News 2001年9月3日 11:59 PM 更新

プラズマTVは,「買い」なのか?

プラズマTV市場が盛り上がっている。各社が意欲的な新製品を出し,価格も下がってきた。まだ高価とはいえ,考え方次第では省スペースのプラズマTVは必ずしも割高とはいえない。そろそろ庶民にもプラズマTVの買い時が近づいてきたようだ。

 今年に入ってプラズマTVの市場が,にわかに盛り上がりを見せている。メーカー側も意欲的な新製品を次々と発表しており,今年の年末商戦や来年のワールドカップに向けて,さらにプラズマTVの新製品を投入してくると見られている。普及のネックだった価格も,大分下がってきている。

 とはいえ,TVとしてはまだ高価であることには変わりがない。それでは,なぜ今,プラズマTVが注目されているのか。


プラズマTVは,今年に入って次々と新製品が発表されている

プラズマTVこそ,庶民の味方?

 価格面から見ると,ブラウン管タイプの36インチTVならば,20万円以下で買える。インチ当たり5000円以下だ。一方,プラズマTVは,50インチなら100万円以上,32インチでも40万〜50万円する。それを「庶民的」などと言うと,読者から叱られそうだ。

 しかし,ウサギ小屋という日本の家屋事情を考えると,高い安いの判断も変わってくる。一番高価なのは実は「部屋のスペース」だからだ。

 プラズマTVの奥行きはわずか10センチ弱。それに対してブラウン管タイプは,36インチだと奥行きが60〜70センチにもなってしまう。入り口が狭い集合住宅などでは,下手をすると家の中に運び込めないほどだ。

 重さも,36インチになると70キロ前後となり,成人男性1人分の重さに相当する。これではとても1人では運び込めないだろう。それが,プラズマTVでは約半分となる35キロ前後の重さとなる。これなら,部屋の模様替えや移動なども1人でできる範囲だ。


プラズマTVの奥行きは10センチ弱。壁際に置けるので,さらに省スペースだ
 また,36インチのブラウン管タイプ(ワイドTV)の横幅は約1メートルある。この横幅に関してはそれほど変わらない(とはいえ,同インチでは10〜20センチほどプラズマTVが少ない)が,前述のように奥行きの差は50センチ以上となる。

 つまりプラズマTVにすることで,約0.5平方メートル分(1メートル×50センチ)のスペースが新たに増えるというわけだ。わずかなスペースだが,都心の住宅では地価を考えると何万〜何十万円に相当する。プラズマTVによって空いたスペースの地価分を本体価格から差し引けば,それほど高い買い物とは感じなくなるのではないか。スペースをお金で買うわけだ。

 ここまで話が飛躍しなくても,TVを買い換える場合,大抵の人は「今より大画面に」と思うことだろう。しかし,今TVを置いているスペースに,さらに大型のTVを置ける人は限られてくる。その点,プラズマTVなら,今のスペースで,より大きな画面を望むこともできるのだ。しかも,映画などDVDソフトを大画面で美しく見たいというニーズにもプラズマTVなら応えてくれそうだ。


“お茶の間ホームシアター”には,プラズマTVが適している?

「1インチ=1万円」時代はいつ到来?

 プラズマTVの本格的な普及には,「1インチ=1万円」が1つのターニングポイントになると言われている。それでは,1インチ1万円時代はいつ頃になるのだろうか。

 プラズマTVの新製品発表会場や,先週開催されていたINFOCOMMの会場などで,各メーカー担当者に尋ねたところ「1インチ1万円を実現するのは2003年頃」と,皆が口を揃えて答えた。まるで,業界内で協定を結んでいるかのようだ。

 その一方で,42インチクラスはワールドカップが始まる来年前半までに1インチ1万円になるという業界筋の見方もある。

 現在,32インチのプラズマTVで50万円前後,つまり1インチ1.5万円となっている。42インチになるとやや上がって1.7万円前後,50インチでは2万円以上だ。しかし,わずか2年前にはインチ当たり2.5万〜3.5万円もしていたことを考えると,飛躍的に価格が下がっているのは間違いない。

 もちろん,PDP生産量が伸びるにつれて,これからも少しずつ価格が下がっていくだろうが,1インチ1万円までのペースは,ここ1〜2年の下落よりはゆるやかになりそうだ。

 一方で,富士通,日立,ソニーの合弁会社「富士通日立プラズマディスプレイ」や,PDPのデバイスから完成品までの製造を行う松下電器100%子会社「松下プラズマディスプレイ製造」など,ここ1〜2年でPDPの本格生産ラインが立ち上がっており,Samsungなど韓国メーカーの参入や,旧機種の低価格化などによって,プラズマTVの実売は今後さらに下がる可能性も示唆されている。

 薄い2枚のガラスを重ねたシンプルな構造なだけに,薄型軽量で大画面化ができる点がPDPの特徴だ。このシンプル構造は,生産量が増えれば低価格化も容易になるというひとつの表れでもある。

 昨年は3万台ほどだったプラズマTVの市場(業務用含む)も,今年は12万台に達するのではといわれている。倍々ゲームで来年には25万台になると試算しているメーカーもあり,民間シンクタンクの調べでは2005年に1兆円市場になると見込んでいるところもある。

 数年前から“夢のTV”といわれてきたプラズマTVだが,21世紀を迎えた今,壁掛けTVが一般家庭にやってくる日がそこまできているようだ。

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[西坂真人, ITmedia]

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