News 2002年4月22日 09:58 AM更新

魅力的だがあまりに遠い「Longhorn」の色管理と文字レンダリング

 TEXT:本田雅一,ITmedia

Microsoftは将来のWindowsで「scRGB」規格をサポート。またフォント管理の改善によって画面上での文字レイアウト品質を向上させると共に,APIレベルで組み版の各種機能をサポートする。

 先週開催されたMicrosoftのハードウェア開発者向け会議「WinHEC 2002」では,次世代Windowsの「Longhorn」で拡張されるグラフィックス機能についても言及があった。色空間の拡張やグラフィックス,文字レンダリング,ビデオ機能の拡張など,これまでのWindowsが持つ制限を解く,いくつかの拡張が施されるという。その中には特にプロシューマーユーザーにメリットが大きい変更点がいくつも存在する。しかし,早くとも2004年後半まで登場しないLonghornまでの道のりは,あまりにも遠い。

 ここでは色空間と文字レンダリングに関する話題をピックアップする。

プロとコンシューマーの間をつなぐscRGBを採用

 WindowsはCRTの色域を基礎に色座標を決定したsRGBを基本にカラー画像を扱っている。現在ではsRGB対応のプリンタ,スキャナ,デジタルカメラが主流を占めており,sRGB準拠の画像データであれば,エンドユーザーはカラーマッチングを特に意識しなくとも,それほど大きく外した色再現にはならないようにできている(もちろん,きちんと再現できるかは装置の能力にも依存するが)。

 ところがsRGBは,CRTの色再現を基礎としているため,「CRTでは表現できないが,他のデバイスでは表現できる色」を扱えず,それらデバイスの本来的な機能を発揮できないという問題を抱えている。またRGB各チャンネルごとの分解能も8ビットしか割り当てられておらず,ガンマ曲線のパラメータも固定だ。

 一方,WindowsはICCプロファイルを用いたカラーマッチングが行える「ICM 2.0」にも対応している。だがこれを利用して厳密なカラーマッチングを行うには,アプリケーションの対応やICCプロファイルのカスタマイズなどが必要だ。またワークフローとしても,コンシューマーユーザーが扱うには十分にシンプル化されておらず,プロ向けの機能にとどまっている。

 色域を全く意識させないsRGBの手軽さと,デバイスの能力を発揮できるICMのようなカラー管理の方法を実現するために,Microsoftは将来のWindowsで「scRGB」という規格(IEC TC100 TA2で標準化に向けて審議中)をサポートする。

 scRGBはICMのようにデバイスごとの色特性を管理するものではなく,sRGBのように,絶対的な色を指定する手法を定義した規格だ。sRGBと異なるのは,1つのフォーマットでさまざまな特性/色域のデバイスが必要とする情報をすべてカバーすることだという。Microsoftはこれを「デジタルネガフィルム」と表現。ネガフィルムはラチチュードが広く,情報量が豊富だが,scRGBも同様に,あらゆるデバイスの特性を包含する広い再現域を持つ。

 動画と静止画の色,知覚的な色マッチングと絶対的な色マッチングなどを混在して扱うことが可能で,かつダイナミックレンジはネガフィルムと同等の再現力。肉眼で識別可能なすべての色域と,いくつかの蛍光色を特別な色としてエンコード可能になる。RGB各チャンネルの分解能も16ビットに拡張された。白色点はsRGBと同じで,フォーマットも互換性に配慮したものになっている。

 MicrosoftはWindowsでのscRGBのサポート時期について明言はしていない。Windows XPのサービスパックとして登場する可能性もゼロではないが,Longhornで実装される可能性が高いという。

