News 2001年3月9日 10:14 PM 更新

“かっこいいパソコン”が抱えるジレンマ

 2月末に米カリフォルニア州サンノゼで開催された開発者向けのカンファレンス「Intel Developer Forum」(IDF)の期間中,Intelは「Innovative PC Award」を発表した。

 このアワードは,「デザイン,性能,使い易さを備えたパソコン」に贈られるもので,実際に市販されているパソコンを対象に,Intelの提唱する「Ease of Use」イニシアティブに基づき,選考されているものだ。前回までは,コンシューマー向けのデスクトップパソコンだけがその対象だったが,今回からはビジネスデスクトップやノートパソコンも対象に加えられている。

 まあ要するに,かっこよくてスタイリッシュで,かつ使いやすいパソコンを表彰し,業界が目指すべき方向性の礎にしましょうという企画だ。

 今回の栄えある受賞パソコンは,7製品あった。

ソニー「PCV-RX380DS」(米国名:Digital Studio)
ソーテック「Afina AV」
Compaq Computer「iPAQ」
Compaq Computer「Presario 800」
Dell Computer「Latitude C800」
Fujitsu Siemens Computers「Jetson」
Samsung「SENS 760」


ソニーの「PCV-RX380DS」(左)とソーテックの「Afina AV」

 日本のメーカーが2つも入っているのは嬉しいことだ。ちなみに,前回の同賞では,NECの「simplem」が受賞しているなど,このあたりの領域は日本が得意そうなのだから,もっとがんばって,賞を独占するくらいになってほしいものだ。

標準的なパーツだけでは作れない

 かっこいいパソコンというのは,それなりの欠点もある。それは,特別な部品を使わなければならない部分が少なからず出てくるからだ。また,一体化したパソコンでは,まだ使える部分があるのに,別の部分の世代交代などで丸ごと捨てなければならなくなってしまうことがある。

 ぼく自身の実状を見ても,ノートパソコンを何台も買い換えている中で,メインに使っているデスクトップパソコンは,同じタワーケースをずっと使い続けている。もちろん中身に関してはプロセッサはもちろん,マザーボードなどもそっくり入れ替わっているといってもいい。ただ,フロッピーディスクドライブなど,レガシーなドライブに関しては,いったい,いつ買ったものだっけ? というくらいの時期のものを未だに使い続けている。

 必要に応じて,新たなドライブを追加したり,HDDを交換したり,ビデオカードをグレードアップしたりと,箱としてのパソコンを成長させていけるのは,パソコンの醍醐味であると同時に,古きよき時代のパソコンがホビーとして愛される対象になりえ,それがずっと続いている大きな理由になっていると思う。ネジの位置からサイズ,ベイの仕様に,スイッチへの配線,電源コネクタの仕様など,その標準化された造りは,分かってはいてもすごいと思う。このことは,一度でもパソコンの中身を空け,パーツを取り付けたり,入れ替えたりしたことのある方なら,身にしみて実感していることじゃないかと思う。

 ノートパソコンはこうはいかない。ぼくができることといえば,使わなくなったノートパソコンを「捨てる」のではなくて「売る」ことによって,中古市場で第二の人生を歩ませることくらいだ。

 スタイリッシュなPCがどんどん出てきて,コンシューマーがパソコンを姿カタチで選べる自由度があるのが当たり前になるのは大歓迎だが,裏を返せば,こうした面もあるということを忘れてはならない。たとえば,パソコンの標準的な部品以外のものを使っている率のようなものをはじき出して,その数字を明示するような制度があってもいいかもしれない。購入時には,その数字に納得して買うことができるわけだ。標準をうまく守りながら,独自のスタイリッシュさを生み出すデザインも工夫されるかもしれない。

 まあ,メーカー側にとっては,部品だけを交換しながら,1台のパソコンをずっと使い続けられては,新製品が売れなくなってしまうというジレンマもある。また,サポートの問題も大きい。得体の知れないデバイスを入れられて稼働しなくなったパソコンの面倒までは,とても見ていられない。そもそも製品の中身を入れ替えるなんてことは,家電では考えられなかったことだ。

 特別な部品を多用したパソコンがどんどん出てくるということは,パソコンの消費者家電化の現れであるともいえるところが悩ましい。これら両面を解決する道というのはないものだろうか。

関連リンク
▼ Intel Innovative PC Recognition Program

[山田祥平, ITmedia]

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.