News 2001年12月7日 11:13 PM 更新

ブロードバンドで「放送」と「通信」は融合しない

ブロードバンドを使ったWeb放送が本格化したら,既存の放送サービスは将来なくなるのだろうか。「InternetWeek 2001」で行われた講演の中でフジテレビジョンの上瀬千春氏は,ブロードバンドによる“放送と通信の融合”を否定した。

 ブロードバンドの本格普及によって,インターネットを使った放送サービスが注目されている。Web放送が本格化したら,デジタル放送も含め電波を利用した放送は将来無くなるのではと言う人も多い。

 パシフィコ横浜で開催された「InternetWeek 2001」で,フジテレビジョン技術局専任局長の上瀬千春氏が「デジタル放送とブロードバンド〜技術の進歩による新たな展開〜」と題した講演を実施。その中で上瀬氏は「ブロードバンド放送は1つのブーム。放送と通信は融合しない」と言い切った。


「放送と通信は融合しない」と語る上瀬氏

 韓国ではインターネットを利用したWeb放送が盛んだが「実情は地上波で見逃したTV番組をチェックするといったタイムシフト的に使っているだけ。アクセスが多くなるとサーバがパンクしてしまうなど実用レベルではない」と上瀬氏は一蹴する。ブロードバンドの先進国でさえ,既存放送のビデオサーバのような使い方をしているというのだ。「epのようなHDD蓄積型放送サービスが始まれば,このような使い方もなくなる」(同氏)。

 ブロードバンドネットワークを利用したWeb放送の利点は,双方向性や大容量の伝送データを扱える点,好きな時間に好きな番組が視聴できるオンデマンド性などが挙げられる。

 しかし上瀬氏は「BSデジタルでは電話回線を使って双方向を実現しているし,epなど次世代放送では双方向は当たり前となる。伝送容量も20Mbpsは可能で,オンデマンド性もepのようなホームサーバがあれば解決する」とし,Web放送のメリットといわれているものは,電波放送でも実現可能なことを指摘した。

 さらに電波放送ならではのメリットとして,サーバを介さないため輻輳が発生せず,数千万世帯に安定した放送サービスを提供できる点や,電波という無線方式のため伝送コストが極端に安い点をアピール。「そして何より,“TV”という最も普及しているマスメディアを使う点が大きい」(上瀬氏)。

 しかし,そんなTVでさえも,視聴者の「利用時間」を調べて見ると意外に少ない。上瀬氏の調査によると,1日の放送視聴時間の平均は約3.5時間で,1日に200はある番組のうち,4番組ほどしか見ていないという。

 「ユーザーの多くは残る98%の番組を見ずに過ごしている。つまり,コンテンツは現状の放送サービスだけでも有り余るほどあるが,ユーザーの“見る時間”が少ないのだ」(同氏)。


コンテンツは有り余るほどあるが,ユーザーの“見る時間”が少ない?

 この少ない“見る時間”を有効に活用するためには,好きな番組を好きな時間に視聴できる「Video On Demand(VOD)」のシステムが必要となる。

 「多くのユーザーから集中して負荷のかかる“ブロードバンドVOD”よりも,各家庭にep端末のようなVODサーバを置く“ホームサーバ”が番組視聴の主役となる」(上瀬氏)。

 同氏によると,2003年頃にはHDDもテラバイト時代になり,次世代のVTRは1000時間録画が現実となるという。そうなると,全ての放送番組を蓄積することも簡単だ。

 「テレビの時間軸が変わり,いつでも好きな番組が見られる。各局のニュース番組ばかり録画すれば,ニュース専門チャンネルになったりする。ユーザー自身でバーチャルチャンネルを持つことができるのだ」(同氏)。

 「“放送番組”は,ブロードバンドのキラーコンテンツではない。放送(ブロードキャスト)はもともとブロードバンドだった。世の中は光ファイバーの時代から,次世代無線システム時代に突入している。ブロードバンドの次に来るのはホームサーバ。スクランブル技術などセキュリティ技術が進んだ放送システムなら,著作権の問題も解決し,コンテンツも保護される」(同氏)。

[西坂真人, ITmedia]

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