News 2001年5月7日 05:17 PM 更新

コンセプトを変えたLibretto,その印象は?

約2年振りに発表された「Libretto L1」は,かつてのLibrettoシリーズとは明らかに異なるコンセプトで登場した。“世界最小”の称号を捨てた代わりに,ストレスなく利用できるキーボードと大型ディスプレイという選択をしたのだ。

 「Libretto ff」から約2年。もうLibrettoには新製品が登場しないかもしれない。そう考えていたLibrettoファンも多かったことだろう。しかしこの5月,いよいよ待望の新製品が登場する。米TransmetaのCrusoeプロセッサを搭載する新機種は「Libretto L1」。

 ただし,従来のLibrettoに新しいプロセッサを搭載したものではない。サイズも,そして利用スタイルも,異なったものを想定しているようだ。

Libretto? それとも軽量SS?

 オリジナルのLibrettoは世界最小のWindows 95が動作するノートPCとして設計され,“ミニノートPC”という新しいカテゴリを創出した傑作だった。従来のサブノートPCと同じような使い方は困難だったが,一方でどこにでも持ち歩いてPCの機能を利用できる点を評価したユーザーからは絶大なる支持を受けた。

 低価格と軽量さがウケてブームとなったLibrettoだが,プロセッサの高性能化と消費電力増大の中で,次世代製品の開発はストップしていた。専用チップセットなどの開発費回収が難しかったことなども,新製品の登場が遅れた原因だったのかもしれない。

 そうした中,新しいLibrettoのL1シリーズは以前のLibrettoシリーズとは明らかに異なるコンセプトで登場した。L1シリーズは,かつてのLibrettoが持っていた“世界最小”の称号は捨てた代わりに,ストレスなく利用できるようにするためにキーボードとディスプレイの大型化という選択をしたのだ。

 東芝が配布したLibrettoの資料には「ミニノートでありながら,ストレスなく入力が可能なキーボード」「使いやすさと小型・軽量化を追求」といった文章が並ぶ。



手元にあった初代「VAIOノートC1」(PCG-C1)および「FMV-BIBLO LOOX 」(FMV-BIBLO LOOX T5/53W)と比較してみた。C1より一回り大きく,LOOXより若干小さい


上からVAIOノートC1,Libretto L,FMV-BIBLO LOOX

 キーボードはDynabook SSシリーズと同じ18ミリピッチ,液晶パネルは富士通の「FMV-BIBLO LOOX Tシリーズ」と同サイズ同解像度の10インチワイド型1280×600ドットだ。底面積はLOOX Tシリーズより若干大きい(幅268ミリ,奥行き167.2ミリ)が,最薄部を20.5ミリと薄型に仕上げることで携帯性と操作性の両立を狙ったという。重量は標準の3セルバッテリ搭載時で1.1キロだ(実測値で1080グラム)。価格も14〜15万円の実売に落ち着くという。底面積は大きくなったが,薄い分だけきょう体の容積は小さい。実際,LOOX Sシリーズや「VAIOノートC1」シリーズはもちろん,「CASSIOPEIA FIVA」をもわずかに凌ぐ。

 確かに使いやすくなった。そして,画面も従来機と比較すれば遙かに見やすい。しかし,Librettoという名前から想像される面影は持たない,「Dynabook SS」を縦に縮めたパソコンという印象だ。操作性を重視するなら,つまりPCをPCらしく使いたいなら良い変更であると言えるが,小型の電子ツールとして活用していたLibrettoユーザーには,必ずしも良い変更ではないかもしれない。

 外出先でテキストベースの処理を多く行う必要がある,私のような職業から見ると,Libretto L1は実用性が高く,かつ安価で軽量なPCということで魅力的に見える。東芝はLibretto L1をB5サブノートよりも軽量なPC,ミニノートPCよりも使いやすいPCとして位置付けている。結局は使い場面次第ということだ。

