News 2002年3月14日 10:30 PM 更新

「正確には“液冷”です」──日立のノートPC向け静音水冷システム

日立製作所は3月14日,世界初のノートPC向け静音水冷システム(Silent Water Cooling System)を開発したと発表した。今年第3四半期(7〜9月)に,この水冷システムを搭載したA4ノートPCを発売する予定という。

 日立製作所は3月14日,世界初のノートPC向け静音水冷システム(Silent Water Cooling System)を開発したと発表した。

 冷却液循環用チューブと放熱板を液晶パネルの裏側に収納し,従来冷却には使われていなかったディスプレイ側を冷却スペースにすることで,効率よく放熱できるのが特徴。空冷式で必要な冷却ファンを使わないため,静かな動作と信頼性の高い冷却が可能となるという。


日立製作所が開発した水冷システムを搭載したノートPCの試作機

 この新しい冷却システムは,先日米国で開催されたIDF(Intel Developer Forum)で発表されたもの。IDFの参考展示では,冷媒に水(純水)を使う“正真正銘の水冷”だったが,今回発表したシステムでは不凍液を使っている。「水ではないので,正確には“水冷”ではなく“液冷”なのだが,同様の不凍液を使う車でも水冷と称しているのでそれにならった」(同社)。

 不凍液を使う理由は,読んで字のごとく「凍らせないため」。仕様では-20度の環境になっても,中の不凍液が凍結しないことを保証している。「通常の使用で-20度の環境になることは少ないだろうが,航空機の貨物室などは高高度を飛行する際に零下の温度環境になる可能性がある。ただ,仮に凍結してもパイプが破裂することはないよう設計されている」(同社)。

 今回の水冷システムに採用された不凍液は,ピンク色をしている。ノートPCごとリザーブタンクを左右に振ってみたところ,粘度はなく,普通の水のようにさらっとしていた。「車やオートバイに使われるものとは別の原料を使っている。安全面を重視して,原料の保湿剤には生麺や化粧品,ハミガキ粉に使われるような,口にしても問題のないものを使用した」(同社)。


ピンク色の不凍液は「飲んでも害はない安全な原料」(同社)

 “水冷”と聞くと,仰々しいシステムでさぞかし重くなりそうなイメージを受ける。しかし,実際に冷媒として使う不凍液の量は,60ミリリットルと意外に少ない。重さにすると約60グラムだ。パイプや放熱板,ポンプ,水冷ジャケットなど,水冷システム一式も思いのほか軽く,不凍液と合わせても空冷システム一式(空冷ファンやヒートシンク,放熱モジュールなど)と同じぐらいの重さだ。日立の説明では,水冷化による本体重量の増加はないという。


実際のノートPCに組み込んだ状態。リザーブタンクの出っ張りは“意図的”で,本体内収容も可能だという

 しかし,たかだか60ミリリットルとはいえ,液体がPCの中を駆け巡るのだから,経年使用の際の浸食が気になるところだ。特に配管の継ぎ目は,相手が液体だけに,ほんのわずかな隙間でも長期間の使用では影響が出る可能性がある。さらに今回のシステムでは,液晶ディスプレイ部分に放熱板を配しているため,液晶開閉時に可動するヒンジの配管部分が特に心配だ。

 「確かにヒンジ部から微量だが蒸発していくが,リザーブタンクによって蒸発分をカバーしていく。湿度0%で5年(約4万4000時間)使うと25ミリリットルが蒸発するが,この状態でも使用にはまったく問題ない」(同社)。


ヒンジの配管部分から微量だが不凍液が蒸発していく

 フレキシブルチューブで自由に配管でき,パーツを冷やす水冷ジャケットも配管に合わせて直列に追加できるため,CPUだけでなくグラフィックチップやメモリコントローラなど熱を発するパーツも冷却することが可能となる。「ノートPCだけでなく,高密度サーバなどにも応用できる」(同社)。

 このシステムは同社PCに搭載する他,水冷モジュールとしてグループ企業の日立電線から販売する予定。他のPCメーカーがモジュールを購入し,水冷PCを作ることも可能になるわけだ。水冷モジュールの価格は数十ドル程度で,水冷システム搭載によるコストアップはない。水冷ノートPCの価格は普通のA4ノートPC並み(20万円前後)となる見込みだ。

 同社では今年第3四半期(7〜9月)に,この水冷システムを搭載したA4ノートPCを発売するという。「第1弾は企業向けのFLORAシリーズで採用し,順次,Priusなどコンシューマ向けノートPCにも展開していく」(同社)。

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[西坂真人,ITmedia]

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