News 2002年2月20日 10:57 PM 更新

ビデオDBシステム発表が浮き彫りにした「放送業界の遅れぶり」

アイ・ビー・イーが,映像データベース化制作支援・活用システム「Outliner」を発表した。この新システムの発表会では,手作業による原始的な編集行程がいまだに続いているなど,IT化が思うように進んでいない放送業界の現実が浮き彫りとなった。

 日本におけるデジタル放送の先陣を切って2000年12月にスタートしたBSデジタル放送は,サービス開始から1年以上が経過した。また今春には,CS110度デジタル放送を使ったHDD蓄積型のepサービスも始まる。そして,2003年には地上波デジタル放送が控えている。

 このような“放送のデジタル化”とブロードバンドの普及にともない,放送映像がブロードバンドのリッチコンテンツとして注目を集めて久しい。しかし,コンテンツを提供する放送業界,特に番組制作分野でのIT化は,思うように進んでいないようだ。

 アイ・ビー・イーは2月20日,映像のIT化をはかる「Video ITソリューション」の新製品として,放送業界向けのビデオDB制作支援・活用システム「Outliner」を発表した。

 エレクトロニクスの粋を集めた放送機器に囲まれた放送業界では,さぞかしIT化への取り組みも盛んなのではという印象がある。しかし,発表会の中で同社の菅原仁社長は「放送業界は,さまざまなデジタル機器を使いながら,IT化は思うように進んでいない。特に番組制作においては,手作業による原始的な行程がいまだに中心となっている」と,業界のIT化への遅れを指摘した。

 例えば,30分のドキュメンタリー番組を作るのには,10時間以上にも及ぶ映像が素材として用意されるが,番組を編集する上でこれらの映像をどうやって管理しているかというと,なんと手書きのメモ帳が使われているのだ。


番組編集での映像管理は,手書きのメモ帳が使われている

 「メモ帳には,何番のビデオテープの何分・何秒目のところにこんな映像素材が入っているという事柄を記載していき,文章で分かりにくい部分は絵を描いて表現していく。さらにカットの順番を決める際には,各シーンを書いたポストイットを壁に貼り付けていく」(菅原社長)。

 実に手間と時間がかかる行程だ。こんな原始的な作業が,放送業界では日常的に行われているという。


ポストイットを壁に貼り付けるという原始的な作業が行われている

 今回発表されたOutlinerは,放送局や番組プロダクションなどをターゲットにした映像データベース制作支援・活用システムだ。Outlinerを導入することによって,番組を編集しながらデータベースにさまざまなビデオアーカイブ用のメタデータ(ビデオに関する情報)が蓄積することができ,検索や再編集といった2次利用が効率的に行えるという。

 「例えば,プロ野球中継の番組コンテンツなどは,その日のニュースに使われたあと,何カ月・何年か後ぐらいに“好プレー珍プレー”など特番に再利用される。Outlinerを使えば,何フレーム目から何フレーム目まではどんな内容が入っていて,どの番組で使ったなどといった情報を映像データに付加することができるので,2次・3次利用するときに便利」(菅原社長)。

 Outlinerの価格は,スタンドアロンが35万円から,サーバーを利用したシステムが320万円からとなっている。

 「ある放送局では,伊勢湾台風の映像の中で手を振って助けを求めていた人のクリアランスがとれなくて,結局は放送に使えなかったというエピソードがある。メタデータを付加してデータベース化できる今回のシステムを使えば,このような後追いの作業がなくなる」(菅原社長)。

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[西坂真人, ITmedia]

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