News 2001年7月12日 07:34 PM 更新

今度はBBSドラマ──ナローバンドなTBSのネットドラマ戦略

BBSでドラマ。ネットドラマの「ケイゾク/GAME」を仕掛けたTBSが,今度はBBSを中心にストーリーが進むという画期的(?)な新ネットドラマをスタートする。

 TBSがBBSドラマ。語呂がいいではないか。もちろん,夏の新作テレビドラマではない。東京放送(TBS)が,ネット上の掲示板(BBS)を利用した参加型のインターネットドラマをスタートさせるのである。

 ドラマの名は「マヨイガ」(迷い家)。ストーリーは,古い言い伝えに興味を持つ4人の大学生が,遠野地方で“異界”の入り口を探し求めるというものだ。“参加型”というのは,登場人物の4人がBBSに書き込む内容をヒントに,ユーザー側が検索エンジンを使って謎を解くカギになる“隠れサイト”を見つけ出し,ドラマを進めていく仕掛けになっているため。検索エンジンは,infoseekと独占的に協力し,ほかの検索エンジンで探しても見つからないようにするなど,ストーリーを盛り上げるための工夫が施されている。

 さらに,参加者のモチベーションを高めるため,情報交換を行える専用BBSも設ける予定だ(参加者BBSの書き込み内容が,ドラマの内容に影響を及ぼすこともあるという!)。ただ残念ながら,BBSがメインの構成なので,実写のお約束の“お姉ちゃん”系のキャラクターは登場しないとか。

 同ドラマ企画の制作を担当したTBS事業局メディア事業センターの田中康之氏によれば,「はまればはまるほど,怪異を“疑似体験”できる」かもしれないという。田中氏は,当時としては目新しかったインターネットドラマ「ケイゾク/GAME」(2000年3月〜6月)を手がけた人物。検索エンジンを駆使してドラマの謎を解いていくという手法は,このとき開発されたものだ。

目指せブレアウィッチ!

 ビジネス的な側面からみると,ケイゾク/GAMEとの大きな違いは,利用料を無料にしたことだ。田中氏によれば,利用料金(300円)に加え,ドラマのあちこちに“お金を落とさせる”仕掛けが埋め込まれていたケイゾク/GAMEだが,3カ月間の運用で収入はわずか約320万円だった。

 「しかも,利用者のうち,積極的に課金コンテンツを利用したのはわずか5%。目標は20%だった」(田中氏)。つまり,収入のほとんどが参加費だったわけだ。

 今回,その参加費を無料にしたのは,「通常のテレビドラマと同様にタイアップ式のビジネスモデルに可能性を見た」(田中氏)からだ。ケイゾク/GAMEでは,“柿の種”を1つの重要なキーワードにしたところ,亀田製菓のホームページのアクセス数が異常に跳ね上がった。そこで,マヨイガではこうしたタイアップ企業を集め,広告収入を増加させようという狙いだ。広告で稼ぐとなると,より多くのユーザーが必要になる。だから,思い切って参加費を無料にしたのだ。

なぜBBSドラマ?

 ところで,ブロードバンド真っ盛りのこのご時世。なぜ今,BBSドラマなのだろうか。表向きには,「ストリーミングで流すだけがドラマではない」「今この時点では,まだまだナローバンドユーザーが多い」と答えた田中氏。実は,多くの予算がつかないというコスト的な問題もあった。「ケイゾク/GAMEは制作費が約1000万円だったが,マヨイガはさらに抑えられるだろう」(同氏)

 ネットドラマというジャンルを,儲けるビジネスにするのはなかなか前途多難のようだが,田中氏は「ネットドラマだけで爆発的な売上を上げようとは思っていない。ネット上でこのドラマがブレイクすれば,テレビドラマ化や映画化も可能になる」(同氏)。目指すは「ブレアウィッチプロジェクト」ということかもしれない。

 なお,マヨイガは8月27日よりスタート。URLは,http://www.mayoiga.com/。

[中村琢磨, ITmedia]

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.