News 2002年5月1日 06:59 PM 更新

Edenで“静音PC”を自作してみました(2)

 Edenは,VIAが提唱する小型フォームファクタ「Mini-ITX」に準拠している。そのためマザーボードのサイズも170(幅)×170(奥行き)ミリと非常に小さい。Mini-ITXはMicroATXと互換性があるため,MicroATX対応ケースを選べばよいのだが,今回の静音PCでは,Edenの大きな特徴の1つでもあるMini-ITXの省スペース性をぜひ生かしたいところだ。


ATXマザーボードと比べても半分以下と非常に小さい


雑誌と比較しても,この通り

 Mini-ITX規格自体が登場して間もないため,対応ケースが市場ではまだ存在しないのが残念だが,170×170ミリというマザーボードは,自作ユーザーの間でブームとなりつつあるキューブ型ケースに使用される小型のFlexATX仕様マザーボードと同じ大きさ。FlexATXとMicroATXはネジ穴やI/Oポートの位置がほぼ同じ仕様なので,FlexATX対応のケースが今回のマザーボードに流用できる。今回は,エムシージェイのキューブ型FlexATX対応アルミケース「Cube-Zero」を使うことにした。


キューブ型FlexATX対応アルミケースを使用

 EPIA-E533は,PC133対応SDRAM DIMMスロットを2基装備し,最大1Gバイトまで対応する。今回は静音PCという目的から,HDDへのアクセスをできるだけ少なくするため512Mバイトを搭載した。HDDには,Seagate のUシリーズ(40Gバイト,5400rpm)を使用。ドライブ本体の外側を包む「SeaShellパッケージ」や,共振を防ぐ「SeaShield」といった静音設計が施され,Xboxなどコンシューマ製品にも採用されている,静音性では評判の高いHDDだ。OSはWindows XP Professional を使用した。


静かと評判のSeagate製HDD。外側の黒い部分がSeaShellパッケージ

 さて組み立てだが,自作PCといっても,CPUを筆頭にさまざまな機能がオンボードで搭載されているEPIA-E533でやることといったら,マザーボードにメモリを挿してケースにネジ止めし,HDDをケース内のベイに取り付け,各種ケーブルを結線するだけ。プラモデル感覚の組み立て作業は,10分ぐらいで終わってしまった。グラフィックスもオンボードなので,ビデオカードの相性を気にする必要もない。


組み立てはプラモデル感覚

 早速,起動してみたところ,かすかにブーンというファンの音がする。今回,ファンレスを目指してEdenを採用したが,空冷ファンはケース本体にある電源ユニットにも取り付けられていることを忘れていた。かすかな騒音の原因は,電源ユニットを冷やすためのファンの音だったのだ。


電源ユニットにも,ファンが……

 高熱になりやすい電源ユニットを冷やすため,ファンは必需品だ。しかしGIGABYTEのベアボーンキットなどには,ファンレス電源を採用したものがある。しかもEden ESP 5000プロセッサの消費電力は,わずか5ワットしかない。そのほか電力負荷のかかりそうなパーツは,HDDとメモリぐらいだ。今回は,一時的にファンレス環境を作るために,電源ユニットのファンを止めてみた(危険ですので,皆さんはマネしないように)。

電源を入れると,音もなくWindowsスタート画面が……

 再び電源を入れると,ピッと短いビープ音の後,静寂が訪れた……。一瞬,フリーズしてしまったかと思った矢先,音もなくWindowsのスタート画面が現れた。全てのファンを止めてしまったので,機械的に動いているのは,HDDだけということになる。ケースに耳を当ててみると,やはりかすかにHDDの動作音がするだけだ。ファンがないと,PCはこんなにも静かなのかというのを実感できた。


電源を入れると,音もなくWindowsスタート画面が現れる

 しかし,いくら言葉で「静かになった」と表現しても,ピンとこないかもしれない。そこで,「騒音計」なるものを用意した。使ったのは,電子測器の普通騒音計「TYPE 1015」。アナログタイプだが,計量法に基づく普通騒音計規格に適合するもので,法定計量器として検定を受けることができる優れものだ。測定範囲は,27〜130デシベル。環境基準による音のめやすは,30デシベル前後が「人のささやき声」,120デシベル前後が「飛行機のエンジンの近く」となっている。


騒音測定に使用した普通騒音計

 自宅の自作機(Duron/1.2GHz)で計測したところ,針は61デシベルを指し示した。環境基準による音の“めやす”では,60デシベルで「乗用車・普通の会話」に相当するという。ZDNet編集部にあるデスクトップマシンを計測してみると,K記者の自作マシン(Athlon/600MHz)は63デシベル,N記者のCeleron搭載ブック型PCは意外とうるさく67デシベル,一番うるさかったのはN編集長の自作タワー型マシンで,69デシベルを記録した。これは「電話のベル・騒々しい事務所(70デシベル)」にせまる数値だ。

 一方,今回自作した静音PCを測定してみると,HDD動作時で48デシベルと好結果が得られた。この数値は「静かな事務所(50デシベル)」に相当する。一方,HDDが動いていないときは,37デシベルまで下がった。これは「深夜の市内・図書館(40デシベル)」並みの静かさだ。ちなみに,電源ユニットのファンを動作させた時の数値も,49デシベルとHDD動作時とほぼ変わらなかった。


静音PCは,図書館並みの静かさ

ホームサーバや音楽/ウェブ閲覧専用PCに

 今回のマザーボードに搭載されたEden ESP 5000プロセッサは,533MHzで動作しているものの,ベンチマークをとってみると,Celeron/300MHz程度の性能でしかない。また,オンボードのグラフィックスも,3Dゲームをバリバリ遊ぶには力不足だ。

 そのかわりに,低消費電力で騒音も少ないというメリットを生かして,24時間常時稼動させるホームサーバに仕立ててみるのも面白いかもしれない。また,HDDにMP3データを満載した音楽サーバとして使えば,静音設計によってピアニッシモな音も鑑賞できるだろう。Mini-ITX仕様の低消費電力電源が登場してくれば,トイレの電球並みの消費電力(30ワット以下)で動作できる。常に電源を入れておき,好きなときにウェブ閲覧ができるインターネット専用PCだって可能だ。

 アルミケースを使用しても総額5万円以内で作れてしまうEdenプラットフォームの静音PC。ゴールデンウィーク中に1台,作ってみてはいかがだろうか。

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