News 2001年12月6日 10:30 PM 更新

最大級の顧客重視? ムジ・ネットのモノづくり

顧客の声はただ集めるだけではいけない。ダイレクトに,製品作りに活かせるフィードバックこそが重要である──無印良品の「持ち運びのできるあかり」は,顧客とムジ・ネットが二人三脚で作り上げた製品だ。

 「無印良品」を展開する良品計画グループのムジ・ネットが,“顧客の声”を最大限に取り入れた商品を発売する。ムジは,今年9月25日に「購入予約が一定数以上になったら商品化」という企画をスタート。第1弾として,充電式コードレス照明「持ち運びできるあかり」の商品化が決定した。

 商品化の条件は,予約数が300件を超えること。コミュニティサイトの「無印良品ネットコミュニティ」で予約を受け付けたところ,購入予約を開始して18日目に条件ラインをクリアした。「あっという間というわけでもないが,着実に予約数が増えていった」(ムジ・ネット営業部の杉山直宏氏)。

 300件という数字の理由は,ネット販売比率を10%に設定しているところにある。「持ち運びできるあかり」は,ネットだけでなく実際の店舗でも販売する計画で,ネットだけで300個販売できれば,トータルで3000個は売れるという販売予測が成り立つという。なお杉山氏によれば,オンライン販売サイトの「無印良品ネットストア」では,CDプレーヤーなどの家電の売り上げが顕著に伸びているほか,照明関連の製品も人気だという。


ある無印良品有楽町の「ATELIER MUJI」に「持ち運びできるあかり」が展示されている。無印良品コミュニティサイトに関する各種資料もある。期間は12月9日まで


行灯の現代版という「持ち運びできるあかり」。実際に販売するさいには,蛍光灯ではなく,白熱灯になる可能性も


 「持ち運びできるあかり」は,6ワットツインタイプの蛍光灯を使用し,ニッカドバッテリー単3×5本程度で動作する。バッテリー駆動時の連続点灯時間は約1.5時間で,フル充電には約8時間かかる。本体上部が丸く刳り貫かれているデザインが特徴で,持ち運びに便利なだけでなく,ドアノブに引っ掛けることもできる。これで,深夜にトイレに行く際に家中を明るくする必要もなくなるというわけだ。まさに,「行灯の現代版」(杉山氏)という説明がぴったりくる。

 実は,「持ち運びできるあかり」には競合製品があった。といっても,企画段階での話である。「ベッドまわりの照明」というコンセプトで,この「持ち運びできるあかり」のほかに,ベッドボードが点灯する「あかりボード」,ならびにベッドのサイドテーブルが点灯する「ひかるサイドテーブル」があった。ユーザー投票で支持された,「持ち運びできるあかり」が,予約を受け付けるステップに進んだというわけだ。

 得票数を見ると,「持ち運びできるあかり」が168票,「あかりボード」が84票,「ひかるサイドテーブル」が61票だった。「持ち運びできるあかり」が圧倒的に他を引き離したのだが,インターネット上で約1カ月間も投票を受け付けていて,投票総数が313票とは,いささか少ないような気がする。

 こう指摘すると,杉山氏は「量より質」と即答した。気軽に投票できるネットで応募しているのだから,多くの人に投票してもらったほうがいいというのは,単なる思い込みにすぎないという。「168票の全てに,真剣に商品のことを考えた意見がある。商品開発に積極的にコミットしてくれる顧客が,今回の企画にはかかせない」(同氏)。つまり,不特定多数のユーザーにアンケートに回答してもらっても,どこまで有益な情報が集まるかは不明だということのようだ。

 貴重な意見を提供してくれるロイヤルティの高い顧客と,その意見をダイレクトに反映させるムジ・ネットの姿勢があってこそ,「持ち運びのできるあかり」は誕生したというわけだ。

 ただ,「持ち運びできるあかり」が発売されるのはまだ先。2002年6月頃になる予定だ。価格は,「欲しい機能ばかりを求めて高価になってもしかたがない。上手い落としどころを見つけるのも重要だ」(杉山氏)と悩んだ結果,5900円(予定)が付けられた。だが,お金には厳しいZDNNの某人妻編集者は,「え〜たかぁい〜」とバッサリ。なるほど,顧客の声を吸い上げるというのも,楽な作業ではなさそうだ。

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[中村琢磨, ITmedia]

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