News 2001年8月23日 11:58 PM 更新

“価格”と“互換性”で勝負──リコーからDVD+RWが満を持して登場

いよいよ,DVD+RW対応製品が登場する。乱立する追記型DVDフォーマットだが,DVD+RWの登場で収束に向かうのか,それともさらなる競争を招くのか?

 4.7Gバイトの記録容量を持つ追記型DVD規格。満を持して,DVD+RWドライブが登場する。リコーは8月23日,国内初のDVD+RW製品として,ATAPI対応の内蔵型ドライブ「MP5120A」を発表した。価格はオープンプライスだが,店頭価格は6万円前後になる見込みだ。


国内初のDVD+RWドライブ「MP5120A」。追記型DVD対応製品の本命となるか?

 追記型DVD規格には,DVD+RWのほか,既に製品化されているDVD-RW,ならびにDVD-RAMがある。DVD+RWは,記録層などの物理的な構造をDVD-ROM互換とし,作成したメディアが「既存のDVD-VideoプレーヤーやDVD-ROMドライブの約7割で再生可能」(リコー)と互換性の高いことが特徴だ。初期型のDVD-Video/ROM製品では,反射率の問題で再生できない場合もあるが,リコーでは「対応プレーヤーの情報は,随時Webサイトで公開していく」(同)としている。

 ただ,MP5120Aでは当初,DVD-Videoフォーマットでの追記・編集は行えない。もちろん,書き込みは可能なのだが,同梱のDVD-Videoオーサリングソフト「MyDVD」(ソニック・ソルーションズ製)が,DVD-RW/RAMでいうところの「DVDビデオレコーディング規格」に相当する「DVD+RW video recording format」をサポートしていないためだ。なお,DVD+RW video recording formatは既に規格が策定されており,MyDVDも対応する予定だが,「時期は未定」(リコー)だ。

 なおリコーでは,4.7Gバイトの容量を持つDVD+RWメディアとして,「データ用」「ビデオ用」の2種類もあわせて発売する。価格はオープンプライスだが,実売価格はデータ用が1500円,ビデオ用には私的録画補償金が含まれ,2000円弱になる見込み。

コンボドライブを超える“スーパーコンボドライブ”

 MP5120Aは,1つのピックアップにCD用とDVD用の2つのレーザーダイオードを搭載し,DVD+RWのほか,CD-R/CD-RWの書き込みが可能。「DVD-ROM/CD-RWコンボドライブの発展形という位置付け」(リコー)だ。そのため同社では,MP5120Aのことを“スーパーコンボドライブ”と呼ぶ。

 書き込み速度は,DVD+RWが最大2.4倍速(CD換算で約20倍速),CD-RWが10倍速(High Speed CD-RWメディア使用時),CD-Rが12倍速となる。

 ランダムアクセスに必要なフォーマットでは,とりあえず書き込みに必要な部分のみを先にフォーマット,残りは書き込み/読み出しをしていない時にドライブが自動的に行う「バックグラウンドフォーマット」機能をサポート。これにより約1分で書き込みが開始できる。このほか,AV機器から直接動画を取り込んでDVD-Videoを作成できる「Direct-to-DVD」機能や,CD-R/RW部ではバッファアンダーエラーを自動的に回避する「JustLink」機能も備えている。

「今がベストのタイミング」

 DVD+RWの規格が策定されてから,約4年。リコー,ヤマハ,米Hewlett-Packard(HP),三菱化成,蘭PHILIPS,仏Thomson Multimedia,ソニーの7社が中心となって推進するDVD+RWは,ようやく製品化にこぎつけた……といっては語弊があるようだ。

 「4年も経過したことで,DVD+RWは製品化が遅れていると指摘されることもある。だが,それは正しくない」(リコー)。同社によれば,DVD+RWの技術的な検証は既に昨年の時点で完了していたが,「製品を投入するタイミングを見極めていた」(同)。

 PCのDVD-ROMドライブや,民生用DVDプレーヤーでメディアを再生できるのが,DVD+RWの強み。しかし,利用するプラットフォームが貧弱では,その特徴も活かされない。「プレイステーション2はもちろん,PCにもDVD-ROMドライブ搭載機が増えてきた。さらに, 動画編集など,4.7Gバイトという容量を必要とする用途も広まってきた(同社)。いまこそ絶好のタイミングだ。

 「追記型DVD製品は,高価なこともあって一部のハイエンドユーザーのものだった。それと比べると,MP5120Aは,手が出しやすい価格になる。この年末商戦には,DVD+RWドライブ搭載機が注目を集めるはず」(リコー)。同社ではOEMを含めて月産10万台を生産していく計画だ。

 なお,MP5120Aの主な仕様は以下の通り。

モデル MP5120A
形式 内蔵型
インタフェース ATAPI
データバッファメモリ 2Mバイト
書き込み方式 DVD+RW,CD-R/RW
書き込みフォーマット DVD-ROM,DVD-Video,CD-DA,CD-ROMなど
書き込み/読み出し速度 DVD記録:2.4倍,DVD再生:最大8倍速,CD記録:10倍速(CD-RW,High Speed CD-RWメディアのみ)/12倍速(CD-R),CD再生:最大32倍速
平均アクセスタイム DVD:140ミリ秒,CD:120ミリ秒
ローディング方式 トレーローディング
消費電力 16ワット
質量 1.2キロ以下
サイズ 146(幅)×196.5(奥行き)×41.3(高さ)ミリ
添付ソフト DVD-Videoオーサリングソフト「MyDVD」,ビデオ編集ソフト「MotionDV STUDIO」,DVD/CDライティングソフト「B's Recorder GOLD」,DVD/CDパケットライティングソフト「B's CLIP」
対応OS Windows 95(OSR2.0以降)/98/Me/NT 4.0/2000(MyDVDは95/NT4.0では動作しない)

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[中村琢磨, ITmedia]

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