News 2002年5月31日 07:59 PM 更新

JEITA新会長に三菱電機会長の谷口一郎氏が就任――「“日本の産業競争力の強化”が最重要課題」

電子情報技術産業協会(JEITA)の新会長に、三菱電機会長の谷口一郎氏が就任。谷口新会長から、今年度の協会の取り組み課題や、日本経済の回復時期などが語られた。

 電子情報技術産業協会(JEITA)は5月31日の通常総会で、任期満了となった森下洋一会長(松下電器産業会長)に代わって、新会長に三菱電機会長の谷口一郎氏を選出。総会後、谷口新会長が記者会見を行った。


JEITAの新会長に就任した谷口一郎・三菱電機会長

 谷口新会長は冒頭の就任挨拶で、「現在、日本の経済は未曾有の落ち込みをみせ、市場は激変している。国内景気は底を打ったというが、まだまだ厳しい状況は続いている。回復しきれていないとはいえ、IT産業は中・長期的には必ず回復し、需要は伸びてくるだろうが、いつ(落ち込む前の)2000年の状態に戻るかは、不透明な部分が多い。協会としては、基礎を築いてくれた森下前会長の意思を引き継いで、山積する課題に取り組んでいきたい」と語った。

 谷口新会長は、今年度のJEITAの課題として、

1、IT革命への推進の積極的な貢献
2、新市場の開拓と市場環境の整備
3、技術力強化と技術開発の推進
4、グローバル化への対応
5、環境問題への取り組み

の5項目を挙げ、「e-Japan構想では、2003年までに世界最先端のIT国家を目指しているが、協会としては政府へ積極的に提言し、e-Japan構想を支援していきたい。また、BSデジタル放送や2003年にスタートする地上波デジタル放送、また無線LAN技術などを使ったモバイルネットワークの確立などを支援していく。そのほか、産・官・学の連携による、“次世代半導体研究開発プロジェクト”の推進やグローバルな視野での知的財産権問題、環境問題などにも積極的に取り組んでいく」と、具体的な取り組みを述べた。

 「課題はいろいろあるが、“日本の産業競争力の強化”が最も重要な課題。おりしも本日は、W杯開催という記念すべき日。世界が開催国の日本に注目するとともに、デジタル放送の普及にも弾みがつくなど、電子情報産業の発展にもW杯が寄与している。今後の、官民一体の努力が結実し、日本の電子情報産業の競争力が、W杯同様、世界から注目を集めることを願っている」(谷口新会長)。

 本日(31日)、米国格付け機関のMoody's Investors Serviceが、日本国債の格付けを「Aa3」から「A2」に引き下げたと発表した。これに関して、谷口新会長は、「私は格付けの専門家ではないので、今回の(Moody'sの)格下げに対するコメントはできない。日本経済の回復が結果として表れなくても、その気配さえあれば評価も上がるのだろうが、残念ながら、現在はその気配が格付け機関に伝わっていないのだろう」とし、日本経済の回復が思うように進んでいない点を指摘。

 「しかし、日本には間違いなく再生できる底力があると思っている。例えばデジタルTVや、プラズマ・液晶のような薄型大画面TVなどは、前年比数十%〜倍増以上の伸びを示している。ディスプレイの技術では、世界を牽引しているといえる。こういう先進的な技術をしっかり伸ばし、さらに次世代技術の研究開発なども同時に進行していかないと、競争には勝てない」(谷口新会長)。

 最後に、景気回復の時期についての質問に対して、谷口新会長は「私見ですが」と断りながら「現在、前年同期比などでは“一見”回復基調にみえるかもしれないが、これは2001〜2002年の落ち込みが激しすぎたため、あてにはならない。特に、通信分野での底が見えてないのが懸念材料。PCは回復基調にあるものの、国内半導体市場はまだマイナス成長だ。本格的な景気回復は、2003年ごろになるのではとみている」。

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▼ 電子情報技術産業協会

[西坂真人, ITmedia]

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