News 2002年4月8日 08:04 PM 更新

「IT」の普及で家族のことが分からなくなった? 内閣国民生活局調査報告

家族みんなが携帯電話を持っているというのも,今や珍しくないことではあるが,内閣国民生活局の調査によれば,「携帯電話のせいで子どもの行動が分からなくなった」と答える母親が多いという

 内閣府国民生活局が「ITによる家族への影響実体調査」という報告書を発表した。

 インターネットや携帯電話の普及により,日々の生活の中で家族や友人とのコミュニケーションに大きな変化が現れていることから,その利用状況や実際の影響について調査分析を行ったという。なお,ここでいう「IT」とは,PCや携帯電話らのインターネットの利用に加え,携帯電話の通話も含む。

携帯電話で家族が個別化

 調査報告の冒頭で,「IT利用状況」の実体について解説。「3人に2人がITを利用」「携帯電話によるネット接続がPCと同等に」「携帯電話利用者のメール利用率が高い」などといった内容が並ぶ。調査が行われたのが2001年8月〜9月ということもあり,新鮮みに欠けるのだが,本題の「IT利用による家族への影響」という項目(「コミュニケーションの変化」ならびに「生活行動の変化」という2つのテーマに分けられている)に入ると,なかなか興味深い報告がある。

 この調査報告によれば,若年/中高年層ともにPCや携帯電話の利用により,コミュニケーションが活発化しているのだが,面白いのは,若年層は友人,中高年層は同居の家族との関係が密になっている点だ。

 調査アンケートの回答例を挙げてみると,年代の高い世代が,「他の家族の行動が把握できるようになった」「家族の信頼関係が深まった」と感じているのに対し,20代以下の若者は「家族を気にせずに友人と連絡を取れるようになった」「家族に内緒の話ができた」と答えるなど,両世代の認識にはズレが生じている。

 何も知らないのは親だけということかというと,実は,そうでもない。携帯電話を所有している子どもがいる母親の44.5%が,「ITを利用するようになって家族の行動が個別化し,家族の行動がよく分からなくなるという悪い面があるか?」という質問に対して「悪い面がある」と答えており,必ずしもITによって家族の絆が強まったと単純に考えていないということが分かる。

 さらに,その悪い面についてどのように感じているか追加で質問したところ,「時代の流れなので仕方がない」や「どちらかといえば仕方がない」と理解を示した親の割合が50.7%,「切実な問題である」「どちらかといえば問題だと感じている」と答えた親が49.3%とほぼ半々だった。ただ,「悪い面」への対策について,何らかの策を講じていると答えたのは,そのうちわずか12.8%にとどまっている。

 今時,友人からの電話は直接,携帯電話にかかってくる。ちょっと前なら,子どもが誰とつきあっているのか,電話の相手から推測できたものである。携帯電話やPCがコミュニケーションツールとして普及した今だからこそ,家族には,これまで以上にリアルなコミュニケーションが必要なのかもしれない。

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[中村琢磨,ITmedia]

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