News 2001年2月13日 08:02 PM 更新

ビーバット企画,電子透かし技術を使ったコンテンツ配信実験を5月に開始

日本テレビとNTTグループが中心となって設立した,映像コンテンツの配信プラットフォームが動き出した。電子透かし技術を使ったコンテンツ管理システムが目玉だ。

 ブロードバンドビジネスフォーラムとビーバット企画は2月13日,インターネットを通じたコンテンツ配信に必要なID管理,電子透かし,不正利用検出などを行う「コンテンツ保護・管理システム」を完成したと発表した。コンテンツにユニークなIDを付加し,電子透かし技術を使ってコンテンツそのものに情報を埋め込むことで,不正利用を防ぐ。ビーバット企画は,このシステムを利用して,今年5月からビジネス検証を開始する予定だ。

 ブロードバンドビジネスフォーラムは,ブロードバンド時代のコンテンツ流通市場創設を目指して,2000年10月に発足した業界団体。現在,TV局やISPなど計218社の会員企業を擁しており,年内の事業化を目指しているという。その事務局業務を担当するのがビーバット企画だ。

 今回発表されたコンテンツ保護・管理システムは,NTTサイバーソリューション研究所の技術をもとに,日本テレビ放送網,エヌ・ティ・ティ・エムイー(NTT-ME),NTT東日本が共同で開発したもの。コンテンツホルダーの要求に沿って流通情報を定義し,ビーバット社内に置かれ管理サーバに情報を蓄積する一方,コンテンツには一意のIDを透かし情報として付加しておく。透かし情報を含んだファイルがインターネット上で不正に利用された場合,「別途用意した検索技術によってコンテンツファイルを見つけ出し,管理サーバのデータと照合することで,不正利用を検出する仕組みだ」(NTT東日本)。

 ただし,検索対象はインターネット上にあるものに限られるため,FDやCDといったリムーバブルメディアに記録されたものには効力がない。「個人で保存する場合も考えられるが,そちらは別途カプセル化技術などで対応する。組織的に行われる不正利用に対処することが先決だ」(NTT東日本)。

著作権団体が関門

 ビジネス検証には,TV局やISPなど85社が参加する。当初はDSLやCATVといった中高速インターネットインフラをターゲットとし,384KbpsのMPEG-4&ステレオ音声でストリーミング配信を行う予定だ。また,将来的にはDVD並みのクオリティ(6Mbps程度)を持つコンテンツも提供する見込み。

 しかしながら,インターネット上の映像配信には,未だ著作権という厚い壁が立ちはだかっている。ビーバット企画では,コンテンツに関して「まず,著作権管理団体の承認を得やすい外国産の映画やTV番組を使う。国産の映画やアニメがこれに続くだろう」(日本テレビ)と話しており,将来的には国産ドラマなども扱う意向。しかし,実際には「TV局が制作したドラマは一番厄介だ」という。というのも,局制作コンテンツのネット配信に関しては現在WIPO(World Intellectual Property Organization:知的所有権機関)で審議中であるため。一方,外国産の映画は,JASRACなど4つの権利団体が国内の流通を取りまとめており,既に商談が進んでいる模様だ。

 日本テレビでは,「ドラマも数年後には配信できるようになるだろう」としているが,ビジネスとして最も有望なコンテンツだけに,歯がゆい思いをしている様子が見て取れる。イメージキャラクター「ビーバット君」の紹介には,現在日本テレビのドラマ「FACE」に出演中の女優,田中美奈子氏が登場し,「役者も安心して仕事ができるようになる」とアピールしていた。


ビーバット君はコウモリの男の子。恋もするらしい

関連記事
▼ 日テレとNTTグループ,広帯域時代の映像コンテンツの著作権管理構想を発表

関連リンク
▼ ビーバット企画
▼ WIPO

[芹澤隆徳, ITmedia]

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.