News 2002年1月9日 08:58 PM 更新

「ファイルローグ」と音楽業界,全面対決は回避不能?

昨年11月のサービス開始以来,何かと話題の「ファイルローグ」だが,昨年末から水面下で音楽業界とのやり取りが激しくなっている。全面対決は秒読み段階のようだ。

 国内でファイル交換サービス「ファイルローグ」を提供する日本MMO。昨年11月のサービス開始当初より,日本レコード協会(RIAJ)に目を付けられ,「法的手段に出ることも辞さない」と凄まれてしまっている(11月30日の記事参照)。そして昨年末,日本MMOのもとに,日本音楽著作権協会(JASRAC)からもサービス体制の見直しを要請する通知書が届いた。

 2001年12月14日付けのJASRACからの内容証明郵便には,書面だけでなく,JASRACが管理する著作権物を収録したCD-Rが同梱されていた。「該当ファイルがファイルローグのサービスで交換されている場合には,著作権侵害の解消および発生防止の措置を直ちに講じるよう要請する」というのが,JASRACの言い分だ。

 またJASRACでは,ファイルローグで交換されている音楽ファイルの大半が,「当協会の管理著作物であり,それらが全て当協会の著作権を侵害して公衆送信されていることを既に認識している」と言い切り,フィルタリングシステムを導入する以外に,フィアルローグに生き残りの道はないと主張する。

 実は,JASRACからの内容証明が届く11日前,12月3日にはRIAJからも,同協会会員24社が製造販売する音楽CDを記載したCD-Rが送られてきた。RIAJはJASRACと同様に,記載された音楽CDに関して,著作権侵害行為を事前に遮断する措置を講じることを要求している。

 さらにRIAJは,フィルタリングシステムの導入だけでなく,ファイルローグが著作権侵害行為防止のために用意している「ノーティス・アンド・テイクダウン手続き」についても,「権利保護手段として極めて不十分なものである」と述べ,同規約を定めているからといって日本MMOが免責されるわけではないと訴えている。

 強気な姿勢で日本MMOにフィルタリングシステムの導入を迫るRIAJとJASRACだが,日本MMOも譲る気配を見せていない。同社の代理人である小倉秀夫弁護士は,JASRACに対して文書で次のように返答している。

 「(前略)弊社に送付したCD-Rに収録した管理著作物を含む貴協会ホームページで公開している全ての管理著作物につき,違法なファイルの交換を遮断する措置を講じるように弊社に対して要請されました。しかし,そのようなファイルの交換を事前に遮断する措置を講ずるためには,レコード会社名,曲名,アーティスト名を入力すれば,当該CDに記録された音楽情報をMP3ファイルに圧縮したファイルを自動的に検出してくれる技術があることが不可欠ですが,弊社といたしましては,そのような技術が存在することを知りません」

 同社の言い分は,屁理屈を言っているようにも,JASRACを小馬鹿にしているようにも見える。だが,日本MMOがこう答えたのは,「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限および発信者情報の開示に関する法律」の第3条1項において,「権利を侵害した情報の不特定の者に対する送信を防止する措置を講ずることが技術的に可能な場合」とされているからである。

 つまり,「フィルタリング技術があるなら教えてくれ」というのが日本MMOの主張なのだ。実際,先の書面でも「つきましては,上記検出技術をご存じでしたら,ご教示いただきますようお願いしたします」と嫌みたっぷり(?)にコメントしている。その上で,日本MMOは,フィルタリングシステム導入の要請に応じるか否かを決定し,応ずるとすればどのタイミングが相応しいのかを回答するつもりだという。

 どうやら,日本MMOと音楽業界の全面対決は,避けられない雲行きだ。

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[中村琢磨, ITmedia]

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