News 2002年2月12日 09:55 PM 更新

鳥取発のベンチャー,自律的動作が表現できるWeb3Dソフトを発表

レクサー・マトリクスが,独自の性格/行動規範といった“自律的動作”を表現できる3次元CGオブジェクトを作り出せるWeb3Dソフトウェア「eReality ver1.0」を発表した。この鳥取出身のベンチャー企業の発表会には,来賓として片山善博・鳥取県知事も駆けつけた。

 日本で一番人口が少ない都道府県――「鳥取県」から,Web3Dの新インタフェース技術でデファクトスタンダードを目指す企業が産声を上げた。

 レクサー・マトリクスは2月12日,Webブラウザ上で3DのCG表現によるインタフェースを提供するWeb3Dソフトウェア「eReality ver1.0」を3月より発売すると発表した。独自の性格/行動規範といった“自律的動作”を表現できる3次元CGオブジェクトを作り出せるという。Windows版とSolaris版が用意されており,価格は個別見積りとなる。同社は,鳥取県に本社を置くレクサー・リサーチの販売会社として昨年10月に設立された。

 eRealityは,「3D-OS」「VR-UI(バーチャルリアリティ・ユーザーインタフェース)」「感情データベース」「サイバー・ブレード配信」といった4つの基本要素技術から成り立っている。

 同社の中村昌弘社長はeRealityについて「感覚的に空間の操作が可能となる。直感的に3D空間の中に入っていき,いろいろな動かすことができる。例えば,マウス操作で3D表示のチェスの駒を好きな場所に配置することができる。駒の上に駒を載せるといった感覚的な動作も可能」と説明する。


マウス操作で3D表示のチェスの駒を好きな場所に配置することができる

 来賓として挨拶に立ったゲーム製作会社ダイスの齋藤明宏社長は「我々もSimcityという3Dゲームを手掛けているが,基本的にはグリッド単位でオブジェクトを配置している。直感的に3D空間を操作できたりパーツを配置できるというeRealityのシステムは,私が知る限りでは他にない技術」と語る。

 さらにeRealityでは,カタチを変化させることができる技術を使って,Web上に仮想生物を作り出すこともできる。「この技術は従来のWeb3Dのように,あらかじめ準備した3Dアニメーションを使って表現するものではない。自分がどういう時にどういう行動をしなければいけいないかという行動規範がオブジェクトに割り当てられており,このルールに従って,オブジェクト自らが自立的に判断して動いている」(中村社長)。

 例えば,eRealityのCGで作られたバーチャル店員をマウスでクリックすると,嫌な表情を見せて「お止めになって」と話す。すかさず何度もクリックを行うと,嫌な顔を連続してみせるのだ。「従来ならアニメーションが終了するまでクリックを受け付けないなど,CGに違和感が出てしまう。eRealityの自立的な動作表現が,3Dアニメーションによるバーチャル店員を,より人間らしく表現させている。この技術は,eコマースのフロント・エンドとして利用することができる」(中村社長)。


バーチャル店員をクリックすると嫌な顔をするといった自立的な動作を表現できる

 今回の発表会には,石原慎太郎・東京都知事と熱いバトルで一躍有名となった片山善博・鳥取県知事が来賓として駆けつけた。歯に衣着せぬ発言や徹底した情報公開で注目を集める片山知事だが,一企業の,それもベンチャー企業の製品発表会に知事がワザワザ出向いてくるというのは,異例のことだ。

 挨拶に立った片山知事は「鳥取県は人口62万人。47都道府県の中で一番少ない。しかし,アメリカには鳥取県より人口の少ない州がある。人口が少ないからといって力がない,技術が育たないとは思わない。小さいゆえのフットワークの良さを生かして,企業立地やベンチャー育成に力を入れている。鳥取で生まれ鳥取で育った新技術が,日本のみならず世界に花開いていくことは,我々の大きな誇り。この意欲的な取り組みをぜひ応援していきたい」と語った。


片山善博・鳥取県知事

 さらに,自立的な動作が表現できるeRealityについて「IT技術の進歩によって効率的になっていく分,人同士の感情の部分が捨象されてしまう恐れがある。そういった中で,人と人との触れあいを大切にし,感情を取り込むようなテクノロジーは,政治にも生かせるのではないかと期待している」と述べた。

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[西坂真人, ITmedia]

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