News 2001年12月26日 10:28 AM 更新

魔法のスニーカー“Ginger”に乗ってみた(1)

PCを越える世紀の大発明とまで言われた“Ginger”がベールを脱いだのは,3週間前のこと。米ニューハンプシャー州マンチェスターのSegweyの研究所で,試乗することができた。

 Segwayは,今や面白みのない「Human Transporter」(HT)という名前で呼ばれている,2つ車輪を持つ新しいデバイスを開発したメーカーだ。同社はこのデバイスを「魔法のスニーカー」と呼んでいるが,その価格の高さを考えると,多くの潜在購入者から「歩いた方がまし」という声が聞こえてきそうだ。

 「Ginger」として名をはせたこのマシンが,価格やリリース前の誇大な広告に見合うのか。開発者のDean Kamen氏が長きにわたる秘密のベールを脱ぎ捨てたこのマシンについて,今,何を伝えたいのか。その答えを探るべくCNET News.comは,私をSegwayの本社があるニューハンプシャー州マンチェスターに送り込んだ。

 端的に言うとどういうことか? Segwayは,楽しくて,しかも操作が簡単なマシンを開発した。これを使えば,暑い夏の日にも汗一つかくことなく職場に急いで駆け込むことができる。学習カーブは最小限だし,本物のカーブを曲がるのも手首をひねるくらい簡単だ。

 しかし雨や雪の日に使うためには,相応の用意が必要だ――このマシンはこうした天候のための屋根を備えていない。食品雑貨を持ち運ぶこともあきらめたほうがいい。このマシンには自分のポケットに毛が生えたくらいのスペースしか用意されていない。

 さらにマシンの価格は初期の企業向けバージョンが8000〜1万ドルで,来年リリースされる消費者向けバージョンがおそらく3000ドルになる見込みだ。Segwayは,購入者のためにローンプランを用意する必要があるだろう。

 秘密の実験段階には「Ginger」(あまり人目を引かなかったが「IT」という名前も持っている)と呼ばれていたこのデバイスに試乗してきた。その日は,気温が華氏40度(摂氏4度)で空は晴れ渡っていた。Segwayに到着すると,エンジニアたちが駐車場に隣接したラボで待ちかまえていた。気持ちが盛り上がってきた頃,映画「ショートサーキット」に登場するロボット「ジョニー5」のような格好をした人物が姿を現した。

 Segwayの100人の従業員は,メリマク川に面したかつて製粉所だった2つの建物の中で働いている。この建物には,オフィスと巨大な研究/開発/耐久テストラボがあり,テストコースが設置されていた。テストコースには,ベニヤで作ったスロープや,階段,さまざまな種類のこぶ,砂利や泥,丸石を詰めた高さ6インチの箱などの障害物が置かれていた。Human Transporterを次々に作り出す工場がもうすぐ,ベットフォードから5マイル離れた場所に建設される。

安全第一

 Discovery Channelの撮影クルーとの面談を終えたばかりのKamen氏が,フリースのジャケット,青いシャツ,ジーンズに身を包み,HTに乗って勢いよく登場した。HTに乗った同氏は,身長が2メートル以上にも見え,電動になる前の古い芝刈り機に乗っているようにも,後輪のないRadio Flyerワゴン――あるいはRadio Flyerワゴンそのもの――に乗っているようにも見えた。彼がHTから降りる前から,私たちは握手することができた。この後彼が,HTが誰かに接触した時にどういう反応を見せるか示したいとしつこく言うので,見せてもらうことにした。どういう反応だったかというと? 動きを止めたのだ。

 Kamen氏は,ある一定の角度まで「コントロールストーク」を後ろに傾けると停止すると説明した。この安全機能は,歩行者や樹木に接近した時に怪我をしないよう取り付けられたものだという。HTが歩くスピードをやや上回る程度であることから,この機能は十分なものと言えそうだ。

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