News | 2001年7月19日 10:49 PM 更新 |
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PINOの歩行シーンを撮影したのは,東京・六本木にあるロボットベンチャー企業「ZMP」のオフィス兼開発所。先日の記事でも触れたが,ZMPはPINOの生みの親である北野宏明博士率いる「北野共生システムプロジェクト」から技術移転を受け,PINOのビジネス展開を図っている(6月29日の記事参照)。PINOはもちろんだが,この“ロボットベンチャー”という聞きなれない──しかし,どこか懐かしい(?)――響きに強く惹かれ,同社の谷口恒社長にZMPの設立経緯とPINOビジネスについて話を聞くことになった。
本題に入る前に,映像を見た方に断っておくが,宇多田ヒカルのプロモーションビデオに出てくるPINOは,一部にダミー人形を使用している。現状では,まだあそこまでナチュラルに動くことはできないからだ。それに,自動車の運転席に本物のPINOを座らせたら,小さすぎて埋もれてしまうことは,想像に難くないだろう。
ZDNN:なんか秘密アジトみたいなオフィスですね。中もアットホームな感じですし。まさかここでロボットが作られているとは。
――ロボットベンチャーということで,勝手に近未来的なオフィスを想像していたのだが,実際には歩いても見落としそうなくらいだ。看板に「PINO」の写真が飾られているのが唯一の目印になる。谷口:まあ,PINOを組み立てるのにそんな大げさな設備は必要ありませんからね。社員もまだ5名ばかりですし。
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PINOの歩行テストシーン。ノートPCからその横に置いてあるシステムにコマンドを送信している |
ZDNN:「ロボットベンチャー」とは刺激的なネーミングですが,なぜ,ロボットビジネスを?
――個人的には,おもいっきりガンダム世代である。ロボットの会社と言うと,まっさきに例の「アナハイムエレクトロニクス」を思い浮かべてしまう悪い癖がある。谷口:ZMPを立ち上げるまでは,ネットのコンテンツ系ベンチャー企業をやってました。でも,結局メインストリームなのは米国からビジネスモデルを持ってくるだけで,オリジナリティはないんですよね。でも,ロボットは日本が一番進んでいると思う。可能性はいくらでも広がっているじゃないですか。
ZDNN:コンテンツベンチャーからロボットベンチャーとは,もの凄い飛躍ですね(笑)
谷口:もちろん,いきなり思いついたわけではないんですよ(笑)
ZDNN:というと?
谷口:ご存知のように,PINOは北野共生システムプロジェクトから生まれたものです。そのプロジェクトに参事として加わっている石黒周さんという方と,もともとつきあいがあったんですよ。それで,原宿の(北野博士の)研究所にもちょくちょく顔を出していたりして。
ZDNN:それで,「ロボットベンチャーをやろう!」と意気投合したというわけですか?
谷口:いやいや,そんな単純じゃありません(苦笑) 確かに,北野共生システムプロジェクトのほうで,PINOを民間の会社に技術移転しようという動きはありましたが。
――北野共生システムプロジェクトは,国の機関である科学技術振興事業団(JST)の創造科学推進事業(ERATO)で推進される1つのプロジェクトである。プロジェクト期間は1998年〜2003年の5年間。谷口:技術移転をしようというのは,2003年の研究期間終了までに「市場ニーズにあったロボットを創ろう」という北野博士の意思です。PINOをオープンプラットフォームとして研究機関や大学の研究所に販売・レンタルし,そのフィードバックをもとにPINOの研究を加速しようという構想です。
ZDNN:なるほど。それでベンチャー企業経営者で研究室にも出入りしていた谷口さんに白羽の矢が立てられたと。
谷口:白羽の矢は正しい表現か分かりませんが,とにかく,プロジェクトから民間企業を作り技術移転をするという前例がなかったので,まずJSTを説得しなければならなかった。
ZDNN:それがかなりハードな作業だった?
谷口:いや(笑)JSTのほうも理解があってわりとすんなり認められましたよ。というのも,ZMPを設立する前に,宇多田サイドから「CAN YOU KEEP A SECRET?」のプロモーションビデオにPINOを使いたいという要請があって。
――そういえば,PINOは宇多田ヒカルの大のお気に入りで,プロモーションビデオでの起用も本人の強い希望だったと聞いたことがある。谷口:ところが,JSTではそういった交渉ができない。窓口がなかったんですよ。それで,その混乱に乗じてZMPの設立を認めさせてしまったわけです。「これはチャンスですよ」とか口説いて(笑)。実際,チャンスだと思いましたよ。それにしても,かなりドタバタしてましたね。