News 2001年6月15日 06:46 PM 更新

電源コンセントが少ない

【国内記事】 2001年6月15日 06:46 PM 更新

 最近の分譲マンションの中には,完成後,実際に購入者が入居して,窓からの景観が話と違うとか,部屋がモデルルームのイメージと異なるといったクレームが出るのを防ぐために,建物がかなり完成してしまってから売り出しを始めるものがある。それはいいとしても,物件によっては,室内の間取りを含め,いっさいの設計変更が不可能というところがあって,ちょっとあきれてしまっている。まだ,整地が終わっていないような物件で,どうにでもなりそうに思えるような段階でも,設計変更不可というケースも聞く。

 そういう物件では,間取りはおろか,コンセントの位置や数,テレビのアンテナ線,電話回線のモジュラーの位置さえ指定できなかったりする。これでは,LANの配線工事なんて,夢物語だ。もっとも,今後は,無線LANの浸透に伴い,家庭における有線LANの敷設は,さほど重要な課題ではなくなるかもしれない。

 でも,それにしてもひどいと思う。あまりにも標準仕様がお粗末なのだ。例えば,以前に見たマンションのモデルルームは,各部屋にLANのジャックが用意され,玄関脇の配電盤のスペースにハブを置き,各部屋にLANを分配できるようになっていた。そのハブ設置用のスペースには,ケーブルテレビのケーブルがきていて,そこにルータやモデムを置けるようになっているのだが,なんと,そのスペースには電源コンセントがない。真上に配電盤があるのにだ。しかも,それが仕様だという。あるいは,電話回線などもここにはきていない。デベロッパーが指定したケーブルテレビ業者のケーブルモデムを設置するしかないのだ。

 入居者は,まだ見ぬマイホームに対して何千万円もの対価を支払うために,数十年ものローンを覚悟し,一世一代の買い物として住宅を購入する。なのに,家庭のITインフラのためのファシリティが,ここまでお粗末だと,本当にこの先,入居者が数十年住むであろうことを考えて設計しているんだろうかと,他の部分の設計施工まで心配になってしまう。

電化製品の数に対してコンセントが少ない

 LAN以前の問題としては,例えば,電源コンセントを見ると設計の思想がわかる。今まで,ひとつの部屋に2カ所を超えてコンセントがもうけられたモデルルームを知らない。そういう部屋を演出するために,主寝室といった名前のついた部屋には,ベッドなどがおいてあるわけだが,コンセントは,そのおしゃれなベッドの裏側にふさがれてしまっている。部屋の片隅には,おしゃれな液晶ディスプレイのテレビが置いてあったりするのだが,そのコーナーには,テレビのアンテナ線もコンセントもなかったりするわけだ。だから,このテレビに映像は映し出されていない。

 モデルルームのように,演出のために,家具や電気製品が極限まで少ないケースでもこうなってしまうのに,通常の生活の中ではいったいどうなることやら。これらのアコモデーションがどのように使われるのかを考えないで設計がされるのだろうか。納得して買うならまだしも,それを設計変更不可というのはちょっと信じられない。

 身の回りをちょっと見回してほしい。テーブルタップを使っていない部屋はあるだろうか。現代人が使いたい電化製品の数に対して,現在のマンション業者が提案する設計では,圧倒的にコンセントの数が少ないのだ。


現代人が使いたい電化製品の数に対して,圧倒的にコンセントが少ない

 こんな話もある。壁の床から腰くらいの高さ位置に,ちょっとしたくぼみが空いていて,そこは,電話機などをおけるスペースとして確保されている。もちろん,電話回線はきちんときている。ショールームではそこに留守番電話機が置かれてた。でも,電源は入っていなかった。なぜなら,そこには,コンセントがないからだ。これも仕様だという。ウソのような話だが本当だ。3秒くらい考えれば分かりそうなことが,なぜできないのか。

 個人的には天井にコンセントがあってもいいくらいだと思っているが,そこまでいかなくても,現代生活では,現行マンションの設計よりも,4倍以上の数のコンセントがあってもまだ足りない。コンセントの位置,あるいは床からの高さなども検討課題だし,出窓部分や玄関先,あるいは部屋の真ん中あたりの床など,コンセントがあると便利な位置は多い。エアコンや冷蔵庫の設置場所は想定されて,先回りして,コンセントを設置できるのだから,さらに現実に即した生活様式も,積極的に提案できるのではないだろうか。安全基準の問題もあるのだろうから難しいのかもしれないが,これもなんとかしてほしい。ゲンコツ状の無骨な電源アダプタの使用を強要する機器側にも問題はあるが,設備そのものが30年前の仕様では暮らしは豊かにならない。

 あるいはインターフォン。オートロックのマンションでは,玄関ホールの来客と会話し,顔をテレビ画面で確認後,ロックを解除するが,そのための端末は,多くの場合リビングルームに設置されている。これまた,寝室や浴室,トイレなどに,子機を設置できないことが多い。今は横着でこういうことに文句を言っているが,玄関チャイムが鳴るたびに,部屋から部屋に移動するのが大変な老後が待っているのだ。

 ITが家庭にまで入り込んでいく。これは自然な成り行きだ。IPv6は,128ビットのアドレス空間で家庭内の様々なデバイス,そして,家族ひとりひとりが身につける様々な電子機器に,個別のIPアドレスをふり,それぞれが情報をやりとりする環境を提供するという。素晴らしい世界だ。でも,それ以前の環境を改善することを急がなければなるまい。

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[山田祥平, ITmedia]

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