 なお,sRGBのように絶対的な色座標を固定しても,デバイスによっては色がうまく合わないという問題もあるが,こちらはWinColorで対応する。この問題は各デバイスのドライバがsRGB準拠とうたいつつも,実際のマッチングが取れていないことに起因している。そこで,MicrosoftはWindows XP用ドライバのWHQL認定テストにWinColorという色再現力に関する規定を設けた。現在,プリンタ,ディスプレイ(CRT,LCD両方とも)に関してはWHQL(Windows Hardware Quality Labs)認定が開始されている。今後はこれをプロジェクタ,反射型液晶,プラズマディスプレイ,デジタルカメラ,スキャナにも拡大していくという。

DTPクオリティの文字レイアウトを目指す

 Windows XPでは,サブピクセルレンダリング(画素を構成するRGBを独立したピクセルとして扱うことで横方向の解像度を高める技術)を用いたClearTypeが採用された。この技術は文字品質向上には役立ったかもしれない(ただし日本語フォントの多くはこの恩恵を受けていない)が,レイアウトまでを含めた文字表示全体のクオリティアップにまでは至っていない。

 そこでLonghornでは,フォント管理の改善によって画面上での文字レイアウト品質を向上させると共に,APIレベルで組み版の各種機能をサポートする。また,Windows XPではClearTypeによって文字表示速度が低下したとの指摘に対して,ハードウェアアクセラレーションを最大限に活かした表示を行うように改善されるという。

 まず文字レベルではフォントフェース,色,スタイル,太さ,サイズなどの基本情報に加え,マニュアルカーニングとOpenTypeが持つすべての機能をネイティブでサポート。各国語に対応するベースライン管理や記述方法への対応,文字揃えやグリッド揃え,ルビ,割り注などの組み版も,Windows側のフォントレンダラーでサポートする。

 またフォント種別の増加に対してフォント間の関係記述を強化し,フォントをカスタマイズして別フォントを作成するバーチャルフォントの機能を追加し,斜文字や太字の生成アルゴリズムをブラッシュアップするという。

 また合字処理を強化して2つの文字を合成するポイントを指定し,Windowsの文字レンダラーが合字を生成する仕組みを,英語だけでなく多国語に対応する。例えばタイ文字の各パートを合成して1文字にするなどの処理をWindows側で行うことが可能となる。

 さらに文字レイアウト処理では,文字単位でのサブピクセルレンダリングを超えて,レイアウトの正確さを向上させるためにもサブピクセルを利用するようになる。これにより,ドットサイズが大きいために微妙に字間が不均等になってしまう現象を緩和でき,より自然な文字レイアウトが実現するはずだ。

 これらの処理により,文字表示のパフォーマンスは確実に低下することが予想される。そのため,Longhornではテキストビットマップの生成と,テキストビットマップのディスプレイのへの表示に分け,それぞれの場面で最適化が図られる。

 まずテキストビットマップの生成では,基本となる文字が一度生成されると,その文字に対して些細な変更を加える場合なども,同じキャッシュから再生成を行う。また,このとき,あらかじめ表示デバイスに依存したフォーマットでキャッシングする。そして実際に文字表示を行う際には,グラフィックアクセラレータが一般的に持っているカラーパターンやブラシパターンなどのステンシル機能を用いて,画面上へと転送する。

 またClearTypeやグレースケールを用いたフォントスムージングはソフトウェアで処理するのではなく,Windows側では常にオーバースキャンした大きいビットマップで管理し,表示時にアクセラレータの機能を用いて表示するようになる。ClearTypeでは単純な縮小処理だけでは表示を行えないが,ブラシ機能,ステンシル機能を活用して表示を行うためアクセラレータの機能を最大限に利用することが可能となり,大幅な表示速度の改善を図れるとしている。

 これらの改善によって,LonghornではDTPクオリティの文字表示を画面上で展開することができるようだ。しかしターゲットとしているのは,あくまでも一般的なエンドユーザーで,DTP市場ではない。Webブラウズや電子メールやオフィス文書を閲覧する際のクオリティが向上する(あるいはアプリケーションの文字表示品質が底上げされる)のが,エンドユーザーにとってのメリットだ。

[本田雅一,ITmedia]

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