News 2001年6月29日 08:37 PM 更新

“簡単・お得”な海外インターネット接続事情

【国内記事】 2001年6月29日 08:37 PM 更新

 東西NTTが,光ケーブルによるインターネット接続,Bフレッツの本サービスを開始する。いよいよFTTHが現実に向かって動き出したわけで,後になって,今年が,日本のインターネットインフラが大きく変わった年としてとらえられるのは間違いない。

 ちょうど,1985年に,電気通信事業法が改正され,民営会社としてNTTがスタートした時のようなイメージだ。20世紀中というのには間に合わなかったけれど,めでたい話ではある。集合住宅に住んでいるぼくには,このインフラを利用することが難しいというのが残念でならない。

 さらに残念なことに,この太い線を活かせるコンテンツもまだない。ただ,渋滞が日常茶飯事の首都高速道路や各自動車道を見ていると,なぜ,最初から,今の倍の車線を確保しておかなかったのかと思うのと同じで,現時点では用途が想像できないような太さの線ではあっても,将来的には,これでよかったんだということになるのだろう。

 インターネットというパブリックな経路を,10BASE-Tをはるかに超えるデータ転送速度で利用できる環境は,デバイスの使い方を大きく変えるだろう。もはや誰も,ダウンロードしたファイルやデータをローカルのハードディスクにおいておこうなどとは思わなくなる。ストリーミング系のコンテンツだって,まだまだ品質をよくすることができ,放送との区別がつかなくなる。もっとも,その時点では,ローカルエリアネットワークのバンド幅はギガビットが当たり前になるのだから,この先,何が,どんなふうに推移していくのかを想像するのは難しい。

 ここ数年で訪れた諸外国では,特に工夫をした装備を持っていかなくても,実に簡単にインターネットが利用できた。パソコンは普通のパソコンだし,ホテルさえ,それなりのところに泊まれば,普通のモジュラージャックが部屋に用意されていて,つなぐだけですぐにダイヤルはOKだ。パソコンに付属する電源アダプタも220ボルトまでの対応が普通なので,トランスの準備も必要ない。GRICのようなインターネットローミングサービスを利用できれば,本当にコストのことを考えずに,普段の生活と同等のインターネット接続環境が得られる。アメリカはもちろん,中国だろうと,ヨーロッパだろうと,どこでもこれは同じだった。

 でも,最近訪れたシンガポールの空港には,ちょっと驚いた。国際線の乗り換えターミナルの中央に,e-Hubというかなり大きなスペースが用意されていて,そこで自由にインターネットを利用できるようになっていたのだ。


シンガポールの空港に設置されているe-Hub

 しかも,ノートパソコンを持っているのなら,原則として利用料金はいらない。ぼくは,そんなスペースが利用できるとは知らなかったので,何の前準備もしていかなかったが,パスポートを預かるのと引き替えに,無料でイーサネットケーブルを借りることができた。このケーブルでパソコンとジャックをつなげば,DHCPでIPアドレスが割り与えられ,複雑な設定をしないでも,すぐにインターネットにつながった。いつから,こういうサービスが提供されていたのかは知らないし,利益構造がどのようになっているのかもわからないけれど,実に太っ腹な公共インフラだと思う。

 ドライバのインストールなどがめんどうだったのでチャレンジはしなかったが,IEEE802.11bの無線LANカードも無償で貸し出されていて,公共無線インターネット接続環境を自由に利用できるようになっていた。こういう場所は,今後どんどん増えていくのだろう。高額なビジネスクラスの搭乗者のみが利用できるラウンジでインターネット接続サービスが利用できるというのとは次元が違う。これからは,旅行のときには,カバンの中に無線LANのカードと,イーサネットケーブルを忍ばせておくことを忘れないようにしようと思う。


サンフランシスコの空港ラウンジにあるADSL高速インターネットサービスは,手続きが面倒なうえ高額だ

 先日の,サンフランシスコ出張では,帰国日当日,空港のラウンジでADSLによる高速インターネットサービスを利用したが,こちらは,最初にクレジットカードの番号と有効期限を打ち込まなければならず,しかも料金は1分25セントと,かなり高額なものだった。それに比べたら,シンガポールの空港は,天国ともいえる。これなら,アジア旅行の帰りに撮りためたデジカメ写真を,トランジットのついでにアップロードしておき,東京に戻ったその場でプリント写真を受け取るといったことも夢ではない。

 日本で充実している携帯電話やPHSによる高速インターネット接続は,いろんな意味で便利だけれど,便利さと同時に,高額というオマケがついてくる。FTTHのサービスも,ここ数年の間は,利用できる世帯が限られるということであれば,こうした公共施設に活かすような施策も考えてほしいものだ。

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[山田祥平, ITmedia]

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