News 2001年6月13日 09:39 PM 更新

デジカメ? MP3プレーヤー? ビデオカメラ?――コダックmc3レビュー

米国で先行発売され,国内でも近々登場のmc3を,少しだけ早く使ってみた。

 コダックは,米国で先行発売され話題となっているマルチメディアデバイス「mc3」を,国内でも6月下旬より発売する。ネット販売のみで,2000台の限定販売となる。同社直販サイト「shop@kodak」での価格は2万9800円。ネット販売のみということで,ショップで実機に触れる機会はほとんどないと思われるmc3だが,発売前に触れる機会を得たのでレビューしてみたい。


ネット販売のみで2000台限定のmc3

 デジカメに動画撮影機能とMP3プレーヤー機能を装備しながら軽量コンパクトボディを実現しているmc3を,同社ではマルチメディアデバイスと呼んで既存のデジカメとは別ジャンル製品であることを強調している。デジカメとしてスペックを見ると「動画撮影やMP3が聴けても,30万画素ではね」となるが,同社がmc3で目指すところは,デジカメとは別の世界らしい。


ホールド感のある軽量小型ボディ

 電池を含めた重さが約170グラムと非常に軽く,サイズも65(幅)×105(高さ)×35(奥行き)ミリという小型なボディで,ちょうどタバコと同じぐらいのサイズだ。ホールドしやすいようにグリップを設けた縦型で手にすっぽりと収まり,主要な操作は片手でできる。

 撮像素子は,30.7万画素のCMOSセンサーを採用。640×480ピクセルの静止画が撮影できる。デジカメの撮像素子はCCDが一般的だが,CMOSセンサーは多くの回路をワンチップに内蔵することでコストダウンを図れるほか,小型,軽量,省電力の製品を設計できる点が特徴だ。一方で,ノイズや画素精度のばらつき,低感度といったデメリットから高解像度デジカメへの採用は難しいとされ,現状ではCCD採用のデジカメが主流となっている。


自社開発のCMOSセンサーを採用

 mc3に採用されたのは自社開発の「KAC-0310VGAセンサー」というCMOSセンサー。全てのピクセルを同時に露光できる同社独自技術「グローバルシャッター機能」により,鮮明な画像を実現できるという。また,CMOSセンサーのメリットでもあるデータの高速読み書きが可能な点が,mc3の動画撮影機能で重要なポイントとなっている。

長時間の連続録画が可能

 mc3には32Mバイトのフラッシュメモリが同梱されている。同社のスペック表では,1秒間に10フレーム(320×240ピクセル)の標準モードで32Mバイト使用時に最大約10分の動画撮影が可能とある。コダック広報によると「実は,電池さえ持続すれば,コンパクトフラッシュメモリの容量分だけ連続録画ができる」とのこと。つまり256Mバイトのコンパクトフラッシュでは,約80分のビデオ撮影が可能となるというのだ。動画撮影機能を搭載したデジカメは多いが,画像バッファの容量の関係から数十秒までと限定されている機種がほとんど。データの高速読み書きができ,省電力設計が可能なCMOSセンサーの採用が,mc3の長時間録画を可能としている。

 ちなみに手持ちのサンディスク製64Mバイトを使用してみると,液晶モニタに出てくる録画可能な時間は「22分10秒」となった。早速録画を試みたところ,しっかり22分の連続録画ができた。動画撮影時約90分という電池駆動時間を考えると,256Mバイトぐらいの容量がベストだろう。


TYPE Iのコンパクトカードスロットを内蔵。反射型液晶に,バックライトは装備していない

 液晶は外光を利用した反射型で,暗い場所では画面を全く確認できない。しかし,明るい場所や屋外で見る分には問題なく,何より電池の駆動時間に反射型液晶が貢献しているのはいうまでもないだろう。ゴルフのスイングチェックや,スキーのフォームチェック,テニス,野球,サッカーなど,屋外のスポーツにアクティブに使うのが,mc3が本領発揮するシチュエーションといえる。

 赤ちゃんのビデオ撮影にも適しているかもしれない。ビデオカメラもかなり小型になってきたが,常に携帯している人は少ないだろう。赤ちゃんの貴重な一瞬の表情を捕らえるには,軽量小型のmc3が威力を発揮するだろう。

 結婚式なんかも重宝しそうだ。披露宴の様子を撮影し,2次会の会場でテレビに接続して再生すれば,盛り上がること間違いなしだろう。同様にカラオケルームで使うのも面白いかもしれない。自分の歌っている姿というのは,なかなか拝めないものだ。

 ダンスのレッスンにも効果的だろう。年配のユーザーなら「踊りのお稽古」といったところか。裏側に三脚ネジも切ってあるので,小型の三脚で固定し,会議の議事録がわりに使うのもいいかもしれない。


小型三脚を使い,議事録がわりに

 MP3プレーヤーとしての性能は,可もなく不可もなくといったところ。音質も,専用MP3プレーヤーと変わらない。アーチスト/曲名(英語のみ),トラックナンバー,演奏時間などが液晶に表示。音楽再生が始まると液晶表示が自動的に消えるなど徹底した省電力設計となっている。また,本体にスピーカーを搭載しているので,大勢でのモニタリングも可能だ。

 mc3の最大の問題点は,その販売台数だ。米国では4月から発売しており,店頭で普通に購入できるmc3だが,日本では大手量販店のオンラインショップか同社の直販サイト「shop@kodak」でのネット販売しか行わず,販売台数も2000台限定と非常に少ない。「mc3は新規商品のトライアル的要素が強い商品で生産量も少ない。増産の予定はなく,現時点ではmc3の後継機種が発売されるという予定もない」(同社広報)ということなので,「幻の逸品」となる可能性も高い。

 今年のデジカメ市場は300万画素から400万画素へとシフトし,高画質化はさらに加速するだろう。mc3は,デジカメ市場にアンチテーゼを投げかける商品として注目したい。

 主な仕様は以下の通り。

製品名 Kodak mc3
撮像素子 30.7万画素CMOSセンサー
レンズ 短焦点37ミリ相当
絞り F2.8
液晶モニタ 反射型(バックライトなし)
記録方式 JPEG(Exif Ver.2.1対応),QuickTime(動画)
記録画素数 静止画:640×480ピクセル,動画:320×240(20FPS/10FPS)
ISO感度 ISO120相当
ホワイトバランス オート
露出モード プログラムAE (中央部重点測光)
バッテリー持続時間 静止画:約2時間 ,動画:約1.5時間,MP3再生:約6時間
記録メディア コンパクトフラッシュ(32Mバイトタイプを同梱)
電源 単4形電池×3(アルカリ乾電池,ニッケル水素電池)
サイズ 65(幅)×105(高さ)×35(厚さ)ミリ
重量 170グラム(電池含む)
価格 2万9800円(shop@kodakでの価格)

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[西坂真人, ITmedia]

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