News：出版社になりたいACCESS

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2001年6月19日　10:51 PM 更新

出版社になりたいACCESS

組み込み型Webブラウザで国内トップシェアを誇るACCESS。出版事業に乗り出す意図とは？

　組み込み向けソフト開発のACCESSは，6月18日の同社取締役会で設立が決議された子会社「アクセス・パブリッシング」（仮称）について，19日に都内で新会社の概要や事業方針をマスコミに説明した。

　新会社は雑誌書籍の編集刊行と，ノンPCメディアへのコンテンツ配信を主な目的とする。7月下旬に設立予定で，資本金の2億円はACCESSが100％出資する。ACCESSの荒川亨社長が新会社の会長に就くほか，雑誌「ぴあ」元編集長で現在は同社アクセスパブリッシング事業準備室長の安武不可止氏が社長に就任する予定。

　組み込み型Webブラウザで国内トップシェアを誇る「NetFront」を持つACCESSだが，なぜ今，出版事業を中心としたコンテンツサービスに乗り出すのか？

ACCESSの荒川社長

　メーカーが作った新しい端末にブラウザを載せるというこれまでの事業の中で「端末メーカーから，一緒にコンテンツも作って欲しいという要求が増えており，コンテンツの重要性を感じていた」という同社。出版事業を中心とした新会社設立について荒川社長は「コンテンツを集めていく過程で，やはり紙媒体が信頼性が高いことを改めて知った。特に日本ではその傾向が顕著。コンテンツを集める上でも，紙媒体をまず立ち上げたかった」とし，コンテンツ収集には雑誌のような従来型メディアの力が優れていることを訴えた。新会社では，雑誌や書籍など紙媒体での展開に力を注いだ上で，そのコンテンツをノンPC向けに加工・配信し，相乗効果を上げていく構え。

新会社の位置付け

新会社社長に就任予定の安武氏

　新会社の役員には，ぴあ出身者が5人も名を連ねる。ぴあ元編集長で，新会社社長に就任予定の安武氏は「新会社が目指す媒体は，ぴあとは全く違うもの」と語る。週間単位で約2万件の情報を発信するぴあを「“デジタル”なメディア」とし，インターネットが情報メディアとして普及した現在では「ぴあのような雑誌媒体の役目は終わった」と安武氏は訴える。

　新媒体の編集方針は「自分の価値観に合ったものは何なのかを数多くのコンテンツから厳選し，提案していくのが新媒体の役割。食，旅，ギャンブル，癒し，住，など計8つのテーマをコンテンツの柱とし，季節感や生活のリズム感をベースに特集を展開し，編集を進めていく」という。

ACCESSが目指すコンテンツソリューション

　新媒体の取材では，写真や原稿という従来の素材だけでなく，動画や音声なども取材の際に併せて記録して，紙媒体以外のコンテンツへカスタマイズできるようにするという。これらのコンテンツの提供先としては，ノンPCキャリアやノンPCメーカー，ISP，Web制作会社，ブロードバンドサービス企業などが挙げられる。雑誌以外のメディア戦略としては，雑誌の連載を書籍として販売するほか，コンテンツ販売などで収益を上げる。

　新会社に出版社記号が付与され，出版社として認可されるのが7月中～下旬頃で，10月には新媒体を創刊する予定。月刊スタイルで配布エリアは，首都圏（1都6県）限定。27～32歳の独身男女をターゲットに展開するという。非常に狭い年代のターゲット設定だが「この世代が，雑誌とデジタルメディアとの使い分けを1番しっかり行っているという調査データに基づく」というのが理由。首都圏で150万人のターゲットユーザーを想定している。価格は「500円を超えると女性ユーザーから敬遠される」（同社）ことから，ワンコインマガジンを目指し，480円を予価としている。

　ACCESSは新会社設立にあたり，2002年1月期（2001年2月1日～2002年1月31日）の連結業績予想を下方修正した。これは，新会社設立に伴う営業準備費や広告宣伝費を支出予定として新たに加えたためで，これにより損失が2億6800万円増えて経常利益が10億3800万円の損失，当期純利益も10億1900万円のマイナスとなった。この点について荒川社長は「赤字が続いて，株価が下がっているのは正直申し訳ないと思っている。しかし，小さくまとまって利益を少し出すよりも，今後もシェアを伸ばし事業規模を拡大していき将来大きな利益を生む方向を投資家も望んでいる。一つ一つの事業に対し収益性をしっかり考え，来年には黒字を出せるようにしたい」と語る。

　新会社では，2002年度で単年度黒字，2003年度には累損一掃を目指す構え。

関連リンク
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[西坂真人， ITmedia]

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