News 2001年8月3日 11:59 AM 更新

「ADVICE」はPentium 4普及の起爆剤になり得るか?(1)

メインストリームへと躍り出るPentium 4。「スペック的にはもう十分」と囁かれるなか,インテルでは「ADVICE」と呼ばれるカテゴリーにおいて,Pentium 4の市場が作り出されると考えている。ADVICEとは一体?

 少なからず景気の悪い話ばかりが先行している昨今のPC業界。不景気な話が聞こえてくるのは,プロセッサ業界の巨人インテルも同じだ。しかしインテルは,0.13μmプロセスで製造される新Pentium 4とSDRAMをサポートする「Intel 845」チップセットで,今年後半にPentium 4をメインストリームマーケットに“押し下げ”ようとしている。

 これに伴い,インテルはPentium IIIをフェードアウトさせる。モバイル向けには,512Kバイトの2次キャッシュメモリを搭載したモバイルPentium III-Mをリリースしたインテルだが,デスクトップ向けには256Kバイト2次キャッシュ版しか投入しない見込みだ。

 しかし,「スペック的にはPentium IIIで十分」という見方をする消費者が多いのも事実。今後,Celeronの高速化も考えると「なぜPentium 4なのか」という問いに対して,インテルはどのような答を用意するのだろうか?

 エンドユーザー向けソリューション開発を担当するインテル副社長のDan Russell氏は,Pentium 4がパフォーマンスを発揮する5分野の頭文字を取った「ADVICE」がPentium 4の市場を作り出すと考えているようだ。

長年提案してきた分野が今度こそ使われる?

 Russell氏が言うADVICEとは,「Audio」「Digital Video」「Imaging」「Communications」「Entertainment」の5分野である。インテルは昨今,デジタルメディアや家電をPCで結合することで,新しい使い方を生み出そうという「Extended PC」というコンセプトを掲げているが,ADVICEはExtended PCによって利用形態の統合が想定されている分野である。

 しかしながら,この5つの分野は特に目新しいものではない。振り返れば,MMX Pentium時代からPentium II,Pentium IIIと移り変わる中で提案されてきたものに他ならない。さらには,これらのうちキラーアプリケーションとなっているのは,Communicationsだけであり,ブロードバンド時代になった現在でも,Pentium IIIのCommunications分野での性能不足を嘆くユーザーはごく少数だ。

 もちろん,「メディア処理の高速化をねらって開発したPentium 4は,Pentium II/266MHzの7〜8倍のパフォーマンス(1.8GHz版の場合)」とRussell氏が話すように,Pentium 4向けに開発されたアプリケーションであれば,ADVICEの各分野で非常に高いパフォーマンスを発揮することは間違いない。

 「XMLやJavaによる分散コンピューティング環境が整いつつあることも,クライアントPCのパフォーマンスの重要性を高めている」というRussell氏の主張も的を得ている。

 それでもなお,今ひとつピンとこないのは,すでに“必需品”レベルでは高い満足度を得てしまっているからかもしれない。以前は,ほとんどのユーザーが利用するアプリケーションの実行速度に不満を感じていたものだ。しかし,現在は必需品への欲求はある程度満たされ,ユーザーの趣味趣向によって重要度が大きく変化する各種ニッチに向けたアプリケーションのパフォーマンスへの渇望しか残っていない。

 これでは,限られた予算の中でPCを購入するコンシューマに対して,Pentium 4を買うことが“幸せへの近道”だと説得することはできないのではないのだろうか。

 ではどこに答えがあるのか? Russell氏は頻繁に「ユーゼージモデル」──つまり利用形態という言葉を繰り返し使っていた。Extended PCが目指すのは,従来インテルが行ってきたエンドユーザーに対してリッチで魅力的なアプリケーションを提示することではなく,ユーザーの利用形態の中にうまくPCを融合させることだと言える。

 こうした考え方は,徐々に周辺機器ベンダーやPCベンダーにも浸透しはじめているとは思うが,その真価が問われるのは新Pentium 4とWindows XPの両方が登場する今年の年末商戦になるだろう。

 長年提案してきながらも,なかなか主流とはなり得なかったADVICEが,今度こそは新プロセッサ普及へのトリガーになれるのだろうか?

Pentium 4の魅力を引き出すSSE2対応ソフト

 ただ,コンセプトだけで製品はできあがらない。ハードウェアはもちろん,ソフトウェアが伴ってこそ,エンドユーザーが体験できる製品になる。そこでPentium 4の魅力を引き出すため,Pentium 4に最適化されたソフトウェアの充実が重要になってくる。

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