News 2001年11月7日 11:55 PM 更新

時刻合わせから情報機器との相互通信まで――IrWWの魅力

シチズン時計のプライベートショウで,赤外線通信規格「IrWW」を使って時刻合わせを行う「SyncJust」というシステムが紹介されていた。腕時計が情報端末に変身していくための要素技術の1つだ。

 シチズン時計のプライベートショウ「CITIZEN FORUM 2001」で,赤外線を使って時刻合わせを行う「SyncJust」というシステムが紹介されていた。

 これは,腕時計の赤外線通信規格「IrWW(IrDA for Wrist Watches)」に準拠した赤外線を利用している。標準電波を受信できる電波時計を装備した赤外線発信端末に腕時計をかざすだけで,秒単位まで正確に時刻合わせを行える(電波時計の詳細は別記事を参照)。


赤外線発信端末にかざすだけで,正確に時刻合わせを行える

 それなら「腕時計タイプの電波時計があるじゃないか」と思われるかもしれない。だが,このSyncJustには「海外でも使用可能(時差情報に対応)」「小型化が容易」「IrWW端末同士で情報交換ができる」といった電波時計には無いメリットがあるのが特徴だ。

 電波時計の時刻修正機能は日本での標準電波を利用しているので,その電波が届かない海外ではもちろん使えない。ドイツなど標準電波を発信している国もあるが,これもその国の電波にあった時計を用意しなければならない。

 また,海外旅行の際に面倒なのは時差の設定だ。デジタル時計では,あらかじめ各国の時差情報を入れた世界時計機能を搭載しているものも多いが,腕時計の小さなボタンを押して設定を変えるのも面倒なもの。これがSyncJustならば,端末にかざすだけだ。

 「例えば,空港のロビーにSyncJustを設置しておけば,入国手続きをしているちょっとした時間に時差も含めた正確な時間を設定できる」(シチズン担当者)。


海外旅行時に面倒な時差設定も瞬時に変更。同時に正確な時刻合わせも

 さらに,電波時計のように受信用アンテナを必要としないため,腕時計には必須条件といえる「小型化」が可能となる。現在の電波腕時計は,男性用タイプの大きいサイズが主流だが,赤外線機能だけで済むSyncJustなら女性用タイプの小型でお洒落なデザインの腕時計にも応用できるという。


電波腕時計も以前と比べると小型になってはいるが,男性用タイプが主流

 IrWWは,NTT東日本が音頭をとってシチズン時計,カシオ計算機,セイコーインスツルメンツといった国内時計メーカー3社などが仕様を策定した日本発の国際標準規格で,赤外線の国際標準化団体IrDAの認定を受けている。

 そのため腕時計だけでなく赤外線を利用した電話やPDAなど異なるメーカーの異なる機器間でデータ通信を行なうことができ,小型情報機器の相互無線通信システムとして期待されている規格の1つだ。

 SyncJustでは通信に赤外線を利用しているが,CITIZEN FORUM 2001ではそのほかにもLinux腕時計で採用されているBluetooth(別記事を参照)や,微弱電波を利用したDataSlim(別記事を参照)など,さまざまな無線通信システムが提案されていた。

 それぞれの規格でメリット・デメリットがあり,消費電力の問題や汎用性など課題は多いが,いずれにしても無線通信機能を搭載することによって,時刻情報が中心だった腕時計が情報端末に変身していくことには間違いない。

 SyncJustの方は,まずは主要な空港に設置して,徐々に設置場所を増やしていくという。赤外線端末自体はそれほど高価なものではないので,低コストでインフラ整備が行えるのがポイントだ。

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[西坂真人, ITmedia]

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