News 2001年7月3日 11:27 PM 更新

プロのデジタルアニメ制作環境が,アマチュア向けに

アニメのプロたちの間で標準になっているデジタルアニメ制作ツールが,アマチュア向けに移植されることになった。アマチュアアニメ作家の表現力も,これでプロ並みに向上するかもしれない。

 プロ・ハイアマチュア向けアニメ制作支援ツール「RETAS! PRO」を販売するセルシスは7月3日,同製品のアマチュア版として機能を絞った「RETAS! LITE」を発表した。RETAS! LITEは,動画取り込み用のスキャニングソフト「TraceMan」,ペイントソフトの「PaintMan」,ならびに撮影台ソフトの「CoreRETAS」の3つのソフトで構成され,価格は5万8000円。発売日は8月10日。OSは,Windows 98SE/Me/2000,ならびにMac OS 8.0以降に対応する。

 現在制作されているTVアニメ番組のうち,約70%がデジタルツールで制作されている。RETAS! PROは,その90%シェアを占めるスタンダードツールだ。1996年に1億5000万円を投じてRETAS! PROを導入した東映アニメーションは,トレース・彩色・撮影の仕上げ工程に同システムを利用。TVアニメ1本当たり40万円,年間で1億円のコスト削減に成功したという。「大規模な投資が必要になるが,東映アニメーションの場合は導入後2年で初期投資を回収した」(セルシス)。

 RETAS! PROのライト版であるRETAS! LITEは,「アマチュア向けの簡易ツールではなく,プロが使っている本格的なアニメツールにどこまで近づけるかが課題だった」(セルシス)という。


回転やスケールなどのカメラワークのほか,RAMプレビュー機能,ディスクキャッシュを利用した高速書き出し機能などを備える

 RETAS! PROと同LITEの機能面での違いは,1)LITE版ではRETAS! PROを含むそのほかのソフトと画像データをやり取りすることができない,2)出力可能な画像サイズは640×480ピクセル以内,3)DDR(デジタル・ディスク・レコーダー)へのレコーディングができない,など。

 また,新製品発表会にゲストとして登場したオー・エル・エム・デジタルの水谷貴哉ディレクターは,「アニメ業界にはなかなか優秀な人材が入ってこない。ソフト1本あればなんとか作品を作れる3Dに流れてしまうためだ。RETAS! LITEによって,2Dアニメーションの裾野が広がればいいと思う」と話した。オー・エル・エム・デジタルは,劇場版ポケットモンスター「セレビィ〜時を超えた遭遇(であい)〜」のデジタルアニメーション部分を制作した。

同人作家市場のデジタル化

 またセルシスは同時に,ネーム作成から下書き,ペン入れ,仕上げ,文字入れ,印刷までの全工程を行えるマンガ制作ソフト「ComicStudio」も発表した。価格は3万4800円。こちらも8月10日より販売を開始する。対応OSは,Windows 98SE/Me/2000。入力には,ワコム製のタブレット(FAVO/Intuosシリーズ)が必要になる。

 ComicStudioは,タブレットからの入力データをリアルタイムでベクトルデータ化できるのが特徴。セルシスによれば,データをベクトル化することで,マンガ特有の「アミ点表現」のモアレやつぶれが最小限に抑えられ,縮小・拡大したりアミ点の線数や濃度を容易に変更することが可能だという。


ComicStudioでは,Gペン,丸ペン,カブラペン,スクールペンの“特徴を持つ”ペンを用意する

 セルシスではComicStudioによって,同人作家市場のデジタル化を促進したい考え。「一部の同人誌作家はデジタル化に嫌悪感を示すが,同人誌即売会のコミックマーケットは1年間に約1000回開催されるほどの人気。同人作家人口は35万人ともいわれ,市場としては有望だ」(セルシス)。

 またセルシスは,ComicStudioで制作された同人作家の作品を掲載するコミュニティサイト「comicstudio.net」をソフトの発売にあわせて開設する計画。作品登録や配信は無料で行えるという。

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▼ セルシス

[中村琢磨, ITmedia]

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