News 2002年1月7日 09:38 PM 更新

オリンパス・デジカメ事業再編――高成長市場に潜んでいた落とし穴

オリンパス光学工業が発表した映像事業再編計画の背景には,高成長をみせるデジカメ市場の陰で販売サイクルの短さと価格の下落に苦しむデジカメメーカーの現実が見え隠れする。

 オリンパス光学工業は1月7日,デジタルカメラなどを含む映像事業の再編計画を発表した(別記事を参照)。その内容は,国内の映像システム関連生産拠点を1組織に統合し,国内販社も同様にして製造・販売機能を一元化。生産は中国の深セン工場をベースにしてコスト削減を徹底し,収益力の向上をはかるというものだ。

 今回の再編計画の狙いを一言でいえば「赤字の解消」だ。

 同社にとってデジカメ事業は「売上げは全体の3割強を占める」(菊川剛社長)というまさに“屋台骨”となっている。だが,その稼ぎ頭が今期は足かせとなり,2001年度(2002年3月期)のデジカメ部門営業損益は「100億円以上の赤字を計上する見通し」(菊川社長)だ。コンパクトカメラを中心にした銀塩カメラ部門の原価低減策や円安による為替益によって,映像システムカンパニー全体の営業赤字は78億円と,かろうじて100億円は下回っている。


映像システムカンパニーの赤字の元凶はデジカメ事業

 景気低迷やITバブル崩壊が叫ばれる中,デジカメ市場だけは前年比8割増の出荷台数を記録,数少ない高成長市場となっている。この拡大著しい市場の中でも,同社のデジカメは全世界シェアが20%と高いレベルにあり,ソニーや富士写真フイルムとともにデジカメトップ3を形成している。そんなデジカメが同社の赤字の元凶になっているのは,一体どういうことなのだろうか。

 理由は,デジカメの販売サイクルの短さにある。

 シェア確保のために,実売1万円台の入門機から10万円以上の高級機までフルラインアップで対応してきた同社は,昨年だけでも実に10機種以上のデジカメ新製品を市場に投入している。

 通常,デジカメは発売から3カ月が勝負といわれている。モデルチェンジも,遅くとも1年以内には行われるのが当たり前という状況だ。そして売れ筋から外れたデジカメは,在庫処分のために大きく値が崩れていき,それがデジカメ市場全体にも悪影響を及ぼす。

 「経済が急速に冷え込んだことやITバブルがはじけたなど赤字の要因はさまざまあるが,価格の急激な下落と在庫の評価減によるものが大きい」(菊川社長)。

 カメラ・家電・玩具メーカーまで20数社が入り乱れる“戦国市場”の国内でも,1位の富士写真フイルムに次いで,長年2位の座を守っていた同社だが,近年はIXY DIGITALのヒットで勢いづくキヤノンやCyberShot Pシリーズが好調なソニーに市場を食われ,ジリジリとシェアを落としており「現在では16〜17%ぐらい」(同社広報)。かつての勢いは影をひそめている。

 激変する市場や競合製品へ素早く対応していくために「スピード最優先の経営」(菊川社長)を掲げる同社。国内生産拠点や販社の統合による製販一体システムを作ることで,迅速な意思決定や商品開発期間の短縮をはかり,販売サイクルが短いデジカメ市場に対応していく。一方,中国への生産移管によって徹底したコスト削減も合わせて実施する。

 「2002年度(2003年3月期)には映像システムカンパニーで50億円の営業黒字化を目指す。10機種以上もあるデジカメのラインアップも,来期(2002年4月〜)からは少し製品を絞っていく方針」(同社)。

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[西坂真人, ITmedia]

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