News 2002年5月23日 10:20 PM 更新

富士写のフォトプリンタ「Printpix」――その高画質の仕組みとは

富士写真フイルムが、先日発表したデジタルフォトプリンタ「Printpix CX-400」の製品説明会を実施した。同社は、銀塩写真並みの高画質を簡単にプリントできるPrintpixシリーズを通じて、デジカメで撮影した画像はプリントで残すという“デジタルプリント文化”の創造を狙う

 富士写真フイルムは5月23日、先日発表したデジタルフォトプリンタの新製品「Printpix CX-400」の製品説明会を実施。また、4月8日の発表時には未定だった本体価格と発売日を明らかにした。CX-400の価格は4万9800円で、専用ロールペーパー「RL-SD40」が1700円となる。6月8日から発売。


デジタルフォトプリンタ「Printpix CX-400」

 Printpix CX-400は、インクカートリッジ/リボンが不要な「TA」(Thermal Autochrome)方式を採用したフォトプリンタ。同社はこれまで、この独自の印刷方式を技術名称のまま「TA方式」と呼んでいたが、新製品投入を機に同社フォトプリンタシリーズを新ブランド「Printpix」に統一し、印刷方式の呼称も「Printpix方式」と改めた。

 「“TA”は技術用語でなじみづらかったため、一般ユーザーにも親しみやすいブランド名を付けた。ただし、単に名前を変えるのではなく、ハード、ペーパーともに新技術を投入している」(同社)。

 デジカメの普及によって、撮影した画像を写真のようにプリントしたいというニーズが高まり、写真画質をうたう「フォトプリンタ」が注目されている。フォトプリンタの印刷方式では、インクリボンに熱を加えて塗布されたインクを昇華させ、樹脂でコーティングした専用紙に付着させる「昇華型熱転写」方式が一般的だ。キヤノンのCP-10/100や、神鋼電機の1万円台フォトプリンタ「COLOR PET」などが、この方式を採用している。


昇華型熱転写方式のフォトプリンタ

 昇華型熱転写方式は、加熱温度を制御することで濃淡を細かく変化させることができるため、写真のような連続階調の表現ができるのが特徴だ。最近は、PC用プリンタとして一般的なインクジェット方式でも写真画質をアピールするものが多いが、基本的にドットの大きさでしか濃淡が表せないため、連続的な階調表現に弱くなる。

 同社のPrintpix方式も、熱を使う点では昇華型熱転写方式と似ているが、ペーパー自体が加熱によって発色する感熱層を持っており、プリンタ本体にインクカートリッジやインクリボンを装着させる必要がない点が特徴だ。

 その仕組みはこうだ。Printpix方式に使われる専用ペーパーには、光の3原色(イエロー、マゼンダ、シアン)に相当する3色の発色層が塗布されている。この3原色を独立して発色させることができれば、写真並みのフルカラー画像が表現できる。タテに3層構造となっているPrintpix方式では、3つの発色層それぞれ反応する温度に差をつけておくことで、加熱温度の変化によって発色を制御している。

 しかし、例えば高温で発色するシアンを出そうと加熱すると、シアンよりも低温で反応するイエローやマゼンダも発色してしまい、3色が混合してしまう。これを防ぐためには、低温で反応する発色層が高温時に影響を受けないように「固定化(定着)」する必要がある。Printpix方式では、この固定化に紫外線を利用し、特定の波長の紫外線をあてると、発色層が感熱による発色機能を失う、という仕組みを取り入れた。


Printpixペーパーの構成模式図

 イエローの発色層は419ナノメートルという波長の紫外線を当てると感熱による発色機能を失い、マゼンダの発色層は365ナノメートルの波長の紫外線照射で、発色しなくなる。一番高熱に反応するシアンの発色層は、紫外線による感光性を持っていない。つまり印刷工程としては、(1)低温でイエローを発色させる。(2)419ナノメートルの紫外線で定着。(3)中温でマゼンダを発色させる。(4)365ナノメートルの紫外線で定着。(5)高温でシアンを発色させる、という5ステップで行う。


Printpixの印刷工程

 このようにPrintpix方式は、加熱温度の変化と紫外線照射によって、3色が独立して発色するような仕組みとなっているのだ。

 「ペーパーだけで発色するため、消耗品がペーパーのみとなって廃棄物が少ないのもメリットとなる。印刷システムも、加熱を行うサーマルヘッドと紫外線を照射する2つの波長の紫外線ランプのみとなり、シンプル構造で故障が少ないのも特徴となっている」(同社)。


シンプル構造で故障も少なくなる

 今回、新製品のペーパーには、紫外線による画質劣化を防止するために、紫外線遮断のフィルター層を新たに最上層部に設けた。「ただし、Printpix方式は発色機能停止に紫外線を使うため、新設したフィルター層には記録時は紫外線を透過し、記録終了後になって初めて紫外線遮断機能が働くような仕組みを盛り込んだ」(同社)。


従来のペーパー(左)と、新方式のペーパー(右)

 CX-400は、Printpix方式による写真画質のほかに、全ての操作が簡単なボタン操作だけで行える簡単操作も特徴。本体には1.8型のカラー液晶モニタを搭載し、PCを介さなくても本体のみで印刷が行える。スマートメディアスロットとPCカードスロットを搭載し、デジタルカメラで撮影した画像をカラー液晶モニタで確認しながらプリントすることができる。


本体には1.8型のカラー液晶モニタを搭載

 また、ビデオ出力端子も装備し、コンポジット入力のあるTVに接続して大画面での操作も可能だ。USB接続端子を搭載しており、USB経由でPCからCX-400を操作できるほか、本体のメディア用スロットをPCのカードリーダーとしても利用できる。


TVに接続して操作可能。本体のメディア用スロットは、PCのカードリーダーとしても使える

 専用ペーパーはロール紙方式を採用。FAXのように本体のふたを開けてセットするだけのシンプル装填となっている。専用ロールペーパー「RL-SD40」は、「Lサイズ」「カードサイズ」「デジカメサイズ」「ハイビジョンサイズ」のフチなしプリントが可能。Lサイズプリントで約40枚の印刷が行えるため、Lサイズ1枚の単価は約42円となる。Lサイズ1枚のプリント時間は約88秒。


ロール紙方式で装填も簡単

 同社は、銀塩写真並みの高画質を簡単にプリントできるPrintpix方式のフォトプリンタを通じて、デジカメで撮影した画像はプリントで残すという“デジタルプリント文化”の創造を狙いたいと話す。

 「銀塩カメラからデジカメに移行していく上でプリント文化が薄れてしまったが、近年デジカメユーザーが増えている女性や中高年層などでは、“子供成長をプリントで残したい”、“人肌のような微妙な色合いも表現できる写真画質のプリントが欲しい”、“プリントは自宅で好きなときにしたい”といった、デジカメプリントへのニーズが高まっている。簡単操作で写真画質のプリントが行えるCX-400を、デジカメプリントに強い関心を示している女性やファミリー層、シルバー層に強くアピールしていく」(同社)。

関連記事
▼ 富士写、インク不要「TA方式」プリンタのブランドを一新
▼ 1万円台のフォトプリンタをチェックしてきました
▼ 1万9800円の昇華型プリンタが登場

関連リンク
▼ 富士写真フイルム

[西坂真人, ITmedia]

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.