News 2001年2月9日 08:06 PM 更新

海賊版の世界にかつてない状況が――BSA副社長

BSA副社長は,「ネットの普及により,海賊版の流通にかつてなかったような状況が生まれている」と語った。

 2月9日に開催された「アジア知的所有権シンポジウム2001」では,コンピュータソフトウェア権利保護団体であるBSA(Business Software Alliance)のRobert M. Kruger副社長が「IT革命による知的財産への脅威とその影響」をテーマに講演を行った。Kruger氏はその中で,ブロードバンドインターネットの普及により,海賊版の世界には「かつてなかったような状況が生まれている」と危機感をあらわにした。

 著作権管理団体の間では,「Napster」に代表されるファイル交換ソフトの違法性が叫ばれているが,Kruger氏は「問題は,誰もがそうしたツールを扱えるようになっている点にある。昔から,ネット上で不正コピーソフトを交換しているユーザーはいたが,海賊版を見つけたり,交換するにはある程度のスキルが必要だった。ところが,オークションサイトに出品されているソフトの約90%が海賊版とも言われるなど,海賊版の流通経路は急激に広がっている」と指摘する。

 Kruger氏は,インターネット上での不正コピーソフトの取り締まりについて,「米国では1998年にDMCA(デジタルミレニアム著作権法)が施行され,ユーザーの著作権侵害行為について,ISPやオークションプロバイダーの責任をある程度問えるようになった。これは,かなりの成果をあげている」と説明する。ただ,それでもインターネット上の全ての著作権侵害行為について取り締まることができるわけではなく, Kruger氏は「どんなに刑事罰を強化しても,次から次へとターゲットが登場する。結局は,ユーザーの意識が改革されるしかない」と強調した。

アイコラはやめて

 また,講演に続いて,「IT時代の光と影」と題したパネルディスカッションが行われた。パネリストは,Kruger氏のほか,警察庁生活経済対策室長の粟野友介氏,ニッポン放送の石川みゆきアナウンサー。司会は,不正商品対策協議会(ACA)監事の前田哲男弁護士が務めた。

 粟野氏は国内の不正コピー事件の統計結果を挙げ,「秋葉原の街頭で違法コピーソフトを売っているような暴力団だけでなく,本当に普通の一般市民による事例も目立つ」と分析した。「ファミコン決死隊はまさにそのいい例で,希少価値のあるゲームを提供することで仲間を格付けするなど,まさにゲーム感覚。摘発しても,なかなかやめようとしない」(同氏)

 また,石川アナウンサーは仕事柄,自分のホームページを開設していたことがあるが,「水着の写真を掲載したところ,友人からアイコラに使われるからやめたほうがいい」と指摘され,恐くなって閉鎖したという。「インターネット上では,アイドルの顔にヌード画像をくっつけるアイコラが後を絶たないと聞くが,著作権侵害という以前に,当人としては人格を傷つけられたような気持ちになる」(同アナウンサー)

関連記事
▼ “技術”はGnutellaに対抗できるのか?
▼ 長野県警,「ファミコン決死隊」を名乗る違法アップロード組織のメンバーを逮捕
▼ 万世署など,秋葉原電気街の中国人海賊版CD-R販売グループを摘発

[中村琢磨, ITmedia]

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.