軽量サブノートか,重いミニノートか

 実際に使い始めてみると,十分なサイズが確保されたキーボードには好印象を持った。Librettoシリーズお得意の,スライドノッチなしで液晶パネルを開けるロック機構も健在。鞄から取り出して,サクッっと開ける軽快さはなかなかのものだ。

 一方,外出先で長時間利用するには標準のバッテリー容量に少々不満を感じることになった。カタログ値では3.5〜4.5時間という駆動時間になっているが,液晶パネルの輝度をかなり落とさなければ,3時間利用するのは厳しい。多少の余裕を見れば,2時間半程度の駆動時間と考えておくのが妥当だろう。このあたりの事情は,VAIOノートC1やLOOX Sと同様である。

 オプションで用意される大容量バッテリーが,標準バッテリーの3倍の容量を持つとのことなので,外出先で本格的に利用するなら必須のオプションとなるだろう。大容量バッテリーは試作段階とのことで細かな数値は分からないが,おそらく300グラムほどの重量ペナルティと引き替えに実働で8時間以上のバッテリ駆動時間を得ることができるはずだ(カタログスペックでは,約11〜14時間の駆動時間となっている)。

 パフォーマンス的には,昨年末に発売されたCrusoe搭載機と変わるところはない。TM5600/600MHzに128Mバイトメモリという構成は,ほかのライバルと同じものだ。Transmetaが次世代プロセッサのTM5800をうまく出荷できていないことを考えれば,これ以上の選択肢はなかったのかもしれない。実際にはCrusoeのファームウェアがアップデートされた分だけ,高速になっている可能性がある。しかし,手元にあるNECの「LavieMX」と比較してみても,はっきりとした数値でそれを確認することはできなかった。

 ただ,その位置付けの判断は微妙だ。B5ファイルサイズのサブノートPCを持ち歩いている身としては,キーサイズを維持したままの軽量化は歓迎できるものだが,大容量バッテリーを搭載すると(おそらく)1.4キロ程度になり,B5サブノート並の重さになる。逆に標準バッテリーのままでほかのミニノートPCと比較すると,100グラム程度の重量的な不利を抱えることとなる。

 もちろん,こうした比較は意味のないものかもしれない。既存のミニノートPCとも,B5サブノートPCとも異なる,特異な製品というポジションの製品と考えればいい。好意的に捉えれば,軽量なサブノートPCがほしい人にも,操作性を改善したミニノートPCを望んでいる人にもフィットする製品ともいえる。

 なにより,その価格を考えれば,PCを外に持ち出したいと考えるモバイルPCのエントリーユーザーにアピールする製品である。

USBポート2個とIEEE1394ポートを装備

 最後になったが,インタフェース周りにも触れておきたい。スペック表に目を向ければ分かることだが,レガシーポートのサポートがうち切られ,かわりにUSBポートが2個装備された。また,IEEE1394ポートも標準で搭載する。PCカードスロットはType II×1の構成だ。

 VGA出力も有するが,さすがに標準コネクタは取り付けることはできず,ミニサイズのコネクタから変換ケーブルで引き出す形となる(変換ケーブルは標準で添付されている)。ポインティングデバイスのアキュポイントIIは,Dynabook SSシリーズのものと基本的に同じ。スクロールを行うためのボタンが2個追加されているのが特徴だ。

 残念なのは100BASE-TXが装備されていないことだ(56Kbpsモデムは標準装備)。コンシューマー用途を想定してのことかもしれないが,最近はコンシューマー機にもブロードバンド接続用としてLANインタフェースが標準装備されることも多い。会社と自宅の往復時に携帯したいユーザーのためにも,次作での標準装備を望みたい。

 なお,OSは「Windows Me」のみの設定。東芝オリジナルの省電力ツールがインストールされており,バッテリー残容量に応じて省電力設定(CrusoeのLongRunにも対応)が行える。東芝によると,本体出荷後に同社WebサイトでWindows 2000用のドライバも配布する予定だという。

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[本田雅一, ITmedia]

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