News	2001年2月16日　09:02 PM 更新

メーカー製パソコンの変容

　手元でメインに使っているパソコンは，適当にパーツを見繕って組み上げたものだが，今のところ，5つある拡張カード用スロットは全部埋まってしまっている。AGPのビデオカード1枚，PCIのビデオカード2枚，LANカード，サウンドカードがその内訳だ。

　マザーボードにはサウンド機能が装備されているので，カードを別途使わなくてもいいのだが，どうしても光出力が欲しくてカードを装着している。かつては，USBのサウンドアダプタを使っていたが（2000年10月27日の記事を参照），最近，オンキョーから高音質を謳い文句にしたカード「SE-120PCI」が発売されたので，それを試しに装着したら，最後の1スロットが埋まってしまった。このカード，一部の端子をドーターボードで提供するが，それさえ装着できない状態だ。

　まあ，ビデオカードを3枚も装着しているのは特異な例だと思うが，それでもこのほかに，TVチューナーカードとIEEE 1394カードは装着しておきたいと思う。そろそろスロットに余裕のあるマザーボードに入れ替えようかと目論んでいる昨今だ。

拡張，してますか？

　パソコンの醍醐味は，必要な機能を自由に拡張できる点にあるのはご存じの通りだ。でも，ごく普通のユーザーは，パソコンのきょう体をドライバーでこじ開けて，拡張スロットにカードを装着するなんて作業はやりたがらないだろう。プロセッサの交換やメモリの増設などとは無縁のままに，買ってきたパソコンのOSをアップグレードすることもなく，ハードディスクをフォーマットして，システムリカバリーをすることもなく，数年が経過し，ふと周りを見回して自分のパソコンが旧機種になっていることに気がつき，次のパソコンを物色するというユーザーがほとんどじゃないだろうか。

　まして，最近のメーカー製パソコンはアプリケーションさえテンコモリ状態だ。パッケージソフトをわざわざ追加購入しなくても，買ってきたままの状態でパソコンを使い続けて，大きな不自由は感じないかもしれない。パソコンを手に入れたからといって，書店のパソコン雑誌売り場が気になるようになるわけでもなく，Webでも，ZDNNのようなIT関連のサイトを丹念に見て，新製品などの動向に気を配るようなユーザーは，本当にごく一部だ。

　今，業界は，「Windows XP」の話題で盛り上がっているが，普通のユーザーはそんなことは知らない。もしかしたら，検索サイトでスキーリゾートについて調べてみようとして，Windows関連のページばかりひっかかるのに閉口しているかもしれない。

　そんなユーザーでも，何かが足りないと思ったら，機能を拡張できるということはおぼろげながら知っている。だからこそ，量販店の周辺機器フロアには，数々のデバイスが並び，店員に熱心に質問する客でにぎわっている。

　たとえば，デジカメの写真をバックアップしておくのに，MOを選ぶか，CD-Rを選ぶか。そして，その接続インタフェースはSCSIがいいのか，PCカードがいいのか，それとも，USB，あるいはIEEE 1394……。これらの何がどう違って，どんな点がいいのか悪いのかを全部自分で調べて周辺機器を選べというのは酷というものだ。

選べるようになったメーカー製パソコン

　遊びのためにパソコンを手に入れたのに，遊びの前準備として勉強が求められるのでは，肝心の遊びの時間が圧迫されてしまう。でも，パソコンの世界では，ずっとそういうことをユーザーに対して強要してきた面がある。これは，テレビやビデオデッキのようなデジタル家電の世界では，考えられないことだ。それにおもしろさを感じるのならともかく，苦痛でしかないようなユーザーも，決して少なくはないのだ。

　ただ，昨今のメーカー製パソコンには，機能ではなく，楽しさや便利さをオールインワンにし，ライフスタイルに対する提案を前面に押し出したものを見かけるようになった。実に喜ばしいことだ。こうした製品は，機能をパックし，アプライアンスとして実現するのではなく，パソコンの汎用性を有効に利用し，提案をうまく演出している。

　ようやく，初めてパソコンを購入するユーザーに「何をしたい？」と聞き，その答えによって，「じゃあ，このパソコンがいいんじゃないか」とアドバイスができるような状況が整いつつある。そんなパソコンがズラリと並んだパソコン売り場が理想だ。

　これから春がやってくる。入学，就職，退職と，新たな人生のスタートにおいて，その岐路に立つコンシューマーが，わが意を得たというパソコンを見つけられますように。

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