News 2001年7月9日 10:28 PM 更新

NECの新PDAが示すものは?(2)

 これまで,個人が情報を管理するツール(PDA=Personal Digital Assistant)として普及してきた携帯情報端末だが,移動体通信網などの普及・高速化によって,企業の情報化システムのなかの「モバイルクライアント」という位置付けが,現実味を帯びてきた。こういった業務系の移動体端末は従来,市販端末とは別のカスタムメイド製品が多かったが,少なくともホワイトカラー用の移動体端末については,市販端末を利用する方がリーズナブルになってきたのである。

 1台数万円で,百数十万台といわれる個人用のPDA市場は,国内大手の電機メーカーにとってはニッチ商品でしかない。それゆえ,大手電機メーカーはこうした製品にさほど関心を示してこなかった。

 ところが,システムソリューション用のクライアントという位置付けになると,こうした製品の売れる売れないより,そうした品揃えが「ない」ことの方が問題になってくる。NECサイドでも「これまでソリューション部門では,パーム型の携帯情報端末は他社製品を使ってきた。だが,(ミドルウェアまでを含めて)自社でやりたいという要望があり,今回の製品はそれへの対応を図ったものだ」と説明している。

 これはまた,詳細な仕様がまだ詰まっていない段階で,同社が公表に踏み切った理由かもしれない。同社自身ではそういった意図を否定し,「富田(克一執行役員常務)から,こういった途中経過の製品も公表していこうという話があったからで,格別の思惑はない」(同社幹部)と述べていたが,国内の大手電機メーカーが夏から秋にかけて携帯情報端末を相次いで発表すると噂されているからだ。同社とすれば,ソリューション営業の面から見て,怠りなくそうした製品を用意していることを世間に知らしめる必要があった。

CEベースに動く国内メーカー

 元々,PDAでは本命は以前からエンタープライズと言われてきた。たとえば,IBMもPalmOS端末で,当初から個人市場より法人市場にウェイトを置いてきている。ただ,こうした個人から法人,パーソナルからビジネスという変化が本格化すれば,それは携帯情報端末の地図も塗り替えずにはおかないだろう。

 実際,パーム型の携帯情報端末について,PalmOSかWindowsCEベースかで静観を決め込んできた国内の大手電機メーカーが,最近,水面下で一斉にCEベースに動き始めた。その理由は,この日のNEC幹部の発言に端的に現れている。

 「CEベースにしたのは,PCとの親和性が高く,ソリューション構築のための開発環境が整っているから。マルチメディアなどのメディア利用もしやすい」(同社幹部)。

 別の幹部は,これを別の形で,こう表現した。

 「我々が目指しているのは,企業向けのソリューションビジネス向けの端末。Palmでそれができますか? 日本アイ・ビー・エムが長年,PalmOSでやってきているのに,浸透していないことに,その答があるんじゃないでしょうか」(同社幹部)。

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[中川純一, ITmedia]