News 2001年5月1日 11:59 PM 更新

IPv6の誕生

膨らむ要望とIPv4の限界

 かつて,インターネットが学術中心の媒体であったときは,規模に関する問題も,セキュリティに関する問題もそれほど重要ではなかった。しかし,規模が格段に大きくなり,その上で商取引が行われ,売買のためにクレジットカードの情報などが送受されるようになると,当然のように通信の確実性やセキュリティの確保が強く望まれるようになる。と同時に,より大きな帯域の実現や接続ホスト数の増加,サービス要求に対する機能拡張なども必須の項目として要求された。

 ご存知の方も多いとは思うが,IPv4の限界が叫ばれている代表的な要因は

  • アドレス不足
  • 経路制御情報の増大
  • 細分化,ヘッダ処理によるルータ負荷の増大
  • サービス要求に対する機能拡張

 である。個々の具体的な説明はほかに譲るが,ここで,たとえば経路制御の問題を考えてみよう。

 IPv4で表現できるアドレス空間は,仮にそのすべてを使えたとしても42億強(2の32乗)程度しかない。したがって,できるかぎり無駄なく使おうとすると,アドレスを利用者に割り振るときにはできるだけ小刻みに出すことが求められる。結果として経路表が増え,ルータへの負担が増加する。

 分かりやすくするために,このことを郵便配達に例えてみよう。大規模な団地があり,配達人(ルータ)は棟ごとに配達すればいいものとする。そのとき,少数の大きな棟で構成された団地と,数多くの小さな棟で構成された団地では配達人にかかる負担がものすごく違う。

 ルータは,インターネットを支える重要な装置である。経路表が大きくなると,その情報を持つためのメモリ容量や宛先ネットワークを検索するための処理能力も必要になるが,ルータにも機能や処理能力の限界があるということを忘れてはいけない。過大な負荷をかけ続けると,インターネットがうまく動かなくなる恐れがある。

 IPv4は,「CIDR」(Classless Inter-Domain Routing)の導入やプライベートアドレスを積極的に活用することなどで延命を図ってきたが,そろそろ限界が見え始めたということかもしれない。

次世代プロトコル

 そうした状況の中,1993年頃にIETF(Internet Engineering Task Force)で次世代のインターネットプロトコルの検討が始まった。「IPng」(Internet Protocol Next Generation)がそれである(簡単な経緯をこの文末で紹介する。興味があれば参照してほしい)。

 さて,そこではいったいどのようなことが求められたのだろう。かなりおおざっぱな言い方だが,おおむね次のようなものである。IPv4の弱点をなくし,スムーズな移行が求められているのが分かる。

  • IPv4と同様のサービスの提供
  • さらに多くのエンドポイントを扱える
  • さらに広い帯域を扱える
  • 柔軟なトポロジー
  • 堅牢で安全なサービス
  • IPv4からの簡単な移行
  • 機能の拡張

 改善は,使いたくなるということを含めてネットワーク管理者にとって好ましいものであること,また,早期展開への刺激としての機能も要求されている。IPv6は,こうした要求に応えるものとして考え出された。

 RFC1752で正式にIPv6と命名されたIPngだが,その後,1998年末にIPv6関係のRFCに大改定が加わり,RFC2460“Internet Protocol, Version 6(IPv6) Specification”から始まる一連のIPv6関係のRFCが現在用いられている。

----- 参考 -----

IPngからIPv6へ

 IETFは,まずIPngが備えるべき具体的要件と考慮すべき条件についての意見を求めるRFC1550“IP: Next Generation (IPng) White Paper Solicitation”を1993年12月に発行し,RFC1726“Technical Criteria for Choosing IP The Next Generation (IPng)”でIPngの評価作業で使用すべき一連の基準を定めた。詳細については,このRFCを読んでほしい。5.1から5.17までの17項目がそれだ。

 その後,いくつかの提案がRFC1726に照らして評価され,“CATNIP”,“SIPP”,“TUBA”の3つの案から最終的にSIPP案に128ビットアドレスを導入し,その他の問題に対処するという改訂がなされることになった。

 最終勧告は,この改訂版SIPP案を中心に,TUBA案に見られた自動設定機能やCIDRに基づくアドレス構造などを盛り込んだ内容となっている。これについての詳細は,RFC1752を読んでいただきたい。

 RFC1752“The Recommendation for the IP Next Generation Protocol”では,IPngの重要な機能を記述し,それを正式にIPv6と命名している。

プロローグ2/5IPv6とは

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