News 2001年6月8日 09:56 PM 更新

記録メディア戦略に苦慮する松下

【国内記事】 2001年6月8日 09:56 PM 更新

 松下電器がプレスセミナーを開催し,報道関係者を対象に,SDメモリーカードと,DVDに関する情報をアップデートした。同社は,SDメモリーカードの本格的な普及に向けて,今月大幅な値下げを断行。現在,同社の通販サイトで2万2000円で売られている64Mバイトの製品を,約半額に相当する1万1480円に引き下げるという。オープン価格なので,量販店での価格はさらに低いものとなる可能性があるという。値下げはさらに続き,最終的に2005年には現在の10分の1の価格にすることを目指すらしい。64Mバイトが5年後にどれほどの意味を持つか分からないけれど,それが1000円前後で購入できるようになるということだ。

 現在は,SDメモリーカードに対し,月産30万枚の生産体制を持つ同社だが,10月にはこれを50万枚体制に持っていくらしい。直接のライバルとしては,ソニーのメモリースティックがあるが,こちらがすでに累計で1000万枚の出荷を達成しているのに対して,松下が過去に出荷した枚数は約25万枚と,実績の点では,はっきりいってお話にならない。東芝やサンディスクが供給した枚数を入れても,とても勝負にならないのはご存じの通りだ。それでも同社は,デジタルスチルカメラの市場を最大のターゲットとして,SDメモリーカードの推進を図るという。

 ちなみに,2005年時点でのメモリカードの需要は1億5000万枚が予測され,SD陣営でその50%,松下としては,さらにその半分をとりたいと強気の構えだ。

 松下の考えでは,SDメモリーカードは,ブリッジデータメディアとしてとらえられている。つまり,データをデバイスからデバイスへ,橋渡しするためのメディアだ。とはいうものの,実際にこのカードが使われている商品を見てみると,とても,それが実現されているとはいえない。

電子レンジにSDカード?

 例えば,そろそろ発売になるSDメモリーカード対応電子レンジ。最初からついてくるSDメモリーカードには,365種類のレシピが付属し,電子レンジを自動的に制御することができる。断熱材と空冷で,メモリーカードが破壊されないような配慮も万全だ。また,別売りのレシピカードとして,約4000円程度で,8Mバイトのお菓子レシピなどのコンテンツが用意される。


SDメモリーカード対応電子レンジ

 電子レンジの買い換えタイミングは,約10.5年ごとという調査結果があるそうだが,今年,このレンジを購入したユーザーは,10年後,果たして,手元のSDメモリーカードを生かすことができるだろうか。何よりも,電子レンジ内のSDメモリーカードが,スロットから引き抜かれて,他のデバイスに装着されることがあるのかどうか。そのあたりのソリューションをきちんと用意できない以上は,SDメモリーカードである必然性はなく,電子レンジがキラーデバイスとはなり得ない。

 一方のDVD-RAMだが,こちらは,松下としては,ライブラリーメディアとして,配布や記録,編集のためのものとして推し進めている。記録ができるDVDの規格はやや乱立気味で,なかなか手が出せないのが現実だ。かつてのVHS vs. ベータ以上の混沌とした状態が続いている。

 とはいえ,メディアがテープからディスクに移行するのは間違いなく,しかも,PCとAVで同じメディアが使えることは,業界にとっての必須課題だ。誰もが早く決まってほしいと思っていても,各社にとっては死活問題でもあるだけに,結論が出るのはまだ先になりそうだ。

 併催された内覧会では,参考出品として,ジャイロを内蔵した自走式の掃除機を見せてもらった。撮影禁止で写真をお見せできないのが残念だが,障害物を避けながら縦横自在に部屋を掃除してまわるスツール形状の掃除機は,ちょっと未来の家電を感じさせるものだった。

 これまた撮影禁止だったが,FTTH対応のセットトップボックスや,ゲートウェイサーバなどの展示もあり,近い将来の家庭ITに対する同社の意気込みを感じることができた。AVとPCを統合化した家電メーカーを目指す同社にとって,パソコン事業がなかなか軌道に乗っていかないのはつらいところだろうが,ここを乗り越えて,何とか頑張ってほしいものだ。

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[山田祥平, ITmedia]

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