News 2001年7月11日 10:53 PM 更新

ハンドスプリング,Visorの“出血大サービス”

ハンドスプリングがVisorをまたまた値下げした。利益を削りながらも,値下げを率先して断行するハンドスプリングの思惑とは?

 スーパーのセールだったら,“出血大サービス”といったところだろうか。PDAの値下げ競争は昨日今日始まったものではないが,ハンドスプリングが7月10日に実施したPalm OS搭載PDA「Visor」の価格改定は,値下げ幅が全機種5000円〜7000円という大規模なものだ。

 ハンドスプリングは6月1日にも,「Visor Prism」と「Visor Platium」の価格を引き下げたばかり。今回の値下げによってVisor Prismは3万9800円(旧価格:4万4800円),Visor Platiumは2万4800円(旧価格:2万9800円)にまで値を下げた。また,「Visor Edge」は3万7800円(旧価格:4万4800円),エントリーモデルの「Visor Deluxe」はついに2万円を切って1万9800円(旧価格:2万4800円)になっている。

 PDAは供給過多――。ハンドスプリングが国内市場に参入した当初,PDAには供給不足といわれるほどの追い風が吹いていた。だが,この1年で状況は一転。ハンドスプリングでマーケティングを担当する藤嶋眞知子氏は,現在の状況を「期待したような需要の伸びが見られない」と打ち明ける。

 というのも,「製品名がユーザーにだいたい浸透した」(藤嶋氏)にも関わらず,同社にとって課題といえる買い換え需要の際の同社製品への乗り換えや,新規ユーザーの獲得が,必ずしも順調に進んでいないからだ。「国内のPDA市場では競争が非常に激しくなってきている。パームコンピューティングやソニーは,新製品投入もあって,早いタイミングで(旧モデルの)価格を下げてきた」(同氏)。

 しかも,この“競争の激化”はPalm市場に限った話ではない。NECなどの国内大手電機メーカー各社がWindows CEなどでPalmサイズのPDAを年内投入する上,カシオ計算機が今秋,Windows CEベースのPDAで,Palm OS搭載機とPocket PCの中間ラインの価格帯を狙ってくると見られているからだ(7月9日の記事参照)。こうした企業の製品投入によって,Palmを含めたPDA市場のシェア争いが,一段と激しさを増すのは間違いない。

 そうした中,Visorの優位性や特徴を打ち出せる一つの要素が「価格」であることは確かだ。藤嶋氏も,「Visorが大きなシェアを持つようになった要因の1つは,価格優位性をアピールできたからだ」と考える。

 ハンドスプリングにとって,利益を削る価格の引き下げは,好んでやる戦略ではない。しかし,「消費者ニーズに答えるためには,価格を下げざるをえない」(藤嶋氏)のも確か。厳しいPDAの「秋の陣」に向け,先手を打って,Palmや国内各社を迎え撃とうという狙いが,同社が1カ月余りで再値下げを断行した裏には秘められているのである。

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[中村琢磨, ITmedia]

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