2月7日 07:54 PM 更新

「ポストCRTは有機EL」――ソニーが13型フルカラーの試作機を開発

ソニーは,世界最大サイズを実現した13型のフルカラー有機ELディスプレイを開発した。2003年の商品化を目指す。


世界最大の13型フルカラー有機ELディスプレイを披露する中村末広コアテクノロジー&ネットワークカンパニープレジデント

 ソニーは2月7日,ディスプレイデバイスに関する技術説明会を開催し,現時点では世界最大となる13型のフルカラー有機EL(電子蛍光)ディスプレイを披露した。

 有機物を自然発光させる有機ELディスプレイは,バックライトが不要で,軽量・薄型のデバイスを実現できる。さらに,視野角依存性が少ない,LCDに比べて高輝度・高コントラストで,応答速度が非常に速いという特徴を持ち,次世代のデバイスとして本命視されている。ただ,これまでは,画面を大型化しようとすると輝度にばらつきが出てしまうなどの問題があり,現状では,携帯電話やPDAなどの小型ディスプレイへの応用が主に研究されている。

 そうした技術的な課題を抱える有機ELディスプレイでの大型化を図るため,ソニーは,TAC(Top emission Adaptive Current drive)という技術を開発した。これは,従来の低温ポリシリコンで利用しているアクティブマトリクス型を改良したもの。構造的には,従来のTFTガラス基盤側に光を取り出していた方式(ボトムエミッション)ではなく,TFTの配置に光量が影響されないように,基盤上部から光を取り出す方式を採用(トップエミッション)。このため,開口率を上げることが可能となり,高輝度・高精細が実現されたという。

 また,ばらつきによる輝度むらを解消するために,従来の電圧書き込み方式ではなく,電流書き込み方式を採用。加えて,画素回路を4TFT構成にすることで,駆動TFTの特性がばらついても1画素のペアトランジスタを構成する2TFTの特性さえそろっていれば,画内の輝度統一性を保てるという。「業界では,有機ELは小型デバイス用のディスプレイだと考えられているが,TCAは大型有機ELディスプレイを開発するためのブレークスルーになるだろう。技術的には30型ぐらいにすることもできる」(ソニー有機EL開発部の占部哲夫部長)

 なおソニーでは,2003年を目途に有機ELディスプレイの量産化技術を確立する計画だが,商品化にあたっての課題は,「低消費電力化と有機ELの寿命を延ばすこと」(占部氏)だという。

有機ELをポストCRTに

 ソニーコアテクノロジー&ネットワークカンパニー(CNC)の中村末広プレジデントは,同社における有機ELディスプレイの位置付けについて,「家庭用TVやPCなどの市場を狙う。有機ELディスプレイはポストCRTになるだろう」と話す。「有機ELディスプレイは,ブラウン管に近い特性がある。応答速度が速く,動画表示もなめらかな有機ELディスプレイは,データ放送を受信するのに最適なブロードバンド時代のデバイスだ」(同氏)

 また中村氏は,「携帯電話やPDAについては,現状の低温ポリシリコン液晶で十分。ソニーでは,あくまで有機ELは中・大型デバイス向けだと考えている」と強調した。

 なお,ソニーが開発した13型フルカラー有機ELディスプレイのスペックは以下の通り。

駆動方法 低温ポリシリコンTFTアクティブマトリクス方式
画面サイズ 13型(264×198ミリ)
解像度 800×600ピクセル(SVGA)
画素ピッチ 0.33×0.33ミリ
輝度 300カンデラ以上
コントラスト比 200:1

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[中村琢磨, ITmedia]

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