News 2001年10月3日 07:42 PM 更新

液晶,次はどうなる?――各社の有機EL,画素メモリ内蔵液晶編(2)

 有機ELではこの他,東北パイオニアも展示を行っていた。同社はシャープ,半導体エネルギー研究所と共同で,アクティブマトリクス型有機ELディスプレイ用TFT基板の生産を行う合弁会社「エルディス」を設立している。

 今回展示しているのはアクティブ3.0インチのCGシリコンTFTを使った有機EL液晶で,320×320ドット。サイズは67×69×2.2ミリ,開口率は40%だった。基板は半導体エネルギー研究所のものという話だ。

 同社,そしてエルディスでは2002年秋の量産を目指しているが,話を聞くとどうやら今が開発の山場ということらしい。

 まず問題はディスプレイの寿命。素子を発光させる有機ELでは,TFT液晶などと比べてその寿命がかなり短いのだ。同社に聞くと,現在は「5000時間ぐらい」だそうで,1年持たない。いかに製品寿命の短い携帯端末でも,これでは厳しいだろう。数万時間というTFT液晶に近づけるのが1つの鍵になる。

 他にも消費電力や価格面などハードルは少なくないが,もう1つ最近浮上している難問は「適当なアプリケーションはなにか」だそうだ。有機ELでは元々,携帯端末など小型のパネルがターゲットと考えられていたが,ソニーが13型を展示したほか,三洋電機も5.5インチを出展,大型化が進んでいる。

 パイオニアでは40インチ以上をPDP,小型は有機ELと位置付けており,今回の3.0インチは小型のPDAを前提に開発してきたという。だが,ターゲット市場が予想外にバラけてきただけに,どこに今後の開発の狙いを定めるのかが難しくなっていると話していた。

スマートフォン用一体型ディスプレイ――エプソン

 セイコーエプソンブースでは,次世代携帯向けにディスプレイとIC周りを一体化した「Smart-Engine」が興味深かった。これは液晶の新技術というより「System on Chip(SoC)」分野の話だが,最後に紹介しよう。

 このシステムの核になるのは,ARM720T/66MHzをベースにしたS1C38010というSoCチップで(以下の仕様はすべて開発中のもの。最終仕様ではない),このワンチップにLCDコントローラやMPEG4ハードウェアアクセラレータ,メモリコントローラ,シリアルインターフェイス,SDカードコントローラ,CCD/CMOSセンサのインターフェイス,デジタルオーディオインターフェイス――など,次世代携帯に必要とされるアプリケーション機能がほぼ網羅されている。

 つまり,このモジュールに携帯電話的な機能(ベースバンド・エンジンやアナログCODECなど)を足せば,いわゆる“スマートフォン”が簡単に出来上がってしまうというわけだ。MPEG4は15fpsの表示が可能だし,EPOCやJavaを搭載することもできる。モックが普通の携帯電話端末よりよほど大きいので尋ねたら,液晶モジュール以外はほぼガランドウだとの話だった。


エプソンはARMベースのSoCチップによるSmart Engineを参考展示していた

 消費電力も,2.2インチのEPSON MD22という液晶モジュール(176×144ドット)と組み合わせて使った場合,動画やJavaを走らせて150mW,静止画で5mW,サスペンド状態で2mWがターゲットだそうだ(SDRAMのセルフリフレッシュに伴なう電力消費を含む)。

 シャープのシステム液晶もそうだが,液晶そのものの技術だけでなく,こうした「液晶モジュールのシステム的なアプローチ」にも,今後の楽しみは大きいようだ。

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[中川純一, ITmedia]