News 2001年3月22日 10:15 PM 更新

“IT”に思いを寄せる玩具業界

今年のおもちゃショーでもペットロボットなどのハイテク玩具が注目を集めている。キーワードは「ヤングアダルトの取り込み」だ。

 国際玩具見本市の「東京おもちゃショー」が3月22日,東京ビッグサイトで開幕した。会場では,昨年からブームになっているペットロボットや2足歩行ロボットなどのハイテク玩具が今年も大きな注目を集めており,主催の社団法人日本玩具協会は,「少子化傾向やおもちゃ離れの低年齢化という厳しい環境の中,ハイテク玩具によって中高生やヤングアダルトを取り込みたい」と期待を膨らます。

 日本玩具協会によれば,ペットロボットなどのハイテク玩具市場は2000年度に前年比3倍の150億円規模に達する見込みだという。一方,玩具市場規模は1999年で8578億円,2000年が8579億円とほぼ横這い状態。玩具業界にとって,IT技術を取り込むハイテク玩具はまさに“期待の星”といったところのようだ。

遂に赤ん坊ロボットが登場

 一人暮らしをしていたり,集合住宅に住んでいて犬や猫が飼えない人にとって,ペットロボットはペットを飼いたいという願いを叶えてくれる貴重な玩具だろう。では,赤ん坊を育てられない人というのは,どんな人なのだろうか。


なれない手つきで赤ん坊ロボットを抱く女性。従来の赤ん坊玩具のようにお乳をやることはできない

 トミーが参考出展していた「BABYROBO 001」は,頭部に16ビットのCPUを搭載し,音声認識/合成ユニットやタッチセンサー,目や口を開閉するサーボユニットを装備する“ハイテクベイビー”だ。さらにトミーによれば,この赤ん坊ロボットは人間の赤ん坊の成長過程をそのままシミュレーションすることができるという。例えば,最初はただ寝ているだけなのだが,そのうちハイハイをするようになり,最終的には2本足で立ってよちよち歩きができるようになるというのだ。


BABYROBO 001の内部構造。まるで鉄腕アトムのよう

 また,成長にあわせてだんだん言葉も発するようになり,「赤ん坊を育てる喜びを味わえる」(同社)という。どうやらトミーでは,「結婚はしたくないけど,赤ん坊はほしい」という若い女性の間でブレイクすることを期待しているもようだ。なお,BABYROBO 001は今年10月発売で価格は2万9800円。

遠隔操作対応ペットロボットにペット型恐竜

 セガトイズが参考出展していた「CREGIT」(クリジット)は,ペットロボットのはしりとして一世風靡したファービーに似ているが,中身は別物。こちらは,PCでプログラミングした行動パターンを無線で送信することができる「遠隔操作対応ペットロボット」なのだ。参考出展のため仕様の詳細は未定だが,「無線モジュールをCREGIT本体に内蔵し,別の部屋にいても指令を送ることができる」(同社)という。


米国市場がターゲットのため,リアリティあふれる容姿をしている

 プログラムは,オブジェクトを組み合わせて作成することが可能で,「小学生でも扱えるレベル」(同社)になっている。さらに,音声認識・合成機能の専用ソフトをPCにインストールすれば,CREGITと会話をすることも可能だ。CREGITは米国市場がメインターゲットとなるが,セガトイズでは国内でも10月末に発売する予定。価格は9800円。

 またトミーは,「恐竜を育てよう」(仮称)と呼ばれる恐竜型ペットロボットを出展している。モデルは,白亜紀後期に生息したヴェロキラプトル(通称:ラプター)という恐竜。ラプターは,非常に頭のいい恐竜として知られているが,このペットロボットも賢く作られており,きちんと世話をしないと敵意をむき出しに飼い主を威嚇するようになるという。価格は1万4800円で,2001年11月発売予定。


体長1メートルもある恐竜型ペットロボット。ダイナミックな動きは迫力がある。襲いかかってきたら本当に怖そうだ

嘘発見器やノート型PC玩具も

 おもちゃショーの会場を彩るペットロボットたちだが,ITとの融和が図られているのは,何もペットロボットだけではない。セガトイズでは,携帯端末と合体するノートPC玩具「METALNOTE」を出展。液晶ディスプレイの部分に携帯ゲーム機がはめ込まれていて,普段はディスプレイとして使い,分離すれば単体でゲームを楽しむこともできるという画期的な仕組みになっている。


これからは玩具でPCの操作を勉強するようになるのだろうか

 さらにキーボードはまさにPCのキーボードそのもので,子どもにはいささか敷居が高い気もするが,「PCと同じ作りにすることで,小学生がPCの操作方法を学べる」という狙いがあるようだ。

 またタカラは,嘘発見器「HANDY TRUSTER」を参考出展。これは,PC用の嘘発見ソフト「Truster」を組み込んだもので,玩具と呼ぶのが憚られるほど本格的に作り込まれている。


中央の液晶に表示されるリンゴの“欠け具合”によって判定結果を示す。例えば半分欠けている場合は,「かなり興奮している」ことになる

 HANDY TRUSTERの特徴は,携帯電話の話し相手も嘘発見器にかけることができる点。同梱の携帯電話ケーブルを携帯電話のイヤホンジャックに接続すれば,リアルタイムに話しの内容の真偽を判定することが可能だ。ただし,この場合,相手にその旨を伝えておかないと,後々バレた時にトラブルの元になるのでご注意を。価格は1万2800円で3月より販売を開始する。

 また会場内には,ハイテク玩具ブームをパロディにしてしまった商品もあった。玩具業界では,10万画素レベルの低価格デジタルカメラがブームになっているが,タカラのブースには「なんちゃってデジタルカメラ 見えちゃうんです!」という奇抜な名前のデジタルカメラが出展されている。


本体には「MieChaundesu」と書かれている

 その名の通り,見えちゃうんです!はデジタルカメラではない。これは,富士カラーの「写ルンです」専用のハードカバーで,写ルンですにかぶせれば,まるでデジタルカメラのように見えるというわけだ。ただ,これだけでは商品価値が生まれないので,本体後部には写ルンですのファインダーを映し出す画面(デジタルカメラで言えば液晶ディスプレイの役割)が付いており,ファインダーを覗かなくても撮影できるようになっている。価格は1480円で7月より発売を開始する予定だ。

 なお,東京おもちゃショーは3月22日・23日が商談日となり,一般公開は24日・25日の2日間。入場料は1000円で,開場時間は午前9時〜午後5時。国内137社,海外から18社が参加し,業界関係者2万5000人以上,一般客7万人以上の来場が見込まれている。

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[中村琢磨, ITmedia]

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