News 2001年3月23日 06:22 PM 更新

フレッツ・ADSLでも解消されない開通までの“タイムラグ”

フレッツ・ADSLを申し込むなら,電話それともWeb? NTTの内情を知らなければ,痛い目に遭うかもしれない。

 今年に入って NTT東西地域会社が本サービスを開始した「フレッツ・ADSL」が人気を集め,申し込みが殺到している。ISDNに引きずられてADSLへの参入が遅れたNTT地域会社だが,出足はかなり好調のようだ。

 だがその一方で,先行した「フレッツ・ISDN」と同じように,申し込み方法の違いで開通までの時間が異なるという問題が,フレッツ・ADSLでも繰り返されている。さらには,ADSLモデムの数不足や人為的なミスなどから開通日をいきなり1カ月以上伸ばされるという状況も発生している。

おざなりにされたホームページからの申し込み

  フレッツ・ADSLで再び明らかになったことがある。電話申込みが優先され,ホームページからの申し込みが後回しにされているという状況だ。

 フレッツ・ADSLにおいては筆者の身近な所でこの問題が露見した。同じ集合住宅に住むA氏とB氏は,フレッツ・ADSLの申し込みを2月1日(受け付け開始日)に行った。A氏は電話で,B氏はホームページから申し込んだ。当然ながら,両氏の電話回線は同一局内に収容されているはずで,どちらかが優先されるということは基本的にありえない。

 ところが,A氏は2月16日にフレッツ・ADSLが開通。これに対してB氏の所には,2月末になってようやくNTT東日本から受け付けを確認する電話連絡が届いた。怒ったB氏はこれをキャンセルし,別の会社のサービスを申し込むことにした。A氏との扱いの違いを考慮すればもはや当然だろう。

  筆者は2月2日の早朝にNTT東日本のホームページからフレッツ・ADSLを申し込んだ(2月1はアクセスが集中し,かなり重たい状況だったからだ)。ほどなくして,自動返信のようなメールがNTT東日本から届き,そこには近日中に利用可能かどうかを調査の上,連絡すると書かれていた。

 ところが,だ。2月26日に至るまで一切の連絡がない。さすがに業を煮やして116へ問い合わせを行ってみると,調査は既に終了しており,単なる連絡ミスであったことが分かった。ただこの時は,すぐに工事日を決めることができたので,対応に不満が残りつつもその場は収めることにした。

 約束した工事日は3月12日の午後。スプリッタとADSLモデムはレンタルし,3月7日に業者から届く段取りになっていた。屋内工事は,もちろんセルフだ。

空白の1日半

 3月7日。機材を受け取るために1日在宅するが,何の連絡もなく,機材は届かない。何も連絡がない以上,少々遅れて届くのであろうと思い,気にかかりながらも特に行動は起こさなかった。今思えばこれが間違いの始まりであった。

  3月12日。午後2時頃に局内工事担当から電話が入る。筆者はISDN回線をアナログ回線に切り替えてフレッツ・ADSLを利用するため,回線の切り替えとフレッツ・ADSLの工事を行って良いかという連絡だった。念のため機材が一切届いていない事を伝えると,工事担当者は分からないというので,116へ連絡して,状況を確認してもらうことにした。

 結局結論が出たのは午後4時30分過ぎ。ADSLモデムが手配漏れになっており,筆者の分のADSLモデムがないという連絡だった。しかも,この結論が出るまで何回も局内工事担当からも連絡があり,こちらに状況を確認される。どうやら,工事に伴う内部連絡はまったく出来ていないようだ。

 では開通はいつになるのか,というと4月下旬だという。ADSLモデムは不足状態にあり,急ぎで手配できる物がないという説明だった。担当者からは幾度も謝罪されたが,こちらは1日半の待機時間の無駄という“実害”が生じているのだ。

 このままでは,ホームページでの申し込みからフレッツ・ADSLの開通までほぼ3カ月かかることになる。116で申し込んでいればほぼ2週間で開通した実例もある事を考慮すれば,到底我慢のできる状況ではない。

NTT東日本だけの問題ではないが……

 だが,ADSLモデム不足が引き起こすADSLサービス開通の遅れは,NTT東日本に限ったことではなく,ADSLサービスベンダーが共通に抱える問題だ。そのため,受け付けタイミングの問題で,大幅にADSL接続サービス開始が遅れるのは,納得できないものはあるが,現状では致し方ないと我慢するしかないのかもしれない。

 問題なのは,NTT東日本がフレッツ・ISDNでも問題視された申し込み方法の違いによるサービス開通の“タイムラグ”を,フレッツ・ADSLでも解消できなかったこと。そして,工事におけるNTT東日本内部での連絡,ならびにユーザーへの連絡がまったく徹底していないこと。さらには,不測の事態に対する対応が全くなっていないことだ。

 今回の場合は,機器が手配されていないことが直接の原因だったが,民間企業であれば,それ以降に必要な機材を順送りするなどしてでもトラブルの解消を優先するはずだ。それができないNTT東日本は,いまだに半官半民の体質であると言われても仕方がないだろう。

一転,1週間後に開通──不公平是正に向けて動き出すNTT東日本

 開通が遅れるのは今更どうしようもないが,ただ待っているのも納得がいかないので,フレッツ・ADSLのホームページを通じ,状況説明を依頼するメールをNTT東日本へ送ってみた(多少はゴネてみよう,という気持ちがなかったと言えば嘘になる)。

 2日後の朝,NTT東日本から再び連絡が入る。驚いたことに,キャンセルになった分のADSLモデムが確保できたので,早ければ当初の予定から1週間遅れで開通できるという。

 また同時に,問い合わせのメールに対する返答もあった。もちろんNTT東日本公式のものではないが,申し込み方法の違いで開通までの時間に差があることを指摘されているのは事実であり,社内連絡の不徹底も認めていた。またADSLモデムに関しては完全に需要の予測ミスで,十分な数を確保できなかったためだと書いてあった。

 この翌日になり,NTT東日本はフレッツ・ADSLのホームページに謝罪のメッセージを掲載する。内容を要約すれば,「お待たせして申し訳ありませんが,受け付け順に処理を進めておりますので,お待ちください」とのこと。まだ実態は見えないが,ようやく不公平是正に向かって動き始めたようだ。

 フレッツ・ADSLはどちらかと言えば急転直下で正式サービスが開始された。現場に混乱が生じ,ADSLモデムの確保が十分に出来なかったのも理解できる。しかし問題の根本は,お役所仕事とも言える顧客への対応だ。フレッツ・ADSLでは予想外に申込みが集中し,実際に顧客に対応する現場の担当者はおそらく大変な思いをしていると思うが,顧客に対して不公平となる対応だけはなくしてもらいたいものだ。

  筆者のフレッツ・ADSLは無事開通した。おおよそ1Mbps以上の受信速度をキープしており,サービスの質は十分満足の行くものだ。今年はブロードバンド元年と言われているが,これが言葉だけで終わらないためにも,NTT東日本にはさらなるサービス体制の改善を期待したい。

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[坪山博貴, ITmedia]

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