News 2001年7月18日 10:21 PM 更新

情報冷蔵庫からモバイルリモコンまで――松下が描く近未来の家電

松下電器が研究を進めている「暮らしのソリューション」には,スキャナーや液晶ディスプレイを装備した冷蔵庫や“癒し”を与えるペットロボットなど,ユニークなものが目白押しだった。

 ピラミッド状のデザインが特徴的な品川にある松下電器産業のマルチメディアセンターで,システムソリューション内覧会が行われた。

 今年4月に新設されたシステムソリューション事業本部が,新規ソリューション事業の創造に向け「ソリューション商材100選プロジェクト」を発足している。中期経営計画「創生21計画」において,2003年度までに100の新規ソリューション商材を創出し,1000億円の売り上げを新規事業で創造しようというものだが,今回の内覧会では,商材100選として開発が進んでいる,さまざまなソリューションが紹介された。我々の生活に密着している「暮らし環境ソリューション」の中から,面白そうなものをピックアップしてみた。

情報冷蔵庫

 冷蔵庫は,家庭の“連絡帳”や“掲示板”という一面がある。安売りのチラシやゴミの回収日を知らせる紙,料理のレシピが掲載された雑誌の切れ端,バーゲンセールの案内ハガキなど“家庭の情報”をマグネットでペタペタと貼り付けている家は多いだろう。冷蔵庫は食品を保冷するだけでなく,家庭のメッセージボードの役目も担っているのだ。

 「情報冷蔵庫」は,ペタペタと貼っていた紙情報をスキャナーで読み込み,扉に装備している液晶ディスプレイで表示させようというもの。ディスプレイの上部にあるのが,スキャナーだ。ここから紙を吸い込み,画像を取り込んで蓄積し,ディスプレイで閲覧する。


液晶ディスプレイが装備された情報冷蔵庫。液晶上部にあるスキャナーから紙情報を取り込む

 液晶ディスプレイでは冷蔵庫内の食品が一覧できたり,家族のスケジュール表や料理のレシピ情報などを表示できる。冷蔵庫が,生活に関する情報を集めた「くらしメモデータベース」になるわけだ。「冷蔵庫の扉にスキャナーなんて,紙がつまったらどうするのか」とか気になるが,そんなことは考えてはいけないのだそうだ。「あくまでも,家庭内情報化を図るために家電はどうあるべきかを見出すための試行錯誤の形。このままの商品化は考えていない」と担当者。

ペットロボット

 松下電器が提案するペットロボットは,AIBOのようなメカニカルなものでなく,ヌイグルミの外見が特徴だ。

 独居老人の増加に伴って,孤独死などの問題が増加している。しかし,高齢者の誰もが使えるインタフェースを持った情報機器はなかなか登場せず,ましてや精神面を支えるような情報機器などない。ペットロボットは,このような高齢者の安否確認や双方向の情報交換を行うとともに,対話機能を持ったペットロボットが独居高齢者の話し相手となることで精神的な「癒し」を図ることを目的としている。

 インプットされているキーワードに反応して,簡単な会話ができる。例えば「おはよう」と呼び掛ければ「調子はどう? 何かあったらセンターに連絡するよ」と答えたり,「歌って」と呼び掛ければ,登録された童謡の中からランダムに歌ってくれる。


ぬいぐるみのペットロボットが,高齢者の話し相手となる

 ペットロボット自体は1999年に開発されたものだが,年々改良を加えている。大阪府池田市では,2000年4月から5カ年計画で実証実験が行われている。今年2月に導入された新作の2台は,より身近に感じられるように首と手足が動くようになった。背中のリュックサックにはノートPCを小型化したものが入っており,無線ネットワークで福祉支援センターと接続されている。「実証実験が終わって返却するときに,ペットロボットとの別れを悲しむ人が多い」(担当者)というのも,ペットロボットが精神的癒しを与えているという証拠かもしれない。

モバイルリモコン

 携帯電話とリモコンを融合させて,家庭ではAV機器のリモコン,外では携帯電話として利用できるモバイルリモコン。携帯電話にリモコン機能が搭載されることで,各個人が自分専用のリモコンを持つことになるため,AV機器を制御するときの個人認証がスムーズにできる点が特徴だ。パーソナリティに合わせた番組表が作れたり,子供には見せたくないような内容の番組に視聴制御をかけ,子供のリモコンでは見ることができなくしたりもできるという。携帯電話の通信網を使ってAV機器の制御もできるため,外出先からTVの予約も可能だ。


実験用のモバイルリモコン。携帯電話には程遠い大きさだ

 実験用のリモコンは,業務用の携帯POS端末のようで,まだ携帯電話サイズには程遠い大きさだ。しかし,キー配置などは携帯電話スタイルとなっている。よく見ると,Palm互換機のバイザーを流用して開発を行っていた。「初期の実験段階なので,開発費が少ないため」とは,担当者の弁。

ECHONET

 HAS(Homegateway Application Server)システムの中で紹介されていたECHONETは,家電を接続するネットワークの規格名で,機器間の接続には電灯線を利用する。対応家電や各機器を集中制御するコントローラは,電源プラグをコンセントに差し込めば,プラグ&プレイでネットワークに接続される。コントローラのOSは,Linuxを使っていた。


ECHONETのコントローラ。コンセントに差し込むだけで家電を制御できる

 ECHONETに対応した家電製品を制御できるほか,コンセント側に制御ボックスを付加することで,未対応製品でも電源のON/OFFが制御できるようになる。家庭には必ずあるインフラを利用するため,面倒なケーブル配線工事やネットワークに関する知識なしに家庭内ネットワークを構築できる。2002年に実証実験を始め,2002年度中には商品化する予定。

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[西坂真人, ITmedia]

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