News | 2001年8月27日 11:59 PM 更新 |
「個人情報を守ってくれるならいいんじゃないかと思っているあなたにこそ,この集会に参加していただきたい」。9月2日に日比谷野音で開催される「個人情報保護法案をぶっ飛ばせ! 2001人集会」(午後2時から午後8時30分まで。参加費は900円)への参加を呼びかけるチラシには,こう書かれている。
集会出席者には,評論家の佐高信氏,東京都立大学助教授の宮台真司氏,長野県知事の田中康夫氏,参議院議員の大橋巨泉氏,などの著名人が多数名を連ね,2ちゃんねるのひろゆき氏も,「きれいなメディア,きたないメディア」というパネルディスカッションに登場する予定だ。
さらに,「ニュース23」司会者の筑紫哲也氏や,「報道特集」の鳥越俊太郎氏が,音楽プロデューサーである藤原ヒロシ氏の演出で音声参加する。これには,「歌え叫べ踊れ」というテーマが付けられている。
日比谷公園で,一体,何が起ころうとしているのか。
8月27日,集会実行委員会が記者会見を開催。その中で,進行役を務めたノンフィクション作家の吉岡忍氏は,「情報があっという間に世界中に伝わるインターネット時代,個人の情報を保護する仕組みは必要なことには違いない。だが,この法案には雑誌報道を規制する要素が含まれている。言論の自由を奪うものだ。だからわれわれは廃案を求める」と訴えた。
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記者会見には,ジャーナリストや作家らが参加。右端が吉岡忍氏。「創」編集長である 篠田博之氏の姿も(右から3人目) |
吉岡氏が言及しているのは,同法案が,「放送機関,新聞社,通信社その他の報道機関」などが報道目的で個人情報を利用する場合には,取材対象者から要求があった際に,取材方法を公開する義務を負わないとする云々という部分についてだ(第6章「雑則」の中の第55条)。
個人情報保護法は,「個人情報取扱事業者」が不正に個人情報を入手したり,悪用できないようにすることが骨子。この個人情報取扱事業者とは,直接的には名簿業者や各種ユーザー登録情報を悪用している業者などのことを指す。
しかし,定義自体は「個人情報データベース等を事業の用に供している者」となっているので,必然的に報道機関も含まれることになる。第55条は,新聞やテレビの報道を規制しないための,例外措置である。
ただ,「その他の報道機関とあるが,その定義については曖昧で,最終的には主務官庁や大臣が判断することになる」(吉岡氏)。そのため実行委員会では,“報道的な内容”を含む雑誌が,真っ先に規制のやり玉に挙げられると考えている。
「週刊誌が報道と認められる可能性は低く,法案が成立すれば,週刊誌が政界汚職やスキャンダルを報じるのは,まず不可能」(同氏)
記者会見には,「創」の篠田博之編集長や,「週刊金曜日」の個人情報保護法案担当デスクも出席。ほかの参加者から,「(法案ができたら)篠田のところは一発だな。週刊金曜日はもちろんだけど」と笑えない突っ込みを食らっていた。雑誌でダメなら,インターネットメディアなんか論外だろうか?
ただ,集会を開催するのは,創や週刊金曜日を救うためではない。集会開催の趣旨について,こう説明する
「個人情報保護の最も重要な原則は,個人が,政府や自治体,警察などの公権力に対し,そこで管理されている情報について妥当性や正確さに関与する権利が確立されることにある。ところが,今回の法案では公権力の情報公開については保護義務が規定されていない。このことについて,もっと問題意識を持つべきだ。われわれは,幅広い形で戦いたい」(吉岡氏)。
ただ現実的には,「新聞でも,この法案を取り扱っているのは毎日新聞ぐらい」(同氏)というように,同法案を掘り下げて報道しているメディアは以外に少なく,法案の名称から「個人情報を保護する」という印象が強く残る。
そこで吉岡氏などは,通信傍受法が「盗聴法」と呼ばれるように,一般に分かりやすい別称で呼ぼうと考えた。
「物を書いて飯を食っているのだから,それぐらいすぐ出来ると思っていた。“メディア規制法”などいろいろ考えたが,どれも的を射ていない。その理由は,法案自体が問題なのではなく,危険な要素を含んでいるという点にある」(吉岡氏)。
なるほど。“敵”も頭を使ってきたようである。では,「トロイの木馬法」というのはどうだろうか。余計分かりにくくしただけか……。
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