News 2002年3月11日 07:32 PM 更新

松下,ユーザーの感性で選曲できる新技術「ミュージックソムリエ」を開発

ワインを選ぶ“ソムリエ”のように,ユーザーが今聴きたいと思う曲を瞬時に選んでくれる音楽選曲インタフェース技術を松下電器産業が開発した。

 客の好みやその日の気分,注文した料理に合わせて,一番相応しいワインを選んでくれる“ソムリエ”。多くの楽曲が溢れている音楽でも,ユーザーが今聴きたいと思う曲を瞬時に選んでくれるソムリエのような存在があれば,便利だろう。松下電器産業は3月11日,ユーザーが聴きたいと思う音楽のイメージを入力するだけで自動的に選曲を行うインタフェース技術「ミュージックソムリエ」を開発したと発表した。


ミュージックソムリエ技術を取り入れた選曲ソフト

 ミュージックソムリエは,大量の楽曲データからユーザーの感性によるイメージを分類条件にしたデータベースを作成し,その場の雰囲気,気分,TPOにあった選曲が瞬時に行える自動選曲システムだ。

 「主観的な表現の“爽快感”“騒ぎたい”“和みたい”といった,ユーザーの感性によるイメージで曲を選ぶことができる」(同社)。

 データベース生成には,音楽信号を分析することで得られる特徴を数値化した「音楽的特徴量」を利用。感性イメージと密接な関係がある8つの項目を参考にして選曲を行っている。「この音楽的特徴量は,音楽ライブラリに曲を登録する際に自動的に瞬時に抽出することができる」(同社)。

 選曲に用いられる音楽的特徴量は以下の通り。

音楽的特徴量 概要 想定される感性イメージとの関連
テンポ 曲の速さを表す 「激しさ・軽快さ」
ビート白色性 ビート(拍)形成に寄与する音と寄与しない音との出現頻度の比率 リズムのゆらぎを表現,「うるささ・人間っぽさ」
基本ビート 曲の基本的なリズムを構成するビート(8/16ビートなど) 曲のジャンル・雰囲気を表現,「躍動感・素朴さ」
ビート強度1 1/2拍に相当するビート(概ね8分音符)のレベル指標 主に8分音符のアクセント強度を表現
ビート強度2 1/4拍に相当するビート(概ね16分音符)のレベル指標 主に16分音符のアクセント強度を表現
ビート強度比 ビート強度1とビート強度2の比率 曲のジャンル・雰囲気を表現「躍動感」「さわやかさ」
平均音数 発音される音の立ち上がりの頻度 音数の密度を表現,「せわしさ・暑苦しさ」
スペクトル変化度 周波数特性の時間的な変化度合い 音色の変化度合いを表現,「激しさ」

 さらに,「激しさ」「躍動感」「爽快さ」「素朴さ」「ソフトさ」の5種類の感性イメージを,主観評価実験手法の1つである「SD法(Semantic Differential method)」を使ってデータ化している。「評価実験には50人強のサンプルを使い,約200曲の音楽データを用いた」(同社)。

 このようにミュージックソムリエでは,音楽信号から自動的に抽出できる8つの音楽的特徴量という「客観的なデータ」と,SD法によってデータ化した感性イメージという「主観的なデータ」との関係を,統計解析技術によって関連づけ,「印象空間」と呼ばれる2次元のチャートに曲データをマッピングしていくのだ。


「印象空間」と呼ばれる2次元のチャートに曲データをマッピング

 ユーザー側は,「激しさ/躍動感/爽快感/素朴さ/ソフトさ」の5項目のイメージをスライドによって調整する「イメージ選曲」か,「騒ぎたい/踊りたい/和みたい/眠りたい」という4通りのシチュエーションから曲が選ばれる「シチュエーション選曲」,指定した曲名と類似した曲調を選曲する「類似曲選曲」の中から,聴きたいイメージを選ぶだけで,その時の気分やシチュエーションに合った曲を見つけることができるというわけだ。


マウス1つでイメージを選択できる

「感性イメージの設定値から印象空間上の予測値を求め,最も近い曲から順に候補曲としていく」(同社)

 ユーザーのフィーリングにジャストフィットした音楽が瞬時に検索できるという「ミュージックソムリエ」だが,本当に望みどおりの音楽を提供してくれるものなのだろうか。

 音楽は,「リズム」「メロディ(旋律)」「ハーモニー(和声)」のの3要素で構成されるということは,小中学校の音楽の時間に学んだことだ。翻って,ミュージックソムリエが音楽データから抽出する音楽的特徴量をみてみると,テンポやビートなど「リズム」に関する項目が大半を占め,メロディやハーモニーに関するデータは反映されていない。この点について同社では「現在のシステムでは,音楽データから一番抽出しやすい項目を選んだ。将来的には,メロディやハーモニーの要素も加味して,もっと表現力を豊かにしていきたい」と語る。

 同社は,4月に米国で行われる放送機器の展示会「NAB 2002」において,同技術を検索機能として搭載したデジタルコンテンツ蓄積管理システムを出展する。コンシューマ向け製品への展開は,年内中に同社SDカードスロット対応オーディオプレーヤーに付属するジュークボックスソフトに同技術を搭載していく予定だ。

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[西坂真人, ITmedia]

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