News 2001年5月24日 10:02 PM 更新

2輪車にもエアバッグやカーナビ――自動車技術展

安全性への追求は,生身で運転する2輪車の方が,より現実的かもしれない。

 自動車技術者向けでは国内最大という展示会「自動車技術展:人とくるまのテクノロジー展2001」(主催=自動車技術会)が,横浜市のパシフィコ横浜を会場に5月23〜25日の期間で開催されている。第10回目となる今年は,過去最多の195社が出展した。主催者によると,期間中に3万3000人の来場者を見込んでいるという。


パシフィコ横浜で開催された自動車技術展

 「先進安全技術」がテーマの一つとなっている同展示会には,人と車の安全を目指すためのエレクトロニクス技術が数多く紹介されていた。なかでも目を引いたのは,国土交通省が進めるプロジェクト「ASV-2(先進安全自動車推進計画-第2期)」に基づいた自動車の展示だ。


ブタの鼻のようなのは,ステレオ赤外線カメラ。歩行者の有無や路面状況をドライバーに知らせる

 最先端のエレクトロニクス技術を用いることで,人・道路・自動車とが一体化し,道路交通の安全性,輸送効率,快適性,環境保全などを目指すのが「ITS(高度道路情報交通システム)」だ。そのITSを実現する自動車を研究・開発するプロジェクトが,ASV-2だという。しかし,このような説明だけではピンとこない人も多いだろう。同展示会では,屋外に「ASV-2コーナー」を設置して,各メーカーがASV-2の実車を展示していた。フォトレポートで,ASV-2の最新技術動向を紹介していきたい。


屋外のASV-2コーナーでは,実車を展示

 ASV-2コーナーには,トヨタ自動車,本田技研工業,日産自動車,マツダ,三菱自動車工業,ダイハツ工業,富士重工業,ヤマハ発動機,スズキ,川崎重工業の10社が,ASV-2の実車(4輪車8台,2輪車4台)を展示していた。取材日はあいにくの雨空となってしまい,屋外展示コーナーを訪れる来場者も少なかったが,それでも熱心な来場者は片手に傘,片手にカメラを握り締め,大型スクリーンやパネルによる最新技術紹介や係員の説明に耳を傾けていた。


仮設テントの2輪車コーナー

 同コーナーで来場者の関心が高かったのは,4輪車よりもむしろ2輪車の方だ。(仮設テントの中に展示してある2輪車コーナーは,雨やどりのついでに,ということかもしれないが。)

 ホンダは,2輪車にエアバッグを装備したASV-2研究車を展示していた。4輪車用よりも大きい容量となる140リットルのエアバッグが,衝突時にハンドルの中央から飛び出して衝撃を吸収してくれるというもの。「2輪車にはシートベルトが無いので,体が少々ずれてもいいように4輪車より大きくしてある」(同社)ということだが,エアバッグは瞬時に膨張させ,衝撃吸収させた後はすぐに収縮させなければならないため,大容量化は至難の業とか。また,横からの追突には弱いなど,改善すべき問題も多いという。


エアバッグが膨らんだ状態で展示

 ヤマハは,大型スクーターのメーター中央部にカラーモニターを設置し,カーナビやCCDカメラの画像を見ることができる「マルチインフォメーションシステム」を展示していた。CCDカメラはボディの左右と後方に設置してあり,ウインカーと連動した手元のスイッチ一つで,左右と後方の周辺情報がモニターを通じて分かるというもの。カーナビも手元で操作できる。頭を動かさずに情報が確認できるので,運転操作の負担も軽くなるという安全運転の支援システムだ。

 スズキは,ヘルメットの中に小さなプロジェクタを装備し,それを半透明のスクリーンに映し出してライダーの視野の中に表示させる「ヘルメットマウントディスプレイ」や,シールドの曇りを防止するための装置を装備した「視界向上ヘルメット」など,ヘルメットに組み込まれたASV-2技術が目を引いた。視界向上ヘルメットでは,自作パソコンでお馴染みのペルチェ素子を使って,冷却・除湿した空気をヘルメット内に供給することで曇りを除去する方法などが提案されていた。ペルチェ素子での冷却は,曇り防止以外にもヘルメット内を快適にするメリットがあるが,「課題は消費電力が大きいこと」(同社)だという。


ヘルメットマウントディスプレイ

 カワサキは,カーブや交差点で2輪車が傾いたときでも路面を的確に照射するという「配光可変型前照灯」を展示していたが,外観は普通の2輪車と変わらない印象で少々物足りなさを感じた。やはり,「男,カワサキ」は無骨なイメージがお似合いなのだろうか。


シンプル路線のカワサキ車には,ASV-2は似合わない?

関連リンク
▼ 社団法人自動車技術会

[西坂真人, ITmedia]

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