News 2001年2月23日 11:59 PM 更新

初心者にこそ高速なパソコンを

 遅々として普及が始まらないBluetooth,順調に浸透が始まっているIEEE 802.11b無線LAN,どっちが今後のPCでメジャーになるんだろう。今のところ,コストはそれほど変わらないともいう。でも,携帯電話に無線LANが載るというのも考えにくいので,互いを補いながら使われていくのだろう。だったら両方内蔵したパソコンがあればいいな。

 いずれにしても,複数台のパソコンが,無線でファイルやプリンタを共有したり,ブロードバンドなどを通じたインターネット接続を共有できる環境は,今後の家庭において,きわめて重要なものとなる。オフィスにおけるLAN敷設と違い,家庭では,ケーブルの取り回しがやっかいだ。お金をかけてフローティングの床にして,そこにケーブルを引き回すなんてことはできないのだから。

 1台のパソコンを家族で共有するのと,家族それぞれが自分専用のパソコンを所有するのとでは,どちらがいいだろう。Windows XPのセールスポイントのひとつとして,家族が1台のパソコンを共有するときの使い勝手のよさがクローズアップされているが,本当は,パソコンはひとり1台を持ち,必要なリソースを共有するのがいい。それが前提で,個々のパソコンが高速な無線のネットワークで結ばれているのが理想だ。

 何のことはない,家庭であっても,企業であっても,こうした事情は全く同じだ。

 パソコンには,どうしたって,業務用の冷蔵庫を自宅で使うといったイメージがつきまとう。Windows XPでは,それを回避するために,ホームエディションとプロフェッショナルという2種類のバージョンが用意されるそうだが,OSとしての基本的な土台は同じなのは嬉しい。家庭用のパソコンで,ミッションクリティカルな作業をするわけではないから,クラッシュしてもかまわないといったことは絶対にない。

贅沢? とんでもない

 ぼくは昔から,初心者にこそ高速なパソコンが必要だといってきたけれど,その考えは今も変わっていない。初めてパソコンに取り組む人に,メールとWebなら最低の機種で十分などとは思わない。スペック的な点でも,素人がホビーに使うパソコンの方が贅沢でなければならないとさえ思っている。

 このあいだ,家人につきあって,フィギュアスケートを見に行ってきた。「グランプリファイナル国際フィギュアスケート競技大会」という大きな大会が国立代々木競技場の第一体育館で3日間にわたって開催されたのだが,その2日目を観戦したのだ。

 演技の写真を撮って欲しいと頼まれたので,デジカメとパソコンを持って会場に入ったが,とても片手間で撮れるような被写体ではなく,気がついたら,常に,ファインダーに目を当てているというたいへんな1日になってしまった。

 でも,この1日で,いろんなことが分かった。

 寒い会場なので,持っていったカメラのバッテリはかなり早く消費されるし,撮影済みのマイクロドライブからパソコンにデータを移すだけで,パソコンのバッテリもバテ気味になる。結局1日かかって約2500枚,ほぼ2.5Gバイトの写真データが手元に残った。

 まず,ノートパソコンからデスクトップパソコンのハードディスクにデータを転送するのがたいへんだ。10MbpsのLANを経由して転送したが,気が遠くなるほどの時間がかかった。さらに,これだけの枚数があると,すべての写真に目を通すだけでもたいへんだ。1枚あたり1秒かけて見たとしても,40分以上かかる。

 それではと,手元のソフトでサムネイルを作らせてみたが,これにもやっぱり気が遠くなるほどの時間がかかる。何本かのソフトを試したが,あるソフトは,サムネイルデータベースがおかしくなる始末。

 2500個ものファイルをひとつのフォルダに入れる方が間違っているとか,そういう話はなしだ。そのくらいのデータを軽々と扱えることを,ごく普通のユーザーは望んでいる(ぼくは普通のユーザーだ)。枚数だって同様で,今まではコストを気にするあまり,写真を撮るにも,おずおずとシャッターを押していたユーザーも,お金がかかるわけではないと分かれば,ドンドン写真を撮るようになるだろう。いらない写真は捨てればいいのだ。

 デジカメは,今後,まだまだ性能が上がり,大容量のファイルを大量生産するようになるだろう。でも,現状では,その状況にアプリケーションソフトウェアが全くついてきていない。そんなに写真を撮るなんて業務くらいでしょうというなかれ。普通の人がそういうことをするようになるまでにそんなに時間はかからないだろう。運動会1日で写真を5000枚なんてのは,すぐに,ごく日常の話になるはずだ。マルチメディアを筆頭に,そんな例は枚挙にいとまがない。

 だから,パソコンは,まだまだ速くなってほしいし,ソフトウェアにも進化を望みたい。インターネットやメールを楽しむなら今のパソコンは高機能すぎるとか,家庭で使う無線LANには,802.11bは贅沢だなんてこともいうべきではない。強力な処理環境が欲しいのは,ごく一般のコンシューマーユーザーも同じなのだ。

[山田祥平, ITmedia]

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