News 2001年9月21日 11:30 PM 更新

「ライカ in パナ」と「パナ in ライカ」

 松下電器がライカとの協業による製品の第一弾を発表した。

 協業が発表された7月の記者会見では,同社の戸田社長は「どうせやるなら,今のデジカメにない新しいイノベーションを加味したい」と言い,ライカとの協業について「光学系で悩んだ結果,やはり,世界のカメラをずっとリードしてきた頂点としてのライカの力添えが必要だと判断した」とコメントしている。

 そして「新しいカメラ像を造っていくために,特に,画像の表現に暖かみや潤いをどうやって付加するかを考えていきたい。世界のカメラマニアを魅了してきたライカといっしょにやっていくことは光栄であり,想いのこめられたデジカメを開発していきたい。レンズを積極的に開発してもらうということは当然としても,完成品を十分にチェックしてもらおうと思う。そろそろデジカメにも,写真文化や芸術表現性のレベルが問われる時代がやってこようとしている」とも。

 また,ライカはライカで,コーン社長が「1+1は常に2だが,ビジネスライフの中ではそれ以上になることもある。これこそ,松下とライカが証明しようとしていることだ。今回の狙いは,規模こそ違うが,各々が持つノウハウとブランドの認知度を知らしめ,相乗効果を生み出すことだ」と述べている。

 こうした経緯の中で生まれたのが,今回発表されたDMC-LC5とDMC-LC7だ。


DMC-LC5(上)とDMC-LC7(下)

 この2つの製品は,全く性格が異なるが,強引に言ってしまうと,DMCーLC5がライカっぽく,DMCーF7が松下っぽい。

 特に,DMCーLC5は,手に取った感じも最近のデジカメにない印象があり,松下がいうところの暖かみや潤いといったエッセンスが,多少なりとも感じられる。もっとも,このニュアンスは,出来上がる画像を指しているのであって,ボディのデザインを指すわけではない。でも,それなりの仕上がりになっていると思うのだ。

 今回の製品に対して,戸田社長は「暖かみ,潤いといった銀塩派のファンが固執している良さをスチルカメラで再現し,納得してもらえる商品になっているはず」という。


ライカっぽいDMC-LC5

 スペックを見て気が付くのは,両機種ともに,出来上がる画像のアスペクト比が4対3である点だ。ちなみに,銀塩派が使う135フィルム,いわゆるライカフォーマットは,映画の1コマを2つ使い,36ミリ×24ミリとして露光するので,そのアスペクト比は3対2となる。ニコンやコダックなどのデジカメが,頑固にこのアスペクト比をサポートしているのが,らしいといえば,らしい。

 もっとも,パソコンのディスプレイで表示することが多いデジカメ画像の場合,3対2のアスペクト比では,デスクトップの上下に余白ができてしまう。VGA,SVGA,XGAといった解像度は基本的に4対3だからだ。

 記者会見で,この点を質問してみたところ「このクラスのカメラには4対3で十分」という答えが返ってきた。「このクラスのカメラ」という言葉にどれほどの意味がこめられているのかは知るよしもないが,「〜で十分」という表現には,ちょっとばかりガッカリした。

 さらに,実機を手にして撮影してみた。シャッターを押すと,聞こえるか聞こえないか分からないほどの,ささやかなフォーカルプレーンシャッターの音が…というのはウソで,かなり下品な(少なくともぼくはそう感じた),一眼レフカメラのミラーがアップしたときのような効果音が再生されたのだ。

 手にしたときに感じた「ああいいじゃないか」という気持ちは,このサウンドを聞いたとたん,みるみる冷めていってしまった。でき上がる画像とは何の関係もないところだけれど,そういうところにもこだわりを持って作って欲しかったと思う。

 この点は,ライカに対して質問してみたが,「今回は,レンズ光学系に集中しての協業だった」とし,「シャッター押し下げ時のサウンドに関しては,趣味の問題であり,コメントできない」という答えが返ってきた。そりゃ,あの場所で,気に入らないとはいえないだろうなと察する。

 ぼく自身は,クラッシックカメラフリークでもなければ,ライカのシンパでもない。ライカの製品も持ってはいない。それでも,ライカに関する数々の伝説はよく耳にする。

 ちなみに,ライカは,同社のブランドで,松下の技術を詰め込んだデジカメを2002年春に発売する予定だそうだ。ぼくは,そっちを待ちたいと思う。

 もしかしたら,初めて購入する“自分自身のライカ”になるかもしれない。それは,ライカに入った松下のデジタルテクノロジーに対する大いなる期待でもある。

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[山田祥平, ITmedia]

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