News 2001年9月20日 03:11 PM 更新

次期Crusoeの動向は?――Transmeta最高技術責任者にインタビュー(1)

WORLD PC EXPOのために来日したTransmetaのDavid R. Ditzel氏に,TM5800の投入時期や256ビットCrusoeの詳細などをインタビューした。

 Crusoeが実質的なデビューを果たしてから1年,Transmetaと,その新発想の元に開発された新プロセッサは,一躍スターダムへとのし上がった。しかし,Intelの低消費電力に向けたマーケティングと製品ラインナップの強化,急激な株価下落など,ここ数カ月のTransmetaを取り巻く環境は厳しい。

 そんな中,WORLD PC EXPOのために来日したTransmeta CTO(最高技術責任者)のDavid R. Ditzel氏に話を伺った。


Transmeta CTOのDavid R. Ditzel氏

想像を超えた目まぐるしい1年

 Ditzel氏はこの1年を,想像を超える成果だったと振り返る。

 「こんな小さな会社なのに」と自虐的に話すDitzel氏だが,実際,初めてのプロダクトを出荷したばかりの若い半導体会社が,これだけ大手のPCベンダーを顧客として獲得したこと,そしてPC誌のみならず,一般誌やテレビなどにまで取り上げられ,Crusoeが一種のブームにまで発展したことなど,驚きの連続だったと言えるだろう。

 今年に入り“ブーム”は去ってしまったが,一時的なブームが去ったからといって,Crusoeそのものの価値に変化が起きているわけではない。たった1年で,他の新興プロセッサベンダーが3年かけて獲得する規模の顧客を獲得できたのは事実である。本当の勝負はこれからだろう。

 「0.13ミクロンプロセスを採用したTM5800を搭載する富士通のLOOXシリーズが,WORLD PC EXPO展示会場で参考出展されている。我々は今年後半,600MHz〜800MHzで動作するTM5800を出荷する。そして来年の前半,TM5800の動作周波数は800MHz〜1GHzに引き上げられる(Ditzel氏)」

 いつ登場するのか?と思われたTM5800は,今年後半,やっと市場へと投入される模様だ。関係者によると,小型ノートPCに新しいアーキテクチャのプロセッサを搭載する場合,サンプル出荷から半年以上のディレイを経てからでなければ,製品出荷を行えないという。小型パッケージングを可能にする低消費電力をウリにするCrusoeの場合,そのままポンと既存シャシーに載せても,真価を発揮できないためだ。

 Ditzel氏はTM5800を採用する(富士通以外の)OEM先について「まだ登場していない製品に関してはコメントできない」としたが,別の情報によれば,ほとんどのOEM先がTM5800の採用に動く模様だ。

 その中には,Crusoeの性能を活かすためには不可欠なDDR SDRAM採用製品もあるという。Ditzel氏によると,TM5800は0.13ミクロンプロセスへの移行とCMSの改良により,消費電力は従来の同クロック周波数製品と比べ半分になっている。さらにコスト面でも,製造委託先をIBMから台湾のTSMCへと変更したことも併せ,およそ半分に下げることができた。

 もっとも,Intelが高クロック路線一辺倒で小型ノートPC開発者に失望感が漂っていた時期,救世主のように扱われたTransmetaも,景気後退の余波を受け,この数カ月で株価を急落させた。このことは,製造面への投資に対する疑問にも繋がる。この先,本当に顧客が望む製品を,受注した分量,出荷すべき日に出すことができるのか?そうした疑問は当然ながらある。

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