News:ウェストコースト通信 2001年11月20日 09:35 PM 更新

ウェストコースト通信:場外乱闘? Xbox発売で姿を消したMicrosoftの直営店

Xboxが発売され,いよいよ熾烈な次世代ゲーム機販売競争が幕を開けた。Xboxの供給は今のところ潤沢のようで,お店には山積みされている(ただし抱合せ販売になっていた)。しかし,Xbox発売の余波か,世界で唯一というMicrosoft直営の常設小売ショップがひっそり姿を消した。

 サンクスギビング(感謝祭)の休暇も,目前に迫ってきた。毎年第4木曜日だから,今年は11月22日となる。サンクスギビングが終わるとアメリカの街には,いっせいにクリスマスの雰囲が漂い,人々はクリスマスカードを送り始めたり,家の飾りつけをしたり,プレゼントを買ったりと,準備に忙しくなる。

 休暇シーズンを前にして,新聞各紙は,どれもクリスマスプレゼント向けのハイテク商品の特集を華々しく組んでいる。景気停滞の影が色濃い市場に,少しでも光を照らそうと躍起になっているかのようだ。

 そんなクリスマスプレゼント向けハイテク商品の筆頭は,やはり家庭用ゲーム機である。北米では,このクリスマスシーズンを前に,MicrosoftのXboxがついに発売となった。それを追うように,さらに任天堂のGAMECUBEも,日本に続いて北米マーケットにデビューを飾った。古参のプレイステーション2も入れて,これで家庭用ゲーム機市場には,役者が出揃った。

 Xbox発売の翌日に,地元サンフランシスコのElectronics Boutiqueという全米に展開するゲーム小売チェーン店に,筆者は足を運んでみた。店内は,入口付近や客の目に付きやすいところはXbox一色。店員もXboxのロゴ入りTシャツを着てグッズを身につけ,盛り上げに一役買っている。


Xbox発売翌日の「Electronics Boutique」。「Xbox」はまだたくさん積み重ねられていた

 店頭だけ見ても,Microsoft自身が莫大なマーケティング予算をつぎ込んでいるのは,一目瞭然だ。聞くところによると,Xboxのマーケティングには,5億ドルは掛けているらしい。もっともソフトウェア業界では,巨人ゴリアテのMicrosoftも,家庭用ゲーム市場では新規参入者であり,小さなダビデに過ぎないのだから,ゴリアテを倒すには,決して大きな数字とも言えないのかもしれない。

 さて,私が足を運んだゲーム店Electronics Boutiqueは,すでに発売開始の翌日であるにもかかわらず,Xboxの箱が積み上げられていた。店員に尋ねると,まだ在庫は十分にあるという。ただし500ドルだという。本体は通常300ドルのはずだ。なんでもXbox本体のほかに,ソフトウェア3本とゲームコントローラを付けたセットでないとこの店では売らないらしい。抱き合わせ販売ではないか! これには,ちょっと不満顔の客の姿もあった。


「Electronics Boutique」で。ディスプレイもXbox一色


Xboxは本体とソフト,コントローラの抱合せ販売だった

 昨年のプレイステーション2の発売の時には,品薄状態がしばらく続き,オークションサイトのeBayなどで高値取引されたりもしたが,今回のXboxはeBay上での値段を見ても,ほどんど値上がりしていない。どうやらXboxの供給台数は十分なようだ。プレステ2の時には,手に入れた商品をeBayで高値で転売し,一儲けしていた輩もいたが,彼らは今回は目論見がはずれたようだ。

 ここサンフランシスコには,Metreonというソニーの総合エンターテイメント施設がある。東京のお台場にメディアージュという同じようなソニーの施設があるが,Metreonは,それに先駆けてソニーがサンフランシスコにオープンさせたものだ。建物の中には,映画館を中心に,レストランやショップが入っている。

 その中に,先月までMicrosoftの小売ショップが入っていた。なんでも,世界で唯一のMicrosoft直営の常設小売ショップという触れ込みだった。ところが先日このMicrosoftショップが,Digital Solutionという別のショップにひっそりと取って代わられた。


ソニーの経営する総合エンターテイメント施設から,Microsoft直営の小売ショップがひっそり姿を消した

 今回のMicrosoftによるXboxの発売は,机上の覇者としてのMicrosoftと,茶の間の覇者としてのソニーという形ですみ分けてきた両雄が,家庭用ゲーム機をめぐって直接対決することを意味している。その直接対決の戦いの火蓋が切って落とされようという,まさにそのタイミングでMicrosoftショップは,敵陣であるソニーのMetreonから姿を消した。

 Metreon内のこの店は,Microsoftの小売ショップである以上,Xboxのプロモーションの場として利用されることは避けられなかったであろう。ソニーが経営し,内部で大々的にプレイステーション2の販売とプロモーションを展開しているMetreonとしては,どうも具合の悪いことになったであろうことは,想像に難くない。

 この家庭用ゲーム市場というゲーム(戦い)をめぐっては,どうやら思わぬ場外乱闘も繰り広げられているようである。その行方やいかに。

[小田康之, ITmedia]

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