News 2001年7月16日 11:55 PM 更新

ビデオの垂れ流しはNG──次世代携帯向けビジュアルコンテンツの本命は?

次世代携帯で期待の高い動画配信だが,問題はその内容。専門家によれば,少なくとも今主流の「ビデオ・オンデマンド」はNGのようだ。では,一体何が本命というのだろうか。

 「コンテンツの見せ方に必ずしも精通していない」。携帯端末向けのMPEG-4コンテンツ配信プラットフォームを提供するパケットビデオ・ジャパンのAlesia Gainer氏は,国内コンテンツプロバイダーの取り組みをこう評した。

 NTTドコモの動画受信端末「eggy」や,コンパック・コンピュータのPocket PC端末「iPAQ」,カシオ計算機の「カシオペア E-750」など,PHSの64Kbps通信を利用して,ビジュアル系コンテンツを楽しめる端末はいろいろある(iPAQとE-750は,パケットビデオのMPEG-4デコーダソフト「PVPlayer 2.0日本語版」を搭載する)。だが,問題は,“動画が楽しめる”かどうかではなく,その“コンテンツが楽しいか”どうかであるということは,言うまでもない。

 冒頭のGainer氏の言葉は,そのことを意味するものだ。Gainer氏は,「携帯電話先進国だけあって,日本のコンテンツプロバイダーは,携帯電話や携帯端末向けのストリーミング配信に深い興味を持っている」としながらも,「現状では,単なるビデオ・オンデマンド形式のコンテンツが多く,ビジネスとして立ち上がるか疑問」(同氏)と指摘する。

 実際,Gainer氏の言う通り,NTTドコモがeggyで提供している「M-stage Visual」は,コンテンツのほとんどがビデオオンデマンド形式のもので,あるeggyユーザーは「面白いのは,ビデオメールだけ。M-stage Visualはほとんど利用していない」と漏らす。

“金のなる木”を育てるには

 米PacketVideoのアプリケーション&サービス部門プレジデントであるRobert Tercek氏は,ワイヤレス端末向けの次世代アプリケーションのイメージ像について,フィンランドの大手通信事業者であるSoneraが行ったある調査を紹介する。

 携帯電話や携帯端末で利用したい次世代型アプリケーションについて質問したところ,最も多かったのがカメラを利用したリアルタイム映像系のアプリケーション(外出先から家の様子をチェックできるサービスや,個人放送局,ならびに映像付きの渋滞情報など)。そして,ビデオメールやビデオクリップ付きの掲示板サービスなどと続いた。なお,この調査は,MPEG-4コンテンツに特化したアンケートのため,国内で同様の調査を行った際に上位にランクインした「位置情報サービス」などは含まれていない。

 「通信事業者は,ネットワークアップグレード費用に膨大な資金を投じている。そのため,投資家に対して次世代型アプリケーションは,加入者あたりの収入を増加させ,解約率の低下を実現する“金のなる木”であることを証明しなければならない」(Tercek氏)

 “金のなる木”を育てるために,PacketVideoは,日本や米国,韓国,欧州諸国など25カ国でコンテンツプロバイダーや通信事業者と組んで携帯電話/携帯端末向けの次世代アプリケーションのトライアルを実施。利用動向などの実験結果をもとに,新サービス・コンテンツ開発に関するコンサルティングサービスを行っている。

 さらにPacketVideoは,コンテンツの開発から運用までの期間短縮を目的として,開発ツールキットや技術サポート,ならびに実際のワイヤレス環境でのアプリケーションテストまでをパッケージ化したコンテンツプロバイダー支援プログラム「グローバル・デベロッパー・ネットワーク」を世界各国でスタートさせる予定だ。

“金のなる木”はどこにある……?

 それでは,ワイヤレス端末向けのビジュアル系アプリケーションとしては,どのようなものが“当たり”なのだろうか。

 意外にもTercek氏の答えは,「明確にはわれわれにも分からない」というものだった。「もちろん,次世代アプリケーションについて調査は行っているが,確信を持って話せるものではない」(同氏)

 コンテンツプロバイダーがこの言葉を聞いたら憤慨ものかもしれないが,Tercek氏が予測すら話そうとしないのは,「NTTドコモですら,iモードでこれほどエンタテインメント関連のコンテンツが爆発的に成長するとは考えていなかった。新しい分野での未来の予測は非常に難しい」ためだと説明する。

 乱暴な言い方をすれば,「何が当たるかはやってみなければ分からない」ということのようだが,Tercek氏も「ビデオ・オンデマンドだけでは厳しいだろう」と念を押す。どうやらPacketVideoでは,ビデオ・オンデマンドは“NGワード”扱いになっているらしい。

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[中村琢磨, ITmedia]